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さっきの続きをしようよ

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私はあれから、セディに手を引かれ、馬車乗り場まで向かった。

頭に血が上っていたとはいえ、随分大胆なことをしてしまって恥ずかしくてたまらない。


セディも無言で私の前を歩いているけれど、耳が赤く染まっていていたたまれない。

繋がれた手が熱くて、すっごくドキドキしちゃう。


馬車乗り場まで着くと、セディが手を添えて馬車に乗せてくれた。

いつもはその後一緒に乗り込んでくるはずなんだけど、セディはためらいがちに言った。

「今日は俺、馬で並走するから...... 」

「えっ」

私はあんなことをして、セディに引かれてしまったのかと青ざめた。

セディはそんな私の表情を見て察してくれたみたいだ。


「違うんだ。その......。今、ゆいとふたりきりになったら、屋敷まで我慢できそうにないから...... 」

「えっ」

今度は私は真っ赤になって声を発した。


セディはその後にこりと微笑んで、

「ちゃんとゆいのことは守るから安心して。それじゃあ、またあとで......」

「は、はい、またあとで......」

私は心臓が苦しかったけど、何とかセディに答えた。



◇◇◇


「ただいまです、ママさん...... 」

セディが馬車から手を添えて下ろしてくれたまま、私の手を離さなかったので、私は恥ずかしくてママさんの顔をまともに見られない。

「あら、早かったのね、ふたりとも......あらあら」

出迎えてくれたママさんは、私たちの繋がれた手を見てにやりと微笑んだ。

「今日は私がゆいちゃんをエスコートする必要はなさそうね?」

ママさんがセディに言うと、

「俺がゆいを部屋まで連れて行きます」

そう言って私の手を引いて歩き出した。



私の部屋までたどり着くも、セディは一向に私の手を離そうとしない。

「ゆい......一緒に部屋に入れてくれるか?」

私はこくんと頷いた。


そうしてやっと解放された手で、ドアノブをひねって扉を開く。

セディを上目遣いに見上げると、セディは無言で部屋に入った。


私は静かにドアを閉める。

セディはそれを見届けると、私に向かって真顔で言った。

「ドアを......完全に閉めたね。それは、さっきの続きをして良いってことだと受け取るよ?」


セディの瞳には、いつもとは違う熱がこもっている。

(ううっ......。セディが男性だ!紳士じゃなくて男性だあ~!トキメキが爆発しちゃいそう!)


私は恥ずかしさのあまり、両手で顔を隠して言った。

「わたしから、おねがいしたことです、から......いいにきまってマス...... 」

私が言い終わるか終わらないかのうちにセディに抱きしめられた。


「ゆい......!そんなに可愛いことばかり言ったら、俺はもう貴女を離せなくなってしまうよ......?」


私はセディの言葉を聞いて、それでいい、と思った。

これまで、もしも前の世界に帰れることになったら、迷いなくセディを選べるのか自信がなかった。

でも今は、この先もずっとセディと居たいと思う。


「わたしも......セディとずっといっしょ、いたいです......。わたしを、あなたのおヨメさん、してくれますか......?」


「ゆいっ!!」

セディは堪えきれないという風に、私に唇を押し付けて来た。

「んんっ!」

目を閉じる間もなくて、私は身体がぶるりと震えた。


「ゆいっ!ゆいっ......!!」

離れては私の名を叫び、そしてまた口付けてくる。


私はそんなセディが切なくて涙が出て来た。

「セディ...... 」

私が囁くように名を呼んだ瞬間、セディの熱い舌がするりと入り込んできた。

その後は頭がぼうっとして、何が何だか分からなくなったーー。




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