33 / 106
ヒーロー達の青春エピローグ~夏の章~
【第32話】どこに惚れたんですか?
しおりを挟むこの日は、少し天気がぐずついていた。
それでも夏だ。蒸し暑さは健在である。
そんな天候の下、天宮姫は近くのコンビニに足を運んでいた。
勉強に使うノートを購入する為だ。
「うーん……本当はA4サイズが良いんだけどなぁ……コンビニでそこまで求めるのは酷だよねぇ。よし、これにしよう」
陳列されているノートに手を掛けようとした、その時――
「あら、姫さんじゃない。久しぶりね」
「え? あ……宇宙さん! お久しぶりです!」
久しぶりに会った宇宙に頭を下げる姫。
「そんなにかしこまらなくても良いわよ」と、宇宙は応える。
「あの戦い以来ね、元気にしてた?」
「はい! それはもう、元気元気です!」
「そっ。…………特に最近は、いつもより元気って噂を耳にしたのだけれど……」
「え?」
「聞いたわよ――――球乃くんと付き合う事になったんですってね」
「…………っ!」
急に恋愛話をぶっ込まれて、驚きつつも顔を真っ赤にする姫。
宇宙は、そんな彼女を見て(初々しいな)と思いつつ、こう述べた。
「色々と大変だったみたいじゃない。上手くいって良かったわね。おめでとう」
「あ、ありがとうございます。そうなんです、色々大変で…………。月夜ちゃんや太陽さん、愛梨さん達に本当に救われましたよ。おかげさまで、無事…………」
そんな事を言っている内に恥ずかしくなってきたのか、顔を真っ赤にさせながら、「わ、私の……私達の事なんて良いんですよ!」と、話を変えた。
「宇宙さんも、土門さんと付き合ってるんですよね? まだ直接言えてませんでしたよね? おめでとうございます」
「…………ええ、ありがとう」
「いやぁ、お二人は私達と違ってスムーズにお付き合い出来たようで羨ましいなと思ってました! 深い所で繋がってるんだなぁって! 私達もそうなりたいなぁって!」
「………………」
しかし宇宙は、姫のその言葉に、何も返事を返さない。
(え? なぜ無言なの? 私今、変な事言った?)
すると宇宙は、姫に聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟いた。
「深い所で……繋がっている……ねぇ……」
「宇宙……さん……? 今……」
「何でもないわ。気にしないで」
気にしないで――そう言われたら、逆に気になってしまうものだ。
姫は察した。(ひょっとして……)と。
「あの……もしかしたら、の話で。こんな事を尋ねるのは失礼にあたるかもですけど……あえて聞きますね。ひょっとして――
土門さんと、上手くいってないんですか?」
姫のその問い掛けを聞き、宇宙は目を細めた。
「本当に失礼な問い掛けね……何故、そう思ったのかしら?」
「そ、それは……その……何となく……です」
「そ…………良い勘、してるわね」
「じゃ、じゃあ! やっぱり上手くいってないんですね!?」
見つめ合う姫と宇宙。
ほんの数秒間の沈黙後、口を開いたのは宇宙だった。
「なぁーんてね。冗談よ」
「え?」
「順調も順調。超順調。私と忍くんの間を引き裂くなんて、例え神様でも不可能よ」
「本当ですか!? でも、さっきまで……」
「さっきまでのはジョークよジョーク。あ、ジョーズではないからね? ジョークよ」
「……それは、心が鮫《冷め》てしまうジョークですね」
「あら、お上手」
何だか、しょうもないダジャレで話を逸らされた気がするが、姫はそれを甘んじて受け入れる事にする。
甘んじて――信用する事にしたのだ。
「まぁ……宇宙さんが順調、と言うのなら、私はそれを信じます……」
「……そう。相変わらず良い子ね、姫さんは」
「?」
「きっと……球乃くんは、あなたのそういう所に惚れたのだと思うわ」
「そ、そうなんですかね? それは大ちゃんに聞いてみないと分かりませんけど……」
「……そうよね。本人に聞かなくちゃ、分からないわよね……」
「…………宇宙さんは……」
「ん?」
「宇宙さんは、土門さんのどこに惚れたんですか?」
「随分と、踏み込んだ質問をするのね」
「あ、いや、すみません……気になったもので……」
「……どこに惚れた、かぁ……そうだなぁ……」
宇宙は、答える。
「無理をしてでも、私に合わせようとしてくれる。そんな……優しい所かな?」
「優しい所……」
「ご理解頂けたかしら?」
「ええ……まぁ……そうですね……」
姫はやはり、(何かがおかしい)と感じている。
その違和感が、ただの杞憂なのか、はたまた真実なのかが煙に巻かれているようで見抜けない。
「ねぇ姫ちゃん。最後に私から一つ、質問して良い?」
「……どうぞ」
「姫ちゃんは――――球乃くんの事、好き?」
「好きですよ」
即答だった。
「そっか……なら、大事にしてあげてね」
「もちろんです。…………最後に、私からも質問良いですか?」
「どうぞ」
「宇宙さんは――――土門さんの事、好きなんですか?」
「私から告白したのよ? 好きに決まってるじゃない」
これもまた、即答だった。
「久しぶりに会えて、少し話し過ぎちゃったわ。時間を取らせてごめんなさい」
「いえいえ、そんな……」
「じゃあね姫さん。…………お幸せに」
そう言い残し、宇宙は去っていった。
姫は結局、その違和感を払拭出来なかった。
「大丈夫……なのかなぁ?」
コンビニの外……空が真っ暗に染まり、ゴロゴロと雷の音が聞こえてきだした。
まもなく――大雨が来る。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる