32 / 106
ヒーロー達の青春エピローグ~夏の章~
【第31話】実力行使です!!
しおりを挟む夏休み――
雲ひとつない晴天。
ミンミンと鳴く蝉。
生暖かい風。
ギンギラギンと輝く太陽。
猛暑の中、一人の男がルンルン気分で街を徘徊していた。
スキップをしながら、徘徊していた。
「今日も収穫があったぞぉー! いやっほぉーい!」
飛び跳ねるごとに揺れるアフロ。
そして、鼻の下に装着していた付け髭がポロリと落ちる。
「おっと……年齢詐称の為の変装道具が落ちてしまった。コレが無いと買えないもんなぁー、エロDVD」
木鋸千草は法律違反を犯していた。
十八歳未満でありながら、十八禁のDVDを購入したのだ。
良い子は絶対に真似をしないように。
「そもそも、十八歳未満は購入出来ないって法律からしておかしいんだよなぁー。これ、最高の保健体育の教科書なのになぁー。どうかしてるぜ、日本」
どうかしているのは、千草の頭の中である。
「太陽も忍も、今どきDVDなんて流行らない、パソコンで充分だ。なーんて言うけど、何やかんやで借りたがるんだよなぁー。よーっし! とりあえず帰って、一発かましてから先ずは太陽へ……」
「あーーっ!! 木鋸先輩だぁー!!」
「……れんらく、を…………」
千草のスキップが止まった。
「何してるんですかー?」
近寄って来る声。
その瞬間、千草は全速力でダッシュを開始する。
その声から距離を取る為だ。
(よりにもよって、一番今出会いたくない奴と出会ってしまうだなんて! 最悪だぁ!! とにかく逃げないと!! あそこの角を曲がった瞬間、【透明化】を使って――)
「逃がしませんよぉー! とうっ!!」
「えぇっ!?」
その人物はいとも容易く、走る千草へ追いつき、ぴょーんと彼の頭を飛び越えたのであった。
「ふふん、私から逃げようなんて、考えが甘いですよー? 木鋸せーんぱいっ」
「ぐぬぬぬぬ……!」
アクロバティックな着地を決め、千草の前に立ちはだかった者の正体は――――静だった。
海波 静。
千草に恋をしている、中学三年生。
「もう! 逃げるだなんて、照れ屋さんですねぇー。ところで、こんな暑い日に外で何してるんですかー?」
もう逃げられないことを悟った千草は、作戦を変更する事に決めた。
何とか誤魔化し、エロDVDから目を逸らさせる作戦に出る。
「し……静の方こそ、何してんのー……?」
「私? 私の今を聞いていただけるんですか!? どうしたんですか先輩! 私に興味津々じゃないですかぁ!! 良いでしょう! 答えてあげます! 私はランニングしているんです! 今!」
「ら……ランニング? この暑いのに、ご苦労様だねぇ……」
「暑いからこそランニングをするんですよ! 発送が逆ですよ! 逆! 暑い中でのランニングは、心も鍛えられますから!」
「へ、へぇ……そ、そうなんだぁ……それは……良かったね……」
目が泳ぎまくる千草。
嘘が下手すぎである。
「で、木鋸先輩」
「で?」
「一体、何をしてたんですか?」
「い、いやでも! 今日は本当に暑いよねー!」
「はい! 暑いです! で、何をしてたんですか?」
「…………っ!!」
「話を逸らさないでください! 何をしてたんですか?」
満面の笑みで問い詰めてくる静。
話を逸らしても意味をなさない圧力だ。しかし、本当の事は話せない。
年齢詐称してエロDVDを買っていたなんて、静を失望させてしまうかもしれないからだ。
(何とか……何とかしないと!!)
千草は、足りない脳みそをフル回転させる。
考えて、考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考えて考え抜いて出た言葉は――――
「さ、散歩」
もの凄くありきたりな返答だった。
やはり、脳内真っピンクのアフロが考え抜いた所で、ろくな答えはでないようだ。
「またまたぁー。買い物してたんでしょー? 何買ったんですかー?」
そして楽々と看破されていた。
「な、何故分かった!?」
「だって明らかに今、買い物してましたよーって袋持ってるじゃないですか。私の目は誤魔化せませんよー」
「や、やられた!! 何て観察眼だ!!」
観察眼も糞もない、ただの千草のミスである。
迂闊にも程があった。
「何買ったんですかー? 見せてください」
まだ見ぬエロDVDに手を伸ばす静。そしてそれを躱す千草。
「む? 何で避けるんですか?」
「………………」
「とりゃっ!!」
「…………」
「とりゃっ! とりゃっ! とりゃっ! とりゃっ!」
「…………………………」
手を伸ばし続ける静。そしてそれを無言で躱し続ける千草。
「むむむむ! どうして見せてくれないんですか!! もう怒りましたよ! 実力行使です!!」
「い、いや……暴力は……」
「あっ! 見てください! 可愛いギャルが際どい水着を着てM字開脚してますよ!!」
「マジっすかぁ!?」
隙あり。
「どこ!? どこどこ!? M字開脚の水着可愛いギャルどこ!? ………………って、あぁっ!! しまったぁ!!」
「へっへーんだ。いただいちゃいましたもんねー」
「汚い! 謀ったなぁ!!」
静が意気揚々と、奪い取ったエロDVDの入った袋を見せつける。
「さぁーて、何を買ったのか拝見させて頂きまーす」
「だ、駄目だってばぁ!! 返せぇー!!」
そして――エロDVDが、白日の下に晒される事になる。
「え?」
静はエロDVDを目の当たりにした事で、目が点になる。
時が止まったように……。
千草は(終わった……)と、肩を落とす。(流石に引かれた……)と。
しかし――
「あははっ! なぁーんだ、何を隠し回ってるのかと思ったらコレかぁー。木鋸先輩らしいですね」
「へ?」
予想外の反応に、キョトンとしてしまう。
「引かないの……?」
「何を今更。ツテヤのアダルトビデオコーナーに入っていることを知っている私が、たかだかエロDVDの購入ぐらいで引く訳ないじゃないですか」
「そ……それはそれで複雑だけど……」
「普通の男子高校生らしくて――健全で、良いじゃないですか」
「……普通の…………。普通の女子中学生は、こういうの見たら、引くんだけど……?」
「あははっ、そうかもですね。でも残念!」
満面の笑顔で、静はこう言い放った。
「私は――――普通じゃないので、引きませんよ!」
千草には……彼女のその笑顔が、とても眩しく見えて……。
「……そうだな……。確かに静は……普通じゃない、よな……」
「え? 何か言いました?」
「……何も言ってないよ」
「あー! 口が3になってる! 拗ねてる先輩も可愛いー!!」
「う、うるさいなぁ!! もうっ! …………」
引かれないなら引かれないで悔しいと思ってしまうのが、変態の性である。
ニヤリ……と千草は笑った。
「ねぇ静……?」
「ん? 何ですか?」
「静はさぁ……普通じゃないから、何があっても引かないんだよねぇ?」
「はい! その通りです!」
「じゃあ……何をお願いしても、引かずに、聞いてくれるのかなぁ?」
「はい! 出来る範囲でならば、何なりと!」
「パンツ見せて」
「っ!?」
勝った――と、確信する千草。
(これは流石に引いただろう)と。
「良いですよ」
「へ?」
だが、彼の思いとは裏腹に、静は二つ返事に頷いて見せた。
「いや……マジ?」
「はい! マジですとも! 千草先輩になら、私はパンツでも裸体でも、幾らでも見せてさしあげます!!」
「いやいやいや!! そんな風に決意籠ってますみたいに言われても困るんですけど!?」
「あ、でも……」
何かを思いついたかのように、静は口元を千草の耳元へと寄せる。
そしてこう囁いた。
「見せるのは……後日でも良いですか? 木鋸先輩には、とびっきり可愛い下着を、見て欲しいので……」
「変態だ! 変態がいる!!」
「あははっ! 顔赤くなっちゃって、かーわいいなぁ!」
「静ぅーー!!」
そんな訳で……。
この二人はいつも、こんな感じである。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~
葉月奈津・男
恋愛
「あなたとの婚約、破棄させていただきます!」
王立学院の舞踏会。
全校生徒が見守る中、商家の三男カロスタークは、貴族令嬢セザールから一方的に婚約破棄を突きつけられる。
努力も誠意も、すべて「退屈だった」の一言で切り捨てられ、彼女は王子様気取りの子爵家の三男と新たな婚約を宣言する。
だが、カロスタークは折れなかった。
「商人の子せがれにだって、意地はあるんだ!」
怒りと屈辱を胸に、彼は商人としての才覚を武器に、静かなる反撃を開始する。
舞踏会の翌日、元婚約者の実家に突如として訪れる債権者たち。
差し押さえ、債権買収、そして“後ろ盾”の意味を思い知らせる逆襲劇が幕を開ける!
これは、貴族社会の常識を覆す、ひとりの青年の成り上がりの物語。
誇りを踏みにじられた男が、金と知恵で世界を変える――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる