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ヒーロー達の青春エピローグ~秋の章~
【第55話】それなら仕方ないね……
しおりを挟むキーンコーンカーンコーン。
放課後を告げるチャイムが鳴った。
「んあーっ! 今日も一日終わったぁー!」
と、授業から解放され、勢い良く伸びをする月夜。
「ねぇねぇ静! 今日さ、この後カラオケに行かない?」
ウキウキとした表情で月夜は、静にそんな提案を持ちかける。
しかし静は申し訳なさそうな表情で手を合わせた。
「ごめん月夜。申し訳ないが、今日は千草くんとデートの約束をしているんだ。すまない!」
「あー……そっかぁ……それなら仕方ないね……」
「本っ当に、すまない!」
「謝らなくていいし。それよりどうなの? あのエロキノコと上手く言ってんの?」
「ああ! 私と千草先輩は、上手くいき過ぎて不安になるくらい上手くいってるぞ! まだ私達のエピソードが展開されていないので、読者の方々は、さも忍先輩や静先輩の時のように私と千草くんの関係にヒビ割れのようなものが訪れるのではないかと戦々恐々としている事だろうが、その心配はしなくてもいい! 何故なら私と千草くんはラブラブだからな! 倦怠期? 何だそれは!」
「誰に向かって語りかけてんのよ……てゆーか、読者って何?」
静のメタ的な発言は置いておいて。
「順調にいっているなら良いや」と、月夜は安心する。
「月夜は優しいな! これからもどうか私と千草くんを見守ってくれるとありがたい!」
「見守らなくても、あんた達なら大丈夫でしょ」
「うむ! それもそうだな!」
あっはっは! と、高笑いをする静。
一方で月夜は心の中で、一つの懸念点を危惧していた。
(周りが邪魔しなければ――ね……)
「そんな訳で月夜。何度も謝罪するが、今日の埋め合わせは必ずするから」
「ん、了解。いってらー。楽しんで来てね」
「ありがとう! ではまた明日!」
ルンルンと足早に去っていく静を、ため息混じりに月夜は見送った。
仕方ないと割り切り、帰宅を選び鞄を持つ。
廊下を歩いていると、窓から校庭を歩く二つ人影を見つけた。
姫と大地である。
遠巻きで見て分かる程度にイチャイチャしていた。
「あの二人は……声も掛ける必要がないなぁ」
そんな二人を見つめながら、月夜は小さくそう呟いた。
そして思ってしまう……。
(周りはどんどん変わっていっている……なのに私は……)
暗い思考に支配されそうになったのを、自らの両頬をビンタする事で踏み止まる。
「いけないいけない! 私は受験生なんだ。色恋沙汰を羨んでる時間なんてない! 学生の本分は勉強なのよ! さ! 家に帰って勉強勉強っ!」
そして月夜は帰宅する。
鍵を使い、玄関の扉を開ける。
「ただいまぁー」
しーん……。
しかし、誰からも返事はない。
沈黙と、薄暗い部屋だけが、月夜を出迎えた。
近頃はずっとこうである。
太陽は、彼女である愛梨とほぼ毎日放課後デートをしているし。
皐月も剛士の家に夕飯を作りに、家を空ける事が多くなっていた。
つまり――
月夜は家に一人でいる時間が多くなっている。
「……ま、これも勉強に集中しやすい環境が出来上がったと思えば……悪くは……ないかな?」
そう思う事にして、そそ草と制服から部屋着に着替え、自分の部屋へ上がった月夜。
勉強机を前に、ノートや参考所、そして筆記用具を用意。
勉強を始める。
一心不乱にペンを動かし。
脳をフル回転させている。
解けない問題を必死に、解けるように努力する。
寂しさから、目を逸らせる為に。
ふと、たまにソレから目を逸らせなくなる瞬間がある。
ペンを持つ手に力が入り、泣きたくなる瞬間が……。けれど月夜は負けない。すぐに切り替え、再び勉強の世界へと舞い戻る。
しかし――
たまにこんな弱音を吐きたくなる事もあるのだ……。
「大丈夫……とは、言ったけどさ……。やっぱ……寂しいのは……寂しいんだよなぁ……」
時刻は十九時二十五分を指していた。
もう既に日は沈んでおり。
家の中は、月夜一人であった。
……時は少し遡り。
キーンコーンカーンコーン。
太陽達の通う高校でも、放課後を告げるチャイムが鳴っていた。
それと同じくして、透士郎が鞄の中へ机の中の教科書を詰め込み帰り支度をしていた。
「泡水くん、今日はこのまま帰るの?」
そんな透士郎に声が掛けられる。
「? そうだが……何だ? 白金、そっちからオレに声を掛けてくるなんて珍しいな。太陽からオレに乗り換えようってか?」
愛梨だった。
「それは絶対にないわ。だって私は、太陽一筋だから」
「おーおー。熱々で羨ましいねぇ……。で? それで、何の用だ?」
「ちょっと話があるんだけれど……良いかしら?」
「話……?」
「うん」
そんな訳で、透士郎は愛梨に連れられ、校舎裏へ……。
「良いのか? 彼氏のいるお前が、フリーのオレを、傍から見れば勘違いされそうな場所へ連れて来て。太陽に誤解されねぇか?」
「太陽にはちゃんと承諾を得ているから、大丈夫」
「さようですか」
向き合う、透士郎と愛梨。
「で、何だ? 話って」
愛梨は、真剣な表情で言う。
「もうそろそろ……静観するのはやめた方が良いんじゃないかな?」
「静観? 何の事だ?」
「わざわざ聞かなくても、頭の良い透士郎くんなら分かるでしょ?」
「……オレは、頭――良くなんてねぇよ……買い被りすぎだ」
「あらあら……謙遜しちゃって……。バレバレの嘘、つかない方が良いわよ。何せ私は――他人の心が、読めるのだから」
「…………太陽が、お前の事『性格悪い』って言ってた理由が分かった気がするよ……」
「ふふっ、よく言われるわ」
苦笑いの透士郎に、愛梨が踏み込む。
「今――月夜ちゃんは、とっても苦しんでいるわ。あなたもそれは当然、理解しているでしょう?」
「……ああ、まぁな」
「大丈夫だから……」
「……何が?」
「太陽くんも……あなたならって、思っているから……」
「…………」
「はっきり言うわよ? 透士郎くん……」
「…………」
「今のこの状況で、月夜ちゃんを心から笑顔に出来るのは――
あなたしかいないわ」
そして、無言の透士郎に向かって頭を下げる愛梨。
「お願いします……どうか、勇気を出して月夜ちゃんと向き合ってあげてください……。自分の気持ちに目を逸らさず、その気持ちを素直に受け止めてください……。あなたの親友は、あなたが思っている程、心の狭い人では……ありませんから」
「…………」
その言葉を受けた、透士郎が取る行動とは――
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