98 / 106
エピソードFINAL『白金愛梨と万屋太陽』
【第97話】白金愛梨と万屋太陽⑤
しおりを挟む三月六日の夜――
愛梨は用意された『日本超能力研究室』の寮部屋の中で、物思いに耽っていた。
(太陽は……待ってるって言ってくれた……。こんな私を……。信じてくれているんだ……。…………期待に……応えたいなぁ……でも、どうすれば…………)
彼女の人間不信は相当なものだ。
好きな人に『変われ』と言われて、おいそれと変われるようなものではないのだ。
それで変われたとしたら、これまでの苦悩は一体なんだったんだ? という話にもなる。
(あー……どうしよ……人間不信って、どうすれば治るのかなぁ……? どうすれば、人を信用出来るようになるんだろう……? どうすれば……どうすれば……うーん……分かんないよぉー! そもそも、人間が皆が皆腹黒だからいけないんだよ!! どうして日本政府は、腹黒な奴は死刑! みたいな法律作らなかったんだろう? 理解出来ないわ! 全くもって、理解不能よ! そうだわ! こうなったら、私が総理大臣になって、その法律を作ってしまえば良いのよ!! そうすれば、腹黒な人達はいなくなって! 心が綺麗な人だけが生き残り! 私も心置きなく人を信じれるように――――って! アホなの私は!? そんな思想は悪役以外の何者でもないじゃない!! 悪は成敗されてお終いなのよ!? そんな人生ごめんだわ! あぁ……駄目だ……思考が空回りしちゃってるよぉ……)
「白金……お前、ひょっとして滅茶苦茶な事考えてないか?」
「そうなの……総理大臣になって日本の法律を変えちゃおうとか、訳の分からない事ばっかり考えちゃって……思考回路が太陽しちゃってる……」
「それは大変だな……病院で診てもらった方が良いんじゃないか?」
「そうね! 早速救急車を呼んで病院に――――って!! 何でここに……忍くんがいるのぉ!?」
部屋の中に忍がいた。
日の暮れた女子部屋に、何食わぬ顔で不法侵入していた。
「何でって……【瞬間移動】を使って入ったが? マズかったか?」
「当たり前でしょう!? それに私今、侵入方法を聞いた訳じゃないから!」
「そうなのか?」
「そうよ! それに、彼女いる身で女の子の部屋に二人きりは、マズイでしょう!! また宇宙と揉めたいの!?」
「いや、その辺は問題ない。宇宙にはちゃんと了承を得ている」
「え? あ……そ、そうなんだ……」
「それに、拙者が何か間違った行動をしないように、透士郎に【千里眼】で覗いて貰っているからな。万事抜かりはない」
「この部屋覗かれてるの!?」
「ああ! 透士郎の【千里眼】から逃れる術はないぞ」
「信じられない!! 私のプライバシーはどこへいったの!?」
「まぁまぁ、落ち着けよ白金」
「これで落ち着いてなんかいられないわよっ!!」
「……まったく……騒がしい奴だ」
「誰のせいよっ!!」
珍しくツッコミに回り、主導権を握られてしまっている愛梨。
忍の天然……恐るべしである。
「ま、拙者が帰れば、透士郎の監視も解除となるだろうから、そこは安心してくれ」
「そりゃそうでしょう……一日中監視なんてされた日には、話の流れぶった切ってでも、太陽と月夜ちゃんに連絡するからね」
「百%その心配はないから安心しろ。あくまでもこの監視は、拙者を見張る為のものだ」
「そ、そう……なら良いけど……」
ホッと胸を撫で下ろした。
そして、話は本題に入る。
「コレを――――お前に渡す為に来たんだ」
「手紙……?」
訝しみながら、忍からの手紙を受け取る。
「お前の【読心】を前に、隠しても仕方がないので正直に言うが、拙者達は、お前と太陽に一刻も早く寄りを戻して欲しいと考えている」
「……そう……でも……」
「その為の手助けを出来れば、と思い……拙者達は、その企画を考えた、という訳だ」
「企画……?」
「詳しい事は、その手紙に書いてある。指定の日時にそこへ集合してくれ。あ、服装は絶対に『戦闘服』な? 忘れないように。
では――心を読まれる前に……さらばっ!」
「ちょっ! 忍くん……! …………行っちゃった……」
愛梨の手元には、渡された手紙が残されている。
「企画って…………一体何を企んで……」
手紙の封を切り、中身を確認。
書かれた文章を見て――愛梨は目を向いた。
「え……? こ、これって…………」
一方その頃――忍は【瞬間移動】にて、宇宙と透士郎……そして、月夜のいる忍宅へと戻っていた。
「忍くん、お疲れ様」
「うむ。抜かりなく、渡して来たぞ」
「そうみたいだな」と透士郎が答えた。
月夜がコピーしていた手紙を読みながら、やれやれ……といった表情を浮かべている。
「それにしても……よくもまぁ、こんなバカバカしい事考えたものね……これ、本当に効果あるの?」
「ん? 拙者は『いける』と思ったから提案したのだが……駄目そうか? それならそうと早く……」
「はいはい、分かった分かった。やります、やりますよーだ」
月夜が、まるで降参したかのように頷いた。
「それに……」と、彼女は続ける。
「あのバカには……直接言ってやりたい事もあるしねー……良い機会だわ」
「だろう? 拙者の計画には、何の抜かりもない」
ドヤ顔の忍。
「それと、バカ兄貴の方にも、前にドッキリ喰らわさせられた借りがあるから……その借りを返せると思ったら、むしろ楽しみでウズウズとしてきたわ」
「ん? それってポルターガイストの時のやつか? アレって確か……日本に帰って来た当日に、透士郎と共に仕返ししてなかったか? 太陽が泣きながらバラバラになったシーン、今でも瞼の裏に焼き付いているのだが?」
「それはそれ、これはこれよ」
「そうか。それなら仕方ないな。企画ぶっ壊さない程度になら好きにしていいが……程々にな」
「りょーかい」
月夜の承諾を終え、忍が改めて話を纏める。
「さて、そんな訳で。企画実行は、全員の予定が合う――三月九日。この日に、全てを終わらせよう……。もちろん、締め括りは――
ハッピーエンドだ」
「おぉーっ!」と、この場にいるメンバー、宇宙、透士郎、月夜の声が揃った。
そして……時は進む。
三月九日――
どんな物語にも……終わりはあるのだ。
「何で集合場所がここなの?」
先日渡された手紙に書かれていた日時――そして、集合場所ピッタリに到着した愛梨は、その場所で待ち構えていた忍へ出会い頭に疑問を投げ掛けた。
その集合場所とは――廃工場だった。
かつて……元ヒーロー全員が出動し、暴走族と戦った――思い出の場所。
忍が疑問に答える。
「特に理由はない。人目に付かなさそうな場所だったから選んだ――それだけだ」
「人目に……? ああ……なるほどね……」
腑に落ちなかったが心を読んで、愛梨は納得したようだった。
この場所を選んだ理由を。
そんな訳で――パンっと忍は手を叩き、考えた企画を始める事にした。
「それでは早速始めようか、白金……拙者が考えた企画――――
『元ヒーロー達の恋愛エピソード反省カップルツアー』を!」
長ったらしく、ダサい企画名ではあるものの……。
始まった――
土門忍――彼が考えた、一世一代の大博打企画が……。
今――始まった。
一方……丁度その頃――
太陽はと言うと……。
「おい透士郎……いきなり『行きたい所がある』なんて言うからついて来たが……その場所が何でここなんだよ! 嫌がらせか?」
「んにゃ? ちゃんと理由はあるぞ。桜が見たかった、のと……それと……」
透士郎が、目の前でストレッチを始める。
「最近……運動不足でなぁ……。ちょっと、暴れられる場所を探してたんだよ……ここなら――――思いっ切り暴れられるからなぁ……!」
「はぁ?」
「お前もここ最近……色々とストレス溜まってんだろ? 発散したくねぇか?」
「発散? どうやって……?」
「運動で――だよ」
「あん? このいっぱいの桜の木使って、懸垂でもしようってのか?」
「違う違う……オレ達にとっての運動っていやぁ、やっぱコレだろう?」
そう言って、透士郎は上着と下ジャージを脱ぎ捨てた。
あらわになる戦闘服。
「お前……それ……」
「ほれ、太陽、お前の着替えだ」
「え!? 何でお前が、オレの戦闘服を持ってんだよ!?」
「朝一で月夜に届けて貰ったんだ」
「月夜が!?」
「ああ……そんな訳で、さっさと着替えろ」
「ここで着替えろってか!?」
「大丈夫。まだ、ここにはオレ一人しかいねぇよ。だから安心して着替えろ……」
「はぁ……つー事はアレか? 戦闘服《コレ》に着替えるって事は、お前の言う運動ってのは……ひょっとして……」
「ご名答!! 久々にやろうぜ――――
模擬戦闘!!」
こっちはこっちで……面白そうな事が始まっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる