【書籍化&完結】おそらく、僕だけ違うゲームをしている。【2月中頃発売】

鵩 ジェフロイ

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番外編

小話:1周年記念イベント -告知-

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本日2話投稿分の1話目です。

────────────────



 現実でやるべきことを終えていつものようにログインしたある日。

 視界の端にゲーム内メール受信を告げるアイコンが点滅して主張していた。

「ん?」

 送り主を確認すると運営のようだった。

 ……たぶん、この先ずっと運営からメールが届くたびに「どの件だ……?」と冷や汗をかくんだろうな、と少し遠くを見ながらメールを開く。


 内容は────。


「ふぅむ、これは……みんなと相談しないとな」

 僕だけの手には負えないと、即座に頼れるパートナーと盟友たちに相談することに決めた。


 *


 闇の世界、淡い光に碧と錆が混ざる月の実像を唯一見ることができる東屋に僕とバラム、シルヴァとノーナが集合している。

 運営から届いたメールのことで、どうしていくか皆と相談するために集まってもらった。

 まずは発端となる『イベント』の内容を皆に説明する。

「僕たち異人がこの世界にくるようになって1周年を記念して大きなイベントが開催されるそうだ」
「1周年?」

 バラムが片眉をあげて怪訝そうな顔をする。

「……ああ。お前らの世界で1年ってことか」

 しかし、すぐに納得したようにうなずいた。
 うん? なにかおかしな点があっただろうか……。

「……あっ。こちらの時間ではちょうど4年ということになる」
『クククッ、どちらにしても我らにとってはさほど変わらないであるがなぁ』

 そういってシルヴァがニヤリと笑う。
 まぁ、シルヴァやノーナほど生きていたらそうだろう。

 この1周年とはバラムのいうように現実世界での話で、アルスト世界では4倍の時間加速で4年だ。

 そう言われると、かなりの時間を過ごした感覚になるな。

 ちなみに、特殊時間加速期間はなんだかんださまざまなイベントで調整されてぴったり4倍で合うようになっている。
 相変わらず変態的な運営手腕だ。


 不意に、ずっと僕の腰にまわっていた大きな手が持ちあがって頬を撫でる。その動きに促されるように手の主を見あげれば、赤みのある錆色の瞳が穏やかに僕を映していた。

「お前と出会って4年、ってことか……」
「そうだな……」

 サービス開始初日に出会ったから、そうなる。

 僕はその手に頭を預けるように傾け、目を閉じて頬のぬくもりを感じる。

「それで、我が君からわたくしどもへの相談ごととは?」

 バラムとふたりの世界にいきかけたのをノーナが本題に引きもどしてくれた。……頭上から舌打ちが聞こえるが……まぁ、またあとでゆっくりすればいい。

「ああ。この1周年記念イベントのタイトルが『神に捧げる会』というんだが……」

 1周年記念イベントにはそれに内包されるさまざまなキャンペーンやイベントがあるらしいのだが、そのなかでも目玉イベントとされるものがふたつある。……タイトルで少し察せられるだろうか?


 ひとつ目は『神に捧げる武闘会』。

 異空間にある闘技場で大規模な個人トーナメントバトルが行われる。現時点のプレイヤーナンバー1の強者が決定することになるだろう。

 ……今の僕ならば技能を制限されなければナンバー1になれてしまいそうだが、幸いこのイベントは自由参加制なので不参加の予定だ。

 不参加のプレイヤーも観戦席で観戦ができるようなので、せっかくなので観戦はしようかなと思う。


 ふたつ目は『神に捧げる舞踏会』。

 異空間に作られたダンスホールで好きに着飾ってダンスや芸を好きに披露できるという、システム的な競争要素は“ほぼ”ない楽しむだけのイベントだ。
 こちらも自由参加制だが、せっかくだしこちらには参加してみようかと思っている。


 …………まぁ、いいたいことはわかる。

 ダジャレか? と。

 僕もメールを読んだときにそうツッコまされてしまった。

 これ以上触れるのは命名者を喜ばせるだけな気がするので、さておき。

「相談というのは、このどちらのイベント名にもついている『神に捧げる』とあるとおり、捧げ先が必要なイベントとなっていて、月神とその“使者”にも出演してほしいと打診がきた」
「なるほど、そういうことでございますか」
「……使者だと?」

 ノーナはこれだけでいろいろと事情を察したのか深く一度うなずき、バラムも僕が引っかかった部分と同じところに引っかかりを覚えているようだった。

『クククッ、となれば当然かの光神の陣営も捧げ先筆頭としてでてくるのであろう?』

 シルヴァはいつものように愉快そうに笑う。

「ああ。現在神として認識されて信仰の力があるのは光神と闇の世界を統べる月神だけとのことだ。しかしまぁ、月神はこのとおりだし、普通にこの姿そのままで現れるだけでいいとは思うんだが……」

 おそらく光神もでてくるとしても太陽光だとか、とにかく強い光としてしかでてこないんじゃないかと考えている。
 メタ的にいえば、まだまだ長くプレイしてもらうためにもったいつけるのもサービスの一環だ。

「その“使者”……? というのがよくわからなくてな。僕もなる資格があるらしいんだが……」

 その抽象的な姿でしかでてこない神の意志を代表して伝えたり親しみ深い形で姿を見せるスポークスマンみたいな役割が『使者』なのではないかと予想してはいるのだが。

 ……まぁ、なぜそんな大それた代表になる資格をいちプレイヤーである僕が有しているのかといえば……【月の管理者】あたりの称号の影響だろうか……。

「我が君も予想されているとは存じますが『使者』とはそのまま神の使者のことですわ。光神陣営でいえばヘリオネたち天使がそれにあたります」
「やはりそうか」

 だいたい予想どおりだった。

「ふむ……これはいろいろと仕込んで我が陣営の魅力を売りこんでいかねばなりませんね。まだまだ多くの信仰は光神が独占しております故」
『おおっ! 楽しくなってきたであるな!』

 ……この反応もまぁ、予想自体はしていた。

「おい、こいつを見世物にするつもりじゃねぇだろうな」

 眉間に深くシワを寄せたバラムが低く唸る。

「まさか。我が君の威は伝えつつも異人たちに効果的な幻想を見せるのですわ。それこそそれは我が君の力の一端ともいえるでしょう」
「……まぁ、そうだな」

 少し人聞きが悪いがなにも間違ってはいない。

「……じゃあ、どうすんだよ」
『我にいいアイディアがあるである!』

 鼻息を荒くしたシルヴァがノーナとバラムのあいだに割って入ってくる。

「ふむ、貴方は異人相手のダンジョン運営の経験もあるでしょうから、聞かせてもらいましょう」


 ということで、一応月神は姿だけだが出演するとして、その『使者』の演出会議が始まった。


 ……結構無茶苦茶な意見も飛びだしてきて、それを実現するためにどうにか新しい秘技を生みだしたりなどした。


 まぁ、久しぶりにみんなで揃ってワイワイと過ごせたのは楽しかったから、たまにはこんなイベントがあるのもいいのかもしれないな。



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