101 / 106
エピソードFINAL『白金愛梨と万屋太陽』
【第100話】白金愛梨と万屋太陽⑧
しおりを挟む【瞬間移動】で飛ばされた場所は、河川敷だった。
この河川敷で結ばれた二人――
静と千草が、仲良くフュージョンポーズを取りながら、愛梨を出迎えた。
「お! やっとお出ましだな! 愛梨さん!」
「ようよう! 遅かったじゃねぇか! 待ちくたびれたぜ!!」
これ迄とは違う、二人の異様にテンションの高い歓迎っぷりに、愛梨は少し唖然としてしまう。
お構い無しに、千草が攻め立ててくる。
「どうしたどうしたぁ? ビビってんのかぁ? 記念すべき100話目を任された、選ばれしオイラ達のオーラによぉ!」
「……100話目……? 何を……言ってるの……?」
メタ的な話はさて置き。
静が言う。
「さて、愛梨さん。あなたはこれ迄、姫と大地、宇宙先輩との対談を経て、ここへ来ている筈だ。となると既に、この『恋愛ツアー』のコンセプトは理解出来ているよな?」
「ええ、もちろん……」
「流石だ愛梨さん。素晴らしい観察力と推理力だ。見習わなければならないな!」
「いえ、ツアー始まる前に忍くんの心読んだだけだから……別に観察力や推理力は関係ないかなぁー……?」
「そういう所がダメなんじゃないか? ネタバレじゃないか」
「はい……すみませんでした……」
「とまぁ! こんな感じで、愛梨さんにダメ出しをしていく――というのが、この『恋愛ツアー』のコンセプトな訳なのだが……」
「その認識は、ちょっとズレてるような気がするけど……」
「残念ながら、スポーツやエロにかまけていた我々には、あなた程の人にダメ出しをして、アドバイスをする程の学がないのだ! 残念ながらな!」
「正直者だなぁ……」
「そこでオイラ達は考えた」千草が続けた。
「尺をどうしよう? とな。せっかく、記念すべき100話目を任されたのにも関わらず、千草と静が馬鹿なので千文字ちょっとで終わりまーすでは、ただオイラ達が恥を晒して終わるだけになってしまう! それは悔しいし、このステージが何の意味もなくなってしまう! 絶対ダメ! NG!!」
「またメタ的な事言ってる……」
「なので、馬鹿なオイラ達が考えに考えて考え抜いた結果――――白金に、『とあるゲーム』をして貰いたいなと思った訳だ」
「……ゲーム……なるほどね……」
愛梨はすかさず二人の心を読み、ゲームのルールを把握した。
代わって、静がルール説明を行う。
「既に愛梨さんには説明不要かもしれないが! 読者の為に、説明しよう! ルールは簡単だ――
太陽さんの好きな所を百個言うこと!! それだけ!」
「太陽の……好きな所を、百個……?」
「そう! 百個! 制限時間内に百個言えないと、白金さんの負け! どうだ!?」
「百個……」
千草が煽る。
「んー? どうしたんだぁー? 白金ぇー。怖気付いたのかぁー?」
「ううん……むしろ――
たった百個で良いの?」
「「えっ!?」」
その言葉に千草と静が少し面食らうが、「流石だな。愛梨さん……」と静が不敵な笑みを浮かべた。
「やれるものなら――やってみなよ」
「……望むところ!」
ニヤリと笑う静と千草。
静がゲーム開始の合図を出す。
「それでは――――ゲーム……」
愛梨は目を閉じ……太陽の姿を思い浮かべる……。
「スタートッ!!」
そして目を見開いた。
「優しい所……」
「カッコイイ所……」
「素直な所……」
「笑顔が素敵な所……」
「声がカッコイイ所……」
「裏表のない所……」
「困ってる人に……すぐ手を差し伸べちゃう所……」
「強い所……」
「でも、弱い所……」
「頭の悪い所……」
「だけど、たまに鋭い所……」
「からかいがいが、ある所……」
「Hな事を恥じる事なく考えている所……」
「恥知らずな所……」
「彼女に遠慮しない所……」
「恥ずかしがり屋な所……」
「照れたら可愛い所……」
「からかった後の反応が面白い所……」
「面白い所……」
「筋肉質な所……」
「無鉄砲な所……」
「他人の為となると、無茶し過ぎで心配な所……」
「無事に帰って来てくれる所……」
「頼り甲斐がある所……」
「変わった人だなぁ……って所……」
「人間らしい所……」
と、ここまで、スラスラと羅列していく愛梨。
唖然としてしまう静と千草。
「凄いな……私でさえ、千草くんの好きな所を……十個くらいしか言えないのに」
「それは幾ら何でも少な過ぎない!?」
「自分の愛を疑ってしまうレベルだよ……この人――――
どれだけ、太陽さんの事が好きなんだ……!?」
愛梨は止まらない。
次々に、太陽の好きな所を並べていく……。
「バレバレの嘘を……つく所……」
「その嘘が、しょうもない所……」
「でもたまに、とんでもない嘘をついてる所……」
「嘘を隠し切れない所……」
「そういう所も、可愛いと思っちゃう所……」
「嫌な嘘はつかない所……」
「そんな眩しい所……」
「一緒に居て……元気に……なれる所……」
七十をこえた所で、愛梨に変化が訪れる。
彼女の目から……涙がこぼれ落ちてたのだ……。
(ああ……改めて、こうやって……彼の好きな所を口にすると……思い知らされる……私が……どれだけ彼の事を好きだったのか……大好きなのか……離れたくないのか……別れたくないのか……一緒にいたいのかを…………思い知らされる!)
涙を流しながら、次々に太陽の好きな所を並べて行く、愛梨の姿を見て……静と千草は、ギューッと……胸を締め付けられる思いになった。
「愛梨さん……本当に……太陽さんの事が、好きだったんだな……」
「……分かりきってたっしょ? そんな事……だからこそ、白金は……この道を選んだんだ……」
「でも……めちゃくちゃ後悔してるね」
「ああ……めちゃくちゃ、ね……」
静と千草……二人が会話している内に、その数は九十をこえた。
そしてすぐに、九十五をこえた。
九十六……。
九十七……。
九十八……。
九十九―――――
「こんな私を……信じて――――待っていて、くれる所……!」
百――
百個もの、好きな所を言い切った愛梨に、拍手をする静と千草。
静が思いっ切り……愛梨を抱き締めた。
「愛梨さんが……太陽さんを好きって気持ち。充分過ぎるほど……伝わったよ……。辛い事させて……ごめんなさい……」
「ううん……私の方こそありがとう……改めて……大切な気持ちに、気付く事ができた……本当に……ありがとう……」
「まったくだぜー」と、千草。
「なぁ? 白金……オイラさ、あの時、気付いたんだー」
「あの時……? 暴走族の……」
「うん……静と大喧嘩して……静を疑って……裏切れたと思ってたのに……実はそうじゃなかった」
「…………」
「人間ってさ……弱い生き物なんだよねー。だから、信頼している相手であろうと……疑っちゃうんだよ。ねぇ……白金……お前が求めているものって、案外――大した事がないものなのかもしれないよ? 少なくとも……あの時のオイラからすれば……信頼出来ないっていうのも……メリットになると思うからさ」
「信頼出来ないのも……メリット……」
「まぁ、あの時のオイラからすれば――の、話だけれどね。今は違うよーん」
すると、「千草くーん!!」と、静が千草へ激しく抱き着いた。
目をキラキラと輝かせている。
「凄いよ千草くん! 今のすっごくアドバイスっぽかった!!」
「お? やっぱり!? いやぁー、オイラってやれば出来る子なんだよねぇー!!」
「うん! 凄い凄いっ!!」
愛梨そっちのけでじゃれ付き合う二人。
そんな静と千草を見つめながら……呟いた。
「信頼なんて……大したものじゃない……か……」
「終わったか?」
「うわぁっ!」
またしても突然、忍が現れた。
「だから忍くん……急に現れないで……って! 何でそんなにボロボロなの!?」
「……階段で転んだ……」
「は?」
「階段で転んだんだ。はい、この話は終わり。時間だ、次のステージへと行くぞ」
「え? でもその傷……手当しないと」
「はい、レッツゴー」
「ちょっ……!」
ボロボロの姿で、機嫌が悪そうな忍が、ヤケクソ気味に。強制的に愛梨を【瞬間移動】で飛ばした。
今回残ったのは、忍と静と千草の三名。
千草が笑う。
「ぷはぁーっ!! 忍、お前めちゃくちゃやられてんじゃん!!」
「むぅ……行けば分かる。太陽は強い」
ぷいっと、不貞腐れたように顔を逸らす忍。
二人がかりで太陽に負けた事が、相当ショックだったようだ。
「人の事を笑うのは良いが……次は――お前達だぞ?」
「げっ……! お、オイラは辞退しよっかなぁー……」
「太陽さんが相手かぁ! 面白い!! 血が騒ぐなぁ……!」
逃げ腰の千草とは対象的に、静はやる気満々だった。
早く闘いたくてウズウズしているのか、目をキラキラと輝かせ、ピョンピョン跳ね回っている。
「いやいや……あの……静さん? あなた、女子野球で甲子園目指しているから……能力を使わない筈じゃなかったのかな……? やめといた方が良いんじゃないかなぁー……?」
「何を言っているんだ千草くん! 模擬戦闘では、能力を使わねば勝てんだろうが!! それとこれとは話が別なんだ! やれと言われればやる! 戦えと言われたら戦う!! それがヒーローと呼ばれる者の生き方だろう!?」
「オイラ達もうヒーローじゃないし……それに……よしんば能力使っても太陽には……」
「つべこべ言わずに行動だ!! 土門くん! 私達を太陽さんの元まで飛ばしてくれっ!!」
「了解した」
「ちょっ! 静! マジでやめとこうって! 太陽《あいつ》マジでヤバイんだって!!」
「そんな事は知っている!! だからこそ勝負だ!! 太陽さん!!」
「い……いやだぁぁぁぁあ――――」
【瞬間移動】――――完了。
一人残された忍は……河川敷にゴロンと寝転がった。
太陽と一戦交わった後は、流石にキツイのだろう……。
「いてて……あのバカ……本気で殴りやがって…………ま、元気そうで良かったが……。…………さぁて……『恋愛ツアー』も、後2エピソードか……もうすぐ、締め括りだな……。果たして白金は……どんな答えを出すのか……見物だな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる