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見知らぬ土地で
第58話
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真司は大事にはいたらなかった。安らかな寝息を立てて眠っている。
「医者から聞いたんだけどよ、こいつ生まれつき心臓悪くて、感情高ぶったり興奮しすぎると発作起こすんだって」
紫苑が落ち込む静流に代わって、医者から容態を聞いてきた。
「真司?」
真司の目がゆっくりと開いた。そして真司は絶望する。また目がさめてしまった、どうして発作はあんなに苦しいのに死ねないのか、と。
静流が真司の手を取り、ベッドの脇に跪いた。
「許してください真司。あまりにも大人気無いことを……」
真司の要望で、紫苑は席を外した。
真司は、暴行を受けている時からずっと気になっていたことを尋ねた。
「静流さん……どうして紫苑さんのことは責めなかったんですか」
静流はばつが悪そうに顔をそむけた。
「い……今でも好きなんでしょ、紫苑さんのこと!」
思い余ってつい出てしまった言葉だったが、静流は冷静に答えた。
「真司。過去を胸にしまって生きることはいけないことなんでしょうか。それに……真司も同じでしょう?」
真司ははっと静流を見た。
「君は晃司くんから解放されていない……たぶん、この先もずっと」
ウソだ。俺は晃司に捨てられたんだ、未練なんか無い。晃司は女を作って俺を捨てた。今ごろかわいい彼女と何不自由無く幸せにやってるんだ、俺のためなんかじゃない、自分のために晃司は俺を捨てた。
――そう思いたかった。
たたみかけるようにやさしく、静流が続ける。
「人間には心の奥では自由に人を愛する権利がある、他人に迷惑をかけない限りそれを心に秘め想い続けるのは自由でしょう」
真司は涙を流していた。こんなにも自分の中に晃司がまだ息づいているなんて。ふっきれたものと思っていた。でもそうじゃなかった。真司の感覚全ては今も晃司のために機能している。それを自覚してしまった。
「一緒に生きよう、真司。僕らならうまくいく」
辛い決意、だがお互いそれしか道は無かった。
「医者から聞いたんだけどよ、こいつ生まれつき心臓悪くて、感情高ぶったり興奮しすぎると発作起こすんだって」
紫苑が落ち込む静流に代わって、医者から容態を聞いてきた。
「真司?」
真司の目がゆっくりと開いた。そして真司は絶望する。また目がさめてしまった、どうして発作はあんなに苦しいのに死ねないのか、と。
静流が真司の手を取り、ベッドの脇に跪いた。
「許してください真司。あまりにも大人気無いことを……」
真司の要望で、紫苑は席を外した。
真司は、暴行を受けている時からずっと気になっていたことを尋ねた。
「静流さん……どうして紫苑さんのことは責めなかったんですか」
静流はばつが悪そうに顔をそむけた。
「い……今でも好きなんでしょ、紫苑さんのこと!」
思い余ってつい出てしまった言葉だったが、静流は冷静に答えた。
「真司。過去を胸にしまって生きることはいけないことなんでしょうか。それに……真司も同じでしょう?」
真司ははっと静流を見た。
「君は晃司くんから解放されていない……たぶん、この先もずっと」
ウソだ。俺は晃司に捨てられたんだ、未練なんか無い。晃司は女を作って俺を捨てた。今ごろかわいい彼女と何不自由無く幸せにやってるんだ、俺のためなんかじゃない、自分のために晃司は俺を捨てた。
――そう思いたかった。
たたみかけるようにやさしく、静流が続ける。
「人間には心の奥では自由に人を愛する権利がある、他人に迷惑をかけない限りそれを心に秘め想い続けるのは自由でしょう」
真司は涙を流していた。こんなにも自分の中に晃司がまだ息づいているなんて。ふっきれたものと思っていた。でもそうじゃなかった。真司の感覚全ては今も晃司のために機能している。それを自覚してしまった。
「一緒に生きよう、真司。僕らならうまくいく」
辛い決意、だがお互いそれしか道は無かった。
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