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かっこよ過ぎて辛い

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レンは侯爵家に来てから、精力的に勉強している。

剣はアーネスト様に、
マナーや立ち居振る舞いは執事のロイに、
そして文字や計算などは私が教えている。

貧民に生まれたせいで、何も学べなかったレンだけど、文字が書けない分、頭で仕事を覚えていたので記憶力はあるし、真面目な性格からコツコツと努力しているようで、その成果は素晴らしいものがある。

今は庭で、アーネスト様と剣の練習をしているところだ。

キンッ‼︎
金属音と共にレンの剣が弾き飛ばされた。

「だいぶ形がついてきたな」
アーネスト様が言うと、レンは
「まだまだです。もう一度お願いします!」
と言って剣を取りに行く。

私はレンの頬に傷がついているのを見つけた。
「待って!レン。怪我をしているわ。手当てしないと」

「これくらい、何ともありません。大丈夫ですから」

「で、でもっ……」

そんなやりとりを見て、アーネスト様が不機嫌に言った。
「マリアーヌ。レンばかり見ていないで、少しは格好良い俺を見ろよ?」

「ご、ごめんなさい。アーネスト様は強くてとても素敵ですわ……」
頬を赤らめた私は、小さくなって言った。恥ずかしい。そんなにレンを見てたかしら?

アーネスト様はため息をついて、
「あー。やめやめ。気分損ねたからレンはこの後自分で鍛錬しろ」
と剣を担いで屋敷へ戻ってしまった。

レンがこちらをジロリと見つめる。
「奥様。アーネスト様のご機嫌を損ねてもらっては困りますよ?俺はもっと強くなって、どんな困難からも奥様をお守りしなければならないのですから」

「ご、ごめん、レン。レンがかっこよ過ぎて、つい……」

両手の人差し指をもじもじと合わせていると、クスッとレンが笑った。

「嘘です。奥様にそんなに見つめられて、俺は嬉しいですよ」
にっこりレンが微笑む。

な、何なの、これ。
レンが素敵過ぎて辛い……。

「と、とにかく、その綺麗な顔に、傷が残ったら大変だわ。手当てしましょ」
顔を真っ赤にしながら言う私に、さらにレンは追い討ちをかけた。

「こんな傷、舐めれば治りますよ。……手当てしてくれるんなら、奥様が、舐めてくれますか?」

私はボンッと音が立つように顔から火を吹いた。
「レンの馬鹿!エッチ‼︎  嫌いっ」
顔を両手で隠して叫ぶ。

なんだか別人みたいになったレンに、私は翻弄されっぱなしだ。

クスクス笑いながら、レンは謝った。
「すみません、奥様。あんまり奥様が可愛らしくてつい。じゃあ、お言葉に甘えて手当てをお願いします」

きれいな笑みをたたえて私の前に座った。

私は睨むようにレンを見つめながら、震える手で何とか傷を消毒し、ガーゼを貼る事ができた。

ほんとにもう、レンは素敵過ぎるよ。かっこよ過ぎて辛い。


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