ヒーロー達の青春エピローグ

蜂峰 文助

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エピソード3『万屋太陽と白金愛梨』

【第48話】万屋太陽と白金愛梨⑤

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 その日の朝――太陽は、いつもより早く目が覚めた。
 いつもより早く準備をし、いつもより早い時間に朝食のテーブルについた。
 なので普段なら先に、準備をして学校に向かっている月夜が居る。

「え? どういう風の吹き回し? あんた今日早くない?」
「……眠れなかったんだよ……」
「眠れなかった? 能天気バカのあんたが……? 今日、何か緊張する事でも……あ…………」

 言葉の途中で、月夜は気が付いた。
 彼女には心当たりがあるのだ……太陽が、緊張してしまう程のイベントに。

(……そっか……今日、なのか……)

 先に朝食を食べ終えていた月夜は、食器をまとめ、洗い場まで持っていく。
 食器を洗った後、手を拭きながら、朝食を食べている太陽の横を通り過ぎる。

「ねぇ兄貴……」
「ん?」
「白金……さん、ってさ……良い人だよね?」
「……何を今更……分かりきってる事だろ」
「うん……そだね。分かりきってる事だ」
「つーかアレだな。お前が、白金を話題に出すなんて珍しいな。あんだけ嫌ってる感じだったのに」
「まあね……ちょっと、心境の変化があったから……」
「うむ、良い事だ。きっとその方が、白金も喜ぶ」
「…………だろうね」

 月夜はカバンを持ち、「行ってきます」と家を出ようとする。

「ああ、そうそう……兄貴」
「ん?」
「頑張ってね」
「へ?」

 頑張ってね――その言葉を残し、月夜は一足先に家を出た。

「頑張って……て……何を……?」

 キョトンとしている太陽。
 そんな太陽に、皐月が声を掛ける。

「きっと……見抜かれているのよ。今日、あなたがしようと思っている事を」
「あ……バレバレ?」
「うん、バレバレ。隠す気あるのってくらい、顔に出てるわよ」
「そ、そうなのか?」
「早起きしてるし、態度にも出ているわ」
「…………」

 (確かに……)と、思う太陽だった。

「心配しなくても大丈夫よ。きっと……愛梨ちゃんも覚悟している筈だから」
「覚悟……?」
「うん、覚悟。だから思い切って、当たって砕けてきなさい」
「当たって砕けたらフラれてねぇか?」
「……頑張ってね。太陽」
「…………おう」

 そんな会話を交わしつつ、朝の準備を終えた太陽は、いつもよりも早い時間に家を出た。
 家を出た彼を迎えたのは、予想外の人物であった。

「おはよう、万屋」
「星空? お、おはよう」

 宇宙だった。
 彼女と二人っきりで会うのは、『あの時』以来である為、少し気まずそうに挨拶を交わした両名。

「ど、どうしたんだよ……待ち伏せか?」
「たまにはね……万屋と一緒に学校行くのも有りかなって思って」
「……忍に気まずいんだが……」
「大丈夫。忍くんには許可を得ているわ」
「そ、そうか……」
「行きましょう」
「……おう……」

 並んで歩く二人……。

「あの時以来ね……ちゃんと話をするのは」
「あ、ああ……」
「謝罪をするのが遅くなってしまったわね……ごめんなさい。私……あなたに酷い事を言ってしまったわ……」
「良いよ。オレが腰抜けだったのは、本当の事だし」
「いいえ……例えそうでも、私が酷い事を言った事には変わりない……あなたと愛梨との関係には、色々なものが渦巻いている事を私は知っていたのに……星空宇宙、人生最大の不覚だわ」
「色々と……ねぇ……」
「だから本当にごめんなさい……」
「だから謝らなくて良いって。お前にケツを蹴られたから、オレは今こうして勇気を出そうって気になれたんだ……ありがとうって気分だよ」
「勇気を……そっか……」
「なぁ? 星空……」

 太陽が足を止める。それに合わせて、宇宙も。

「何?」
「お前さ、あの時……告白なんてするものじゃないって、アドバイスくれたよな? 今も……そう思っているのか?」
「全然? 今は――――あの時、勇気を出して告白して良かったって思ってるわよ」
「そっか。そう思えて……本当に、良かったな」
「ええ……そうね……」

 そして二人は再び歩き出す。

 学校生活は、いつものように過ぎ去っていった。

 いつものように授業を受け。
 いつものように昼休みを過ごし。
 いつものように昼食をとり。
 いつものように授業を終える。

 そして、時は放課後へ――――

「よし! 行くか!」

 勢い良く、椅子から立ち上がる太陽。
 ズンズンと歩き出す彼に、三つの声が掛けられる。

「いよいよだな、太陽」
「やっとこさ、ヘタレ卒業する気になったかぁ」
「また日和らねぇ事を、祈っとくよ」

 忍、千草、透士郎の三名だった。

「お前ら……」
「隠してるつもりだったろうが……バレバレだったぜ?」
「そ、そうか……?」
「うんうん! いつも授業中、バカみたいに寝てるのに、今日はちゃんと授業受けてたもんなぁー。分かりやすいくらい緊張してたよね?」
「くそ……まさか、普段の不真面目さが足を引っ張るだなんて……」
「太陽……告白とは、良いものだぞ」
「忍……ああ、分かってる!」

 そして、親友である三名は背中を押して送り出す。

「「「言って来い! 思いっ切り!! ぶちかませよ!!」」」
「おうっ!!」

 太陽は、力強い返事をして歩き出す。

 事前に手紙で伝えていた――――約束の場所へ……。



 彼と彼女の出会いは中学二年生の時。
 二人の出会いは最悪なものであった。
 そんな最悪から……二人は少しずつ、関係を構築していった。
 時にぶつかり合い……時に助け合い。少しずつ。
 二人は、世界を救う戦士となった。
 いつしか二人は友達になった。
 いつしか二人は、友達以上の関係になった。
 そして二人は共に――――

 世界を救ったヒーローとなった。

 その後からだ……太陽が、愛梨との関係をに考え始めたのは。
 世界を救った後――

 太陽と愛梨の、新たなステージへの扉は……この時、開かれた。

 終わりであり……始まりの地――

 太陽が選んだ場所は――その場所だった。

 永きに渡る闘いが終わり……そして、

 最終決戦の場所。
 最強最後の敵――アダンを、皆の力を合わせて倒した場所。

 激闘の跡が、今も尚残るその荒野で……愛梨は、太陽の事を待っている。

 その時が、間もなく訪れようとしていた。
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