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素晴らしき人格者たち

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今は昼食の席にいる。

今までは使用人たちと食べていたのだが、ロイさんからテーブルマナーの合格をもらえてから旦那様や奥様、アーネスト様とともに食べるよう言われた。

俺は一介の使用人なのに何故だろうとは思うが、今までにもここではそんなことばかりなので、もう気にしないことにした。

旦那様が奥様を見て話しかけた。
「私の可愛いマリア。君はレンを追って来た女達を、完全に手中へ納めたとロイから報告を受けたがどうなのだ?」

奥様はニコリと笑って「ええ、まあ、そうですが」と手短に答えた。

俺は居たたまれなくて、ナイフとフォークをテーブルに置いた。
「旦那様、奥様、大変申し訳ありません。俺のせいで、侯爵家にご迷惑をおかけして……」

旦那様は
「好色なジジイが若い妻を娶ったが、若い妻が満足できず男娼を屋敷に連れ込んで囲っているという噂の事か?」と言って来た。

う……そうハッキリ言われると、返事し辛いが……。

俺が項垂れていると、奥様が切り出した。
「私はレンの事で、何を言われても平気ですけれど、スペンサーや侯爵家に悪評が立つのは申し訳ないですわ。レンは随分ここにも慣れましたし、そろそろ良い家を見つけて通いにしてもいいかと思っているのですが」

「そうだな。それがいいかも知れん。費用は私が出すから、良いところを見つけてやってくれ」
旦那様はそう言ってくれた。

「スペンサー。ありがとうございます。お気持ちだけはいただきますけれど、レンのことは私が致します。
お金の事なら、侯爵家から毎月頂いている個人用のお金を貯めていますから、御心配いりませんわ」
奥様にまた負担をかけてしまうのか……。本当に申し訳ない……。

俺はさらに小さくなっていると、アーネスト様が俺を見て言った。
「叔父さん、マリアーヌ。レンが恐縮してしまって可哀想ですよ。何、叔父さんの代で醜聞が起きようと、私が後を継げば、そんなものは蹴散らしてみせますよ。大体、叔父さんがマリアーヌを娶ると言った時から好色ジジイの噂はあったんですから、今更でしょう」

アーネスト様も本当に出来た方だ。
尊敬してしまう。
俺は憧れにも似た気持ちでアーネスト様を見た。

「それもそうだな。それにレンが出て行ったら、レンをいじめる機会が減ってつまらんしな」
旦那様……。相変わらずそこはブレないんですね……。

「本当に申し訳ありません。そのように言っていただけて……ありがとうございます」
俺が丸まってお礼を言っていると、
アーネスト様がニヤリと笑って奥様を見た。

「レンの過去の女性がたくさん押しかけて来ているのに、嫉妬するでもなく仲良くなって束ねてしまうとは。流石マリアーヌだね。本当に私の妻になって欲しかったよ。王の後宮に入ったら、立派な正妃にもなれそうだ」

「いやですわ、アーネスト様。買い被りすぎですわ」奥様が頬を染めて言った。アーネスト様は隙あらば奥様に言い寄っているな。

「アーネスト、愛しいマリアは私の妻だ。お前にはやらん」

相変わらずの会話で食事の時間が過ぎた。
本当に素敵な人たちだと思う。
この人たちに俺はどれだけ恩をかえせるのだろう……。


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