蒼い炎

海棠 楓

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見知らぬ土地で

第64話

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「うひゃひゃひゃひゃ!!なあ聞いてる? なあってばコラハゲ!」
  そう言ってオーナー・司の肩をバンバン叩いているのは真司だ。ちなみにハゲてなどいない。
 未成年者、しかも全く酒に免疫のない真司にアルコールを飲ませたのは司だ。自業自得なのでこの仕打ちには耐えるしかないのだが、そうまでしてでも今日は真司を帰らせるわけには行かなかった。
「さて……と。そろそろお開きにするか。要、今日真司泊めてやれ」
 突然の大抜擢に、要は慌てふためく。
「なんでですかー!!飲ませたのオーナーでしょおっ!」
 必死に訴えるが、
「俺んちハニー待ってるしぃー」
「ぼっぼく家族と住んでるしっ」
 輝にまで裏切られた。
「一人モンで一人暮しってお前だけなワケよ。ヨロシク」

 結局眠りこけてしまった真司をおぶって、要は重い足取りで家路についた。いい気なものだ。
 だいたい静流に偶然拾われて、パパッとこの店に入れるなんて、ラッキーすぎる。
「そーだ! お前を静流さん家まで送ればいいんだよ」
 こりゃ名案、と浮かれる要の背中から声がした。
「ダメだよ……今日は。今日はあの部屋には帰れない……」

「なんだって、静流さんと紫苑が?!」
 要宅。やっとの思いで我が家に辿りついた要は、一息つく暇もなく真司の話に怒り狂う。真司は諦め顔で笑った。
「オーナーが取り持ったんですよ。きっと今日こんなに飲ませたのも僕を帰さないためで……」
「なんでお前、そん時止めなかったんだよ!」
「静流さんには幸せになって欲しい……僕の分まで。僕に静流さんの幸せを壊す権利はないよ。思えばこんな役立たずを拾ってくれただけでも……」
 俯き、ぼそぼそと語る真司に耐えきれなくなって要が怒鳴る。
「やめろ! お前はそうやって自虐することで自分を守って、正当化してんるだ。そういうヤツ見てるとイラつくんだよ」
 さほど慌てる様子もなく、力ない声で真司は答える。
「でも、こうでもしないと今までやって来れなかった……こうでもしないと自分を守れなかったんだよ」
 先ほどまで真司を妬ましく思っていた要だったが、今は可哀相で仕方ない。
 ……そして、許せない。
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