蒼い炎

海棠 楓

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見知らぬ土地で

第57話

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 早口でそう言うが早いか、静流は真司の髪を掴み、紫苑から引き剥がした。杖を持たない真司はその場に倒れこんだ。
「楽しかったでしょうね、真司。紫苑とのセックスは良かったでしょう……僕なんかより」
 真司は静流に見下ろされ、恐怖に震えた。
「答えたらどうなんですか」
 口調は丁寧なものの、起きあがれない真司を蹴りつける。
「最近の高校生は恩を仇で返すんですか」
 静流の狂ったような暴行は続く。
「しず……そいつ、様子ヘンだぞ」
 さっきから横でじっと見ていた紫苑が口を出す。我に返った静流が気づくと、真司はガタガタ震え、呼吸も乱れていた。


 俺はとんでもないばか――
 せっかく苦労して手に入れた宝物を、自らの手で壊してしまいました。


「紫苑……なんだってこんなことしたんだ」
 病院のロビー。真司は救急車で担ぎこまれた。紫苑は煙草に火をつけて、静流の方を見ずに言った。
「言っただろ、かわいーからつい」
「だっておまえは女に……」
「俺両刀なん、知らんかった?」
「知らないよ! ……じゃあ僕たち別にあんな……」
 一人取り乱す静流と対照的に、落ち着き払って紫苑が言った。
「そんなことより今は真司のことだろ」
 静流もその通り、と言った様子で、大きく息を吐いた。
「そうだった……一方的に真司だけ責め立てて……体の不自由な子相手になんて卑劣なことを」
 深く自分を責める静流の肩を紫苑が宥めるように軽く叩く。静流も応えるように紫苑に縋った。
「そんなに自分責めんな、しず……」
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