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成人の日に思う
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「今日は成人の日だよね。手塚くんの時はどんなだった? やっぱりスーツで行ったの?」
手塚が座っている膝の上に無理やり寝転んで強制的に膝枕をさせ、羽田は手塚の二の腕を揉んでいる。手塚が羽田の脚フェチなら、羽田は手塚の二の腕フェチらしい。
「僕は出てません」
「そうなの?」
「無駄な出費をさせたくなかったし、会いたい友人も特に……」
手塚の家庭は決して裕福とは言いがたく、四人きょうだいの長男である彼は高校卒業と同時に家を出て一人暮らしを始めた。そして今でも仕送りを続けている。だから彼自身、現在も節制の日々だ。
「そっかあ」
自分の時のことを思い出して、羽田は何も言えなくなった。一度きりしか着られない、仕事には着られないような豪奢なスーツをわざわざ誂えて臨んだ式に出た後、翌朝まで同窓生たちとスワッピングに興じていただなんて。
「羽田さんは、出席されましたよね」
「え? ああ、うん」
「その頃からカッコよかったんだろうな……」
「手塚くんはその頃、童貞だったの?」
「えっ?! な、何を急に」
羽田は当時のことを訊かれる前に、先に手塚の話題を振った。
「覚えてないですっ」
「たった二年前のことなのに?」
ニヤリとする羽田に手塚の反撃。
「そういう羽田さんはどうなんですか」
結局自分の話題になってしまったが、羽田はしれっと舌を出した。
「覚えてないなあ、手塚くんと違って随分昔のことだから」
問うてはみたものの、童貞ではなかったであろうことぐらい手塚にだってわかっていた。わかっていたものの事実を突きつけられるのは嫌だったから、こうして煙に巻いてくれて実の所ほっとした。
「大事なのはこれからだよ」
「羽田さんからきいてきたんでしょ」
手塚が少し呆れるように言って煙草を咥えると、羽田が僕も、と強請った。二人は一緒に暮らし始めてから同じ銘柄の煙草を吸うようになり、共有している。
手塚が羽田の分も一本取り出し、口に咥えさせる。そして自分の煙草に火を点けた後、羽田の煙草の先にくっつけた。しばらくすると羽田の煙草の先も赤い光が点った。
「手塚くん」
「はい」
「したくなっちゃった」
「今の会話の中の、どこにスイッチがあったんですかね」
もともと垂れた眉尻をさらに下げて、手塚は大きく煙を吐いた。
「スーツを着た初々しい童貞の手塚くんの上に跨がって食っちゃうシチュエーションを妄想してた」
「想像力豊かなことで」
「スーツ姿見たことないし、初々しくもないもんね」
「悪かったですね」
「手練れだって意味だよ」
「……」
口をきゅっと結んで赤くなる手塚が、羽田は可愛くて仕方がない。
「じゃあさ、スーツ着てしようよ、手塚くんが上司役で僕のこと無理やりするっていうシチュエーションはどう?」
「そういうの無理ですっ」
「そう? じゃ上司役の僕が襲い受けっていうシチュエーション……」
「それ、いつも通りじゃないですか」
ほんとだ、と朗らかに破顔する羽田の笑顔はやはり最強に美しく、手塚史上の『尊み記録』を日々やすやすと更新するのである。
「ね、手塚くんの好きなように抱いていいから」
「優しくしか抱きませんから」
「はぁい」
先ほどよりもほんの少しだけ甘さを帯びた笑みを浮かべて、羽田は手塚に馬乗りになった。
【おわり】
手塚が座っている膝の上に無理やり寝転んで強制的に膝枕をさせ、羽田は手塚の二の腕を揉んでいる。手塚が羽田の脚フェチなら、羽田は手塚の二の腕フェチらしい。
「僕は出てません」
「そうなの?」
「無駄な出費をさせたくなかったし、会いたい友人も特に……」
手塚の家庭は決して裕福とは言いがたく、四人きょうだいの長男である彼は高校卒業と同時に家を出て一人暮らしを始めた。そして今でも仕送りを続けている。だから彼自身、現在も節制の日々だ。
「そっかあ」
自分の時のことを思い出して、羽田は何も言えなくなった。一度きりしか着られない、仕事には着られないような豪奢なスーツをわざわざ誂えて臨んだ式に出た後、翌朝まで同窓生たちとスワッピングに興じていただなんて。
「羽田さんは、出席されましたよね」
「え? ああ、うん」
「その頃からカッコよかったんだろうな……」
「手塚くんはその頃、童貞だったの?」
「えっ?! な、何を急に」
羽田は当時のことを訊かれる前に、先に手塚の話題を振った。
「覚えてないですっ」
「たった二年前のことなのに?」
ニヤリとする羽田に手塚の反撃。
「そういう羽田さんはどうなんですか」
結局自分の話題になってしまったが、羽田はしれっと舌を出した。
「覚えてないなあ、手塚くんと違って随分昔のことだから」
問うてはみたものの、童貞ではなかったであろうことぐらい手塚にだってわかっていた。わかっていたものの事実を突きつけられるのは嫌だったから、こうして煙に巻いてくれて実の所ほっとした。
「大事なのはこれからだよ」
「羽田さんからきいてきたんでしょ」
手塚が少し呆れるように言って煙草を咥えると、羽田が僕も、と強請った。二人は一緒に暮らし始めてから同じ銘柄の煙草を吸うようになり、共有している。
手塚が羽田の分も一本取り出し、口に咥えさせる。そして自分の煙草に火を点けた後、羽田の煙草の先にくっつけた。しばらくすると羽田の煙草の先も赤い光が点った。
「手塚くん」
「はい」
「したくなっちゃった」
「今の会話の中の、どこにスイッチがあったんですかね」
もともと垂れた眉尻をさらに下げて、手塚は大きく煙を吐いた。
「スーツを着た初々しい童貞の手塚くんの上に跨がって食っちゃうシチュエーションを妄想してた」
「想像力豊かなことで」
「スーツ姿見たことないし、初々しくもないもんね」
「悪かったですね」
「手練れだって意味だよ」
「……」
口をきゅっと結んで赤くなる手塚が、羽田は可愛くて仕方がない。
「じゃあさ、スーツ着てしようよ、手塚くんが上司役で僕のこと無理やりするっていうシチュエーションはどう?」
「そういうの無理ですっ」
「そう? じゃ上司役の僕が襲い受けっていうシチュエーション……」
「それ、いつも通りじゃないですか」
ほんとだ、と朗らかに破顔する羽田の笑顔はやはり最強に美しく、手塚史上の『尊み記録』を日々やすやすと更新するのである。
「ね、手塚くんの好きなように抱いていいから」
「優しくしか抱きませんから」
「はぁい」
先ほどよりもほんの少しだけ甘さを帯びた笑みを浮かべて、羽田は手塚に馬乗りになった。
【おわり】
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