49 / 106
エピソード3『万屋太陽と白金愛梨』
【第48話】万屋太陽と白金愛梨⑤
しおりを挟むその日の朝――太陽は、いつもより早く目が覚めた。
いつもより早く準備をし、いつもより早い時間に朝食のテーブルについた。
なので普段なら先に、準備をして学校に向かっている月夜が居る。
「え? どういう風の吹き回し? あんた今日早くない?」
「……眠れなかったんだよ……」
「眠れなかった? 能天気バカのあんたが……? 今日、何か緊張する事でも……あ…………」
言葉の途中で、月夜は気が付いた。
彼女には心当たりがあるのだ……太陽が、緊張してしまう程のイベントに。
(……そっか……今日、なのか……)
先に朝食を食べ終えていた月夜は、食器をまとめ、洗い場まで持っていく。
食器を洗った後、手を拭きながら、朝食を食べている太陽の横を通り過ぎる。
「ねぇ兄貴……」
「ん?」
「白金……さん、ってさ……良い人だよね?」
「……何を今更……分かりきってる事だろ」
「うん……そだね。分かりきってる事だ」
「つーかアレだな。お前が、白金を話題に出すなんて珍しいな。あんだけ嫌ってる感じだったのに」
「まあね……ちょっと、心境の変化があったから……」
「うむ、良い事だ。きっとその方が、白金も喜ぶ」
「…………だろうね」
月夜はカバンを持ち、「行ってきます」と家を出ようとする。
「ああ、そうそう……兄貴」
「ん?」
「頑張ってね」
「へ?」
頑張ってね――その言葉を残し、月夜は一足先に家を出た。
「頑張って……て……何を……?」
キョトンとしている太陽。
そんな太陽に、皐月が声を掛ける。
「きっと……見抜かれているのよ。今日、あなたがしようと思っている事を」
「あ……バレバレ?」
「うん、バレバレ。隠す気あるのってくらい、顔に出てるわよ」
「そ、そうなのか?」
「早起きしてるし、態度にも出ているわ」
「…………」
(確かに……)と、思う太陽だった。
「心配しなくても大丈夫よ。きっと……愛梨ちゃんも覚悟している筈だから」
「覚悟……?」
「うん、覚悟。だから思い切って、当たって砕けてきなさい」
「当たって砕けたらフラれてねぇか?」
「……頑張ってね。太陽」
「…………おう」
そんな会話を交わしつつ、朝の準備を終えた太陽は、いつもよりも早い時間に家を出た。
家を出た彼を迎えたのは、予想外の人物であった。
「おはよう、万屋」
「星空? お、おはよう」
宇宙だった。
彼女と二人っきりで会うのは、『あの時』以来である為、少し気まずそうに挨拶を交わした両名。
「ど、どうしたんだよ……待ち伏せか?」
「たまにはね……万屋と一緒に学校行くのも有りかなって思って」
「……忍に気まずいんだが……」
「大丈夫。忍くんには許可を得ているわ」
「そ、そうか……」
「行きましょう」
「……おう……」
並んで歩く二人……。
「あの時以来ね……ちゃんと話をするのは」
「あ、ああ……」
「謝罪をするのが遅くなってしまったわね……ごめんなさい。私……あなたに酷い事を言ってしまったわ……」
「良いよ。オレが腰抜けだったのは、本当の事だし」
「いいえ……例えそうでも、私が酷い事を言った事には変わりない……あなたと愛梨との関係には、色々なものが渦巻いている事を私は知っていたのに……星空宇宙、人生最大の不覚だわ」
「色々と……ねぇ……」
「だから本当にごめんなさい……」
「だから謝らなくて良いって。お前にケツを蹴られたから、オレは今こうして勇気を出そうって気になれたんだ……ありがとうって気分だよ」
「勇気を……そっか……」
「なぁ? 星空……」
太陽が足を止める。それに合わせて、宇宙も。
「何?」
「お前さ、あの時……告白なんてするものじゃないって、アドバイスくれたよな? 今も……そう思っているのか?」
「全然? 今は――――あの時、勇気を出して告白して良かったって思ってるわよ」
「そっか。そう思えて……本当に、良かったな」
「ええ……そうね……」
そして二人は再び歩き出す。
学校生活は、いつものように過ぎ去っていった。
いつものように授業を受け。
いつものように昼休みを過ごし。
いつものように昼食をとり。
いつものように授業を終える。
そして、時は放課後へ――――
「よし! 行くか!」
勢い良く、椅子から立ち上がる太陽。
ズンズンと歩き出す彼に、三つの声が掛けられる。
「いよいよだな、太陽」
「やっとこさ、ヘタレ卒業する気になったかぁ」
「また日和らねぇ事を、祈っとくよ」
忍、千草、透士郎の三名だった。
「お前ら……」
「隠してるつもりだったろうが……バレバレだったぜ?」
「そ、そうか……?」
「うんうん! いつも授業中、バカみたいに寝てるのに、今日はちゃんと授業受けてたもんなぁー。分かりやすいくらい緊張してたよね?」
「くそ……まさか、普段の不真面目さが足を引っ張るだなんて……」
「太陽……告白とは、良いものだぞ」
「忍……ああ、分かってる!」
そして、親友である三名は背中を押して送り出す。
「「「言って来い! 思いっ切り!! ぶちかませよ!!」」」
「おうっ!!」
太陽は、力強い返事をして歩き出す。
事前に手紙で伝えていた――――約束の場所へ……。
彼と彼女の出会いは中学二年生の時。
二人の出会いは最悪なものであった。
そんな最悪から……二人は少しずつ、関係を構築していった。
時にぶつかり合い……時に助け合い。少しずつ。
二人は、世界を救う戦士となった。
いつしか二人は友達になった。
いつしか二人は、友達以上の関係になった。
そして二人は共に――――
世界を救ったヒーローとなった。
その後からだ……太陽が、愛梨との関係をそういう風に考え始めたのは。
世界を救った後――
太陽と愛梨の、新たなステージへの扉は……この時、開かれた。
終わりであり……始まりの地――
太陽が選んだ場所は――その場所だった。
永きに渡る闘いが終わり……そして、青春が始まった場所。
最終決戦の場所。
最強最後の敵――アダンを、皆の力を合わせて倒した場所。
激闘の跡が、今も尚残るその荒野で……愛梨は、太陽の事を待っている。
その時が、間もなく訪れようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる