撮り残した幸せ

海棠 楓

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再会

3

「せっかく会えたのにため息ですか?」
 不服そうに口をとがらす様子はあどこなさが残っており、やはり半年前のままである。
「それに、さっき手をつないでたの、誰なんですか?」
 とがった口をさらに突き出してくる。
「つないでたんじゃないよ、ぶつかって尻餅ついたのを起こしてあげてただけ」
 歩きながらそんな話をしているうちに、車を停めている場所に着いた。史郎が思い描いていたものとは全く異なる再会の形となってしまったな、と車に乗り込みながら反省した。
「久しぶりだなあ、この車も」
 ジュンが助手席に座って、シートベルトを締めようとする直前、史郎が身を乗り出してジュンにしがみついた。
「おかえり」
 もっともっとたくさん伝えたいことはあるけれど、いろいろなことをその四文字に込めたという表れか。その声はひどくかすれていて、何かを押し殺すような切羽詰まったものに聞こえた。とっさのことに戸惑っていたジュンの表情が、みるみる蕩けてゆく。
「ただいま、史郎さん」
 抱き返す腕に力が隠った。

 車の中ではジュンのマシンガントークが炸裂、さすがの史郎も辟易するほどである。あんなに毎日近況報告のメッセージをやりとりしていたというのに、まだこんなにも話すことがあるのかと、驚きと呆れの心持ちでハンドルを握り続けた。
「でね、史郎さんのこと話したら、すっごくうらやましがってて」
「僕のこと? なんて話したの?」
「年上の恋人を日本に置いてきてて……」
「恋人ぉ?!」
 面食らった史郎は全身で動揺し、危うくハンドルを大きく切りかけた。
「軽々しく、そういう話、しちゃうんだ……」
「親しくなったクラスメイトと恋バナぐらいするでしょ?」
  それはそうだろうけれど、と史郎はいいかけてやめた。これもジェネレーションギャップなのか、時代の違いか。
「その人も、その……同性を?」 
「その子はどっちもOKな子でした」
 にこやかに話すジュンを尻目に、齢五十を過ぎてもまだまだ世の中には知らない世界があるものだ、と史郎は運転に気持ちを戻した。人生の先輩風ばかり吹かせている場合ではない、若者から教わることも多いものだなと実感しながら。
 
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