ヒーロー達の青春エピローグ

蜂峰 文助

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エピソードFINAL『白金愛梨と万屋太陽』

【第96話】白金愛梨と万屋太陽④

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 通話ボタンを押すと声が聞こえて来た。
 通話相手の犬飼市一ではない……女性の声が。

『良いんですよ……これで……』

 声の主は――――

「愛……」
「「「しぃーーーーっ!!」」」

 声を上げようとした太陽の口を全力で塞ぐ、忍、宇宙、透士郎の三名。
 コクコクと、(分かった)と頷く太陽。

 そう……その声の主は、愛梨だった。
 愛梨は続ける。

『太陽は……私と離れても、幸せになれますから……。私と一緒にいたら……彼は不幸になっちゃいますもん……』
『何故そう思うのぉ?』

 今度は違う女性の声が聞こえて来た。又旅だろう。

『未来の事なんてぇ、誰にも分からないじゃなぁい』
『……分かるんですよ』
『その理由……貴重な【読心能力】のサンプルの一つとしてぇ、もの凄く興味深いわぁ。教えてくれるぅ?』
『……猫田さんは……歴代【読心能力】者の末路を、当然ご存知ですよね……?』
『もちろぉん』
『だからです』
『はぁ?』
『私が変われない……という事は……歴史が証明しているんです……』
『え? ひょっとしてぇ……それが理由ぅ?』
『いえ……これは理由の一つです……他にも幾つか……』
『へぇー……聞きたい聞きたいぃ』
『…………あまり、言いたくないです……』

 するとここで、通話相手本人である市一が声を発した。

『白金愛梨、これも【読心能力】に関する重要なデータだ……。研究に協力すると約束してくれたよなぁ? だったら話せ……』

 否――これは全く……研究に関係がない。ただの雑談だ。
 研究という名目にかこつけて、情報を引き出そうとしているだけだ。
 誰の為に?
 決まっている――

 愛梨と太陽――――二人の為に、だ。

 愛梨は渋々答える……。

『私が……駄目な人間だから……です』
『駄目な人間? 愛梨ちゃんがぁ?』
『はい……私は……ズルをしてきました……。太陽の心を読んで……彼に嫌われないように……呆れられないように……見捨てられないように……彼の心に沿った私を演じて来ました……。だけど……そんな自分が嫌で……何度も変わりたい……そんなズル賢い自分を変えたいと……努力してきました……。けれど結局……私は最後まで【読心】に頼り……挙げ句……プレゼントを……選ぶ事さえ、出来なかった……』
『ズル賢い……ねぇ……』
『【読心能力】者という仮面を外した私は……ただのワガママで強欲で嘘吐きな……駄目な女なんですよ……。私は……こんな自分を隠したくて……太陽くんや……他の皆にも……嘘をついて生きて来たんです……そんな自分が嫌で嫌で仕方なくて……こんな私が……良い奴じゃない私が……太陽くんを幸せになんて出来る訳がない、から……』
『でもぉ? あなた結構、太陽くんをからかって遊んでたわよねぇ? アレはどうなのぉ?』
『アレは……太陽、楽しんでいたので……ちゃんと、一線は越えないように……慎重に線引きはしてたつもりです……』
『ふぅーん……太陽くんって事はぁ、あなたも結構楽しんでたんだぁー』
『…………はい……楽しかったです……』
『あら、素直ねぇ。愛梨ちゃん可愛いー』
『本当に……楽しかったです……彼と一緒にいれた時間は、充実していました……。特に……付き合ってからの毎日は……幸せで死ぬかと思いましたもん……』
『…………』
『だけど……私が幸せだと感じれば感じる程……嘘をついてる事の後ろめたさや、罪悪感に耐え切れなくなって……』
『な、る、ほ、どぉー。そのストレスがぁ、プレゼント選びで爆発しちゃったって訳ねぇ』
『……はい……。きっと……遅かれ早かれ……きっと、こうなってたんだと思います……。だから……別れるなら早い方が良いと思って……。こうなる運命だったんです……だから、歴史が証明しているんです……。だって、【読心能力】者は……幸せに……なれないんですから……』



 ここで――――太陽の我慢が限界を超えた。

「犬飼さん!! オレに――愛梨と話をさせてくれ!!」

「おいっ! バカ太陽」
「ちょっ! あんたねぇ!」

 そんな太陽を止めようと、透士郎と宇宙が動くが、「待て! 二人共!」と、忍が二人を制止した。

「コレは――太陽が、文句を言うべきだ」

 と。

 すると……電話先から、声ではない物音が聞こえ始めた。
 ウイーン……ガチャンッ! という物音が。

『え? 犬飼さん……? どうしたんですか? 急に鍵が――――閉まりましたけど……?』
『……ああ、お前が逃げないようにな。退路を断たせてもらった』
『え? 退路……?』
『スピーカーにする、言いたい事を言え――――


 万屋太陽』

 『え?』と驚きの声色を愛梨が出したのと同時――太陽が声を上げた。

「ふざけんじゃねぇぞ愛梨!! 何が、歴史が証明している、だ!! 何が、【読心能力】者は幸せになれない、だ!! 何が――――オレを幸せに出来ない、だ!! お前がオレに嘘をついてた? 馬鹿野郎が!! それも含めてお前だろうが!! オレはそんなお前のそばにいても……幸せだったんだよ!!」
『……た、太陽……何で……?』
「何でもへったくれもあるか!! そもそも! ズル賢い本当の自分? そんなもん! 遠くの昔に知ってるわ!! 何隠せた気になってんだよ!! オレはお前がズル賢くて! 性格が悪い事なんて!! !! 勘違いするな! その上で――オレはお前を――――白金愛梨を選んだんだ!! あまりオレを――見くびるんじゃねぇぞ!!」
『っ!! 太……陽……』
「だが――――お前が! 心底、そんな自分自身に嫌気がさしているって事は伝わって来た!! そう思うのは! お前の自由だからなぁ!!」
『でも……でもぉ……私は……変わりたくても……変われないんだよぉ…………私は、人を信じられない……人は裏切るものだと……知っちゃってるから……』
「うるせぇーーーーっ!!」
『っ!』
「そういう理屈は良いんだよ!! 過去よりも! 今!! 今を考えろ!! 過去の自分が駄目でも――今の自分を信じろよ!! 変わりたいと本当に思ってるのなら――諦めんじゃねぇよ!!」

 太陽は続ける。
 昂った感情を――抑え切れない。

「それによぉ! もう――そこにいる犬飼さんや、猫田さん! こっちにいる忍や星空、透士郎も、とっくに気付いているだろう事を言わせてもらうけど!! 愛梨! お前は――自分の事を嫌な奴だと思ってやがるな!?」
『……う、うん……』
「このっ……!! あんぽんたんが!!」
『…………っ!!』
「良いか!? よーく聞けよ愛梨!! お前は……余計なお世話だが、『オレの事を思って』別れようって言ったんだよな!? オレが幸せになれないからって――余計なお世話してくれたんだよな!?」
『……だ……だって……』
「あのなぁ――――そんだけ自分を犠牲にして! 他人の事を慮れるような奴が! 嫌な奴な訳ねぇだろうがぁ!!」
『…………っ!!』

「良い奴に――決まってんだろ!!」

 太陽のその言葉を耳にし。
 忍や宇宙、透士郎が笑い合い。
 遠くにいる市一と又旅も、笑い合った。

 愛梨の目からは……涙が、零れ落ちている。

 太陽は言う。

「愛梨……オレは決めたぜ……! 今回オレは……お前に告白しない!! オレの方からは絶対に――寄りを戻さない!! オレはお前を――――甘やかさない!!」
『…………っ!』
「お前が納得したら……納得出来た時に――――お前の方から再度告白しに来い!!
 オレはその時を――いつまででも、待っててやるから!!」
『……っ!!』
「ほぉーら……お前が早く寄りを戻しに来ねぇと、お前の大好きなオレが幸せになれねぇぞー。分かったか? 愛梨――これが嫌な奴だ! オレは、お前の為になら嫌な奴にも平気でなってやる!! 不幸にだって、何度でもなってやる!!」
『……何で……そこ、まで……』
「決まってんだろ!! オレの幸せには――――お前が必要だからだよ!!」
『…………っ!』
「だから――――お前が変わりたいと思うのなら……そうでなきゃ、オレと一緒に居られないと思うのなら!! つべこべ言わずに! 余計な事考えずに! 変われ!!」
『……そんな……できるなら……してるよ……』
「出来なくても、やれ!!」
『………………太陽はまだ……こんな私を……信じて……くれるの……?』
「はぁ? 当たり前だろ? ただし、出来るだけ早く頼むぞー。二十五迄にはオレ、結婚したいからさ」

 太陽は……そう言って、笑った。
 先程までの勢いが嘘のように……優しく笑い、そう……声を掛けた。

「そんで子供も欲しいなぁー。出来れば女の子。お前に似た、可愛い女の子が良い。性格はオレに似た方が良いなぁー、お前は見るからに面倒くさそうな性格してるからなぁー」
『……太陽…………』
「何だ? 愛梨。名前ならもう決めてる……」
『私も変わりたい……変わって……ずっと……


 あなたの傍に……いたいよぉ……』


 その言葉に……太陽が答える。

「その気持ちがあれば大丈夫だよ……愛梨……。何も心配なんていらない。お前は必ず変われる……。必ずな……」
『……うん……ありがどう……』
「ずっと待ってるからな」
『うん……』
「じゃあ……
『うん……』

 通話が途切れた。
 スマートフォンを仕舞いながら、太陽がニカッと笑う。

「もう……大丈夫そうだ。後は、愛梨が乗り越えるのを待つだけだ」

 宇宙と透士郎が、やれやれ……と言った風に苦笑する。

「貴方が声を上げた時にはヒヤッとしたけれど……まぁ、あなた達らしい話の纏まり方ではあったわね」
「それな。でもそこは、やっぱ流石太陽って感じだったぞ。褒めて遣わす」

 「偉そうに……」と、太陽は笑う。

「さて、話に一段落着いたら、腹が減ってきたなぁ。忍、何か食うもんあるか?」
「食うもん……? ……ふむ……今は切らしているな。太陽、何か買って来てはくれぬか?」
「えぇーっ! 何でオレがー!?」
「つべこべ言わずに行って来い」
「あっ!? ちょっ、おいっ!」

 忍が【瞬間移動】で、太陽をコンビニ付近まで飛ばした。

 この場には忍と宇宙、そして透士郎の三人が取り残されている。

「別に万屋に行かさなくても、私が行ったのに……」
「…………」
「……忍、くん……?」

 忍が口を開く。

「宇宙、透士郎……お前達は、さっきの話を聞いて、どう思った?」
「どうって……あの二人らしい、なと」
「オレもだ」
「そうか……」
「何? どうかしたの?」
「気になる事でもあるのか? 忍」

 「拙者は……」と、忍は自分の見解を述べる。

「このままでは、ダメだと思う」

 透士郎が「理由、聞いても良いか?」と反応。

からだ……。拙者の考えだと、解決までに大幅な時間が掛かるか……早く解決出来ても、また同じ事が起こる――だけの気がするんだが……どうだ?」
「……言われてみれば……そうね……時間があれば、解決しそうな問題ではあるけれど……」
「そうなると……学校はどうするんだ?」
「あ……そっか……」

 その忍の言葉に、ハッとさせられる宇宙。
 透士郎が答える。

「でも……太陽は、『ずっと待ってる』って言ってたんだから……それはもう……覚悟してるんじゃねぇか?」
「そうかもしれないが……拙者としては……太陽と白金には、仲良く、学校生活を送って欲しい……と、思うんだ」
「んな事言っても、本人達がそれで納得してるんだから。もう、オレらにはどうしようも……」

 「何か……考えがあるのね?」と、宇宙が察した。
 「…………ああ」頷く忍。

「考え……? どんな考えだよ?」
「確実に上手くいく保証はないが……試す価値はある、考えだ」
「だからそれは、どんな考えなのかって聞いてんだけど?」
「……『総力戦』だ」
「へ?」

 忍は言い放つ。

「拙者達――――――。そんな、考えだよ」
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