ヒーロー達の青春エピローグ

蜂峰 文助

文字の大きさ
43 / 106
エピソード2『星空宇宙と土門忍』

【第42話】星空宇宙と土門忍④

しおりを挟む

 先刻までの土砂降りは収まり……今はシトシトと雨が降っている。
 止むまで、あと少しといった所だ。

 忍は、瞬間移動で宇宙の家の前まで来ていた。

 大きく深呼吸を三回して、インターホンの上に指を置く……のを、かれこれ十回以上繰り返している。
 彼もまた腰抜けだったのだ。

(き……緊張するーっ!! 会ったとしても何から話せば良いんだ!? そもそも迷惑じゃないのか!? 余計に嫌われないかな!? 太陽はああ言ってたけど、向こうに復縁の気持ちなんてないんじゃ…………怖いな……)

 しかし、そんな腰抜けムーヴも、長くは続かない。

(怖かっただろうな……あの時の宇宙も……。こんな恐怖を、拙者は押し付けてしまっていたのか……。そんな事も知らず、拙者は……。自分が恥ずかしい!! 何を縮こまっているのだ土門忍!! 宇宙は出したんだぞ!? 勇気を!! 男の拙者が出さなくてどうするんだ!! 出すんだ!! 振り絞れ――――勇気を!!)

 インターホンに掛けられた手に、力を入れようとした……その時――

「……忍くん?」
「どひゃあっ!!」

 背後から声を掛けられた。
 忍は凄くビックリしていた。変な声が出る程には。

「な……何だよ……宇宙か……。驚かせるなよ……」
「…………」
「ん? ……宇宙? 宇宙ぁぁあっ!? え? え? 何で外に!? だってお前は……」
「私も……外出してたから……」
「うん……ちょっと、愛梨に呼び出されて、ね……海行って来た」
「白金に……? 海……?」
「ええ……それで……何か、用なのかしら……」
「あ、ああ。そうだった……話があるんだ、宇宙」
「奇遇ね……私も、あなたに話があったの」
「そうか……」
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」

 沈黙が続く二人……。
 忍の全身から汗が吹き出てしまう。

(き、気まずい! な、何か話さねぇと……! もしかしたら、こんな空気が嫌で、別れようってなったのかもしれねぇし! これも一つの要因かもしれねぇし!! 何か……何か話の種は――――)

『その気持ちを、星空に全部ぶつけてこい!!』

 咄嗟に思い浮かんだのは、太陽の……その、言葉だった。

(拙者の……全部…………)

 すると忍の脳裏に、一つの話題が浮かび上がった。

「…………宇宙。今から時間大丈夫か?」
「え? ええ……何も予定は入っていないわ」
「一緒に行きたい場所があるんだ……」
「一緒に……?」
「ああ……宇宙――お前と、一緒に行きたい場所が」
「構わない……けれど……」
「早速行こう……悪いが瞬間移動をしなくちゃいけない場所なんだ。その……手を、握らせてもらうぞ」
「え、ええ……どうぞ……」

 忍が宇宙の手を握り、瞬間移動を行う。

 二人がやって来たのは――――山だった。

 二人が住んでいる街の近くにある山。
 その山の頂上。

「…………ここって……」
「そう……昔、拙者と宇宙の二人で、あの【雪使い】と闘った場所だ。闘いの痕跡が残ってて、今や立ち入り禁止エリアとなっている……」
「え? それじゃあ来ては駄目なんじゃ……」
「拙者達は瞬間移動を使って来たから良いんだ。立ち入り禁止というのも、そもそも、道中が危険という意味らしいから」
「……屁理屈言ってる」
「拙者は事実を述べただけだ」
「事実ねぇ……ふふっ。でも、何で急にこんな所へ?」
「宇宙に、拙者の事を知ってもらう為だ」
「え?」

 きょとんとする、宇宙。
 忍がこの場所へ来た理由を話し始める。

「ここから見える景色……凄く綺麗なんだ。晴れの日も、雨の日も……それぞれ風情があって、美しい」
「おじいちゃんみたいな事言ってる……」
「うるせぇやい。…………コホンッ! で、美しいので、拙者はいつも、何か嫌な事があればここに来るようにしている、という訳だ。拙者にとっての、パワースポットと言った所だろうか?」
「パワースポット……そうなんだ……」

 宇宙は、その場所から見える改めて見渡す。
 「綺麗……」と、小さく零した。

「知らなかっただろう……? 拙者のこういう一面を。拙者は何も話して来なかったからな……こういう所を……本当に、すまなかった……」
「それは……私も同じ……。私も……何も、忍くんに相談出来てなかった……」
「相談……?」
「うん……愛梨に少し怒られちゃった……。周りが見えなくなってる――ってさ……。恋愛ってそういうものだとも、言っていたけれど……」
「そっか……お互い反省点だな」
「うん……ねぇ、忍くん。私ね? 愛梨と万屋みたいな関係が、恋愛の形の完成系であり、ああいう風にあるべきだって……決めつけてたんだよね……。だから、私には無理だってなっちゃってたの……私は……明るくないから……」
「確かにそれは、視野が狭くなってると指摘されてもおかしくないな」
「……だよね……ごめん……」
「…………だが、太陽と白金の関係は確かに魅力的だ。あんな風になれたらと、拙者も思っていた」
「思って……いた……? 過去形?」
「ああ、過去形だ」
「今は思ってないの……?」
「全く思ってない。アレはアレで素晴らしい関係性だとは思うが……拙者達は、あんな風になれないだろ?」
「うん……そうだよね……やっぱり……私達は無理……」
「それに――あんな風になれなくても、拙者は幸せだったしな」
「……え?」
「太陽や白金みたいに、和気藹々としてなくても……ただ――横にいてくれるだけで、安らぎを感じられる……そんな関係性も良いなって、思えた……。この、目の前に広がる――美しい景色のように、な……」

 宇宙は、目の前に広がる景色へと目を向ける。
 ――安心感を得られる、場所……。

――だろ? 別に……あの二人みたいに面白い言葉の掛け合いがなくたって、拙者は、ただ隣に宇宙が居てくれるだけで充分、幸せだったんだ……どうだ? むしろ、そっちの方が良いと思わないか? 自然に……繋がっている感じがして……」
「…………ええ……そう、ね……グスッ……本当に……その、通り……だわ……」
「そうだろ? ……って! えぇっ!?」

 宇宙が号泣していた。
 ギョッとする忍。

「な、何で泣いているのだ!? 宇宙!! な、何か拙者、辛い事言ったか!? ご、ごめん……!!」
「ううん……違うの……わ、私の方こそ……ごめんなさい……一人で、勝手に悩んで……一人で勝手に、決断して……忍くんを……困らせて……挙げ句の果てに、催眠までかけて! 忍くんを……傷付けた……最低だね……私……本当に、最低だ……」
「……宇宙……」
「っ!!」

 忍は、そんな宇宙をギュッと、抱きしめた。
 丁度その時――曇り空から、光が姿を見せ始めた。
 眩い光に……二人は照らされる。

「宇宙……『拙者達の恋愛の形』は、これから探して行こう……」
「……うん……」
「太陽や白金に嫉妬させるぐらいのを……見つけてやろう」
「…………うん……!」
「何年……いや、何十年かかってでも――見つけだそう」
「……うん!」
「宇宙……」
「……何?」
「拙者は――――


 宇宙の事が、大好きだ。だから拙者ともう一度――」


 忍がそれを言い終える前に、宇宙は彼の口を……唇で、塞いだのだった。
 照れ臭そうに、そして恥ずかしそうに、彼女は声を落とす。

「……これが答え……ダメ?」
「…………っ!!」

 忍は顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
 そしてその後――

「ううん!! ダメじゃないっ!!」
「ちょっ! 痛いって忍くん!」

 ギュッと……ギューッと、宇宙の小さな身体を、抱きしめたのだった。
 大好きな――彼女の身体を……。

 雨降って地固まる。

 その言葉通り、二人の関係は今後……この一件をきっかけに、より深いものになっていく……。
 まるでそれを祝福するかのように……広がる青空の真ん中で、太陽がサンサンと、輝いていたのだった。

 


 エピソード2『星空宇宙と土門忍』――〈完〉
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉

朝陽七彩
恋愛
突然。 同居することになった。 幼なじみの一輝くんと。 一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。 ……だったはず。 なのに。 「結菜ちゃん、一緒に寝よ」 えっ⁉ 「結菜ちゃん、こっちにおいで」 そんなの恥ずかしいよっ。 「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、 ほしくてほしくてたまらない」 そんなにドキドキさせないでっ‼ 今までの子羊のような一輝くん。 そうではなく。 オオカミになってしまっているっ⁉ 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* 如月結菜(きさらぎ ゆな) 高校三年生 恋愛に鈍感 椎名一輝(しいな いつき) 高校一年生 本当は恋愛に慣れていない 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* オオカミになっている。 そのときの一輝くんは。 「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」 一緒にっ⁉ そんなの恥ずかしいよっ。 恥ずかしくなる。 そんな言葉をサラッと言ったり。 それに。 少しイジワル。 だけど。 一輝くんは。 不器用なところもある。 そして一生懸命。 優しいところもたくさんある。 そんな一輝くんが。 「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」 「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」 なんて言うから。 余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。 子羊の部分とオオカミの部分。 それらにはギャップがある。 だから戸惑ってしまう。 それだけではない。 そのギャップが。 ドキドキさせる。 虜にさせる。 それは一輝くんの魅力。 そんな一輝くんの魅力。 それに溺れてしまう。 もう一輝くんの魅力から……? ♡何が起こるかわからない⁉♡

処理中です...