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2章
目的(シア視点)
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王城の端の端、夜闇を照らす月の明かりしか無い小部屋に僕は幽閉されていた。
身に覚えのない罪で掴まるのは、かなり気分が悪い。
それに、連行されるときは何とか騒がずに冷静でいようと頑張ったが、一人になった今、手が震えるのだ。
僕はどうなってしまうのだろうという恐怖が襲ってくる。
(魔力の残滓、か…)
この言葉を聞いて、少し思い当たることがあった。
以前カナを図書室まで迎えに行ったときに、たまたま聞いてしまった話によると、アイツは魔力の偽造を可能にするという禁書を持っていると言っていた。
ライネ=ヴァレンタイン。僕とカナが通う学院の先輩にあたる男だ。
彼を一言で言えば、模範的生徒。成績優秀、素行も良いし教師からも評判がいい。
(あんな腹黒、そうそういないけどね)
僕だけはアイツの本性を知っている。
歪んだ認知と傲慢さを持つ恐ろしい男だ。
そしてその歪んだ人間の傍迷惑な想いが、カナに向いている。
高等部に入学してから、僕はいち早くその事に気付いた。何かにつけて近づこうとしてくるのを、僕は全て追い払った。
カナに想う人がいるのも二人が両思いなのも知っていたから、多少過干渉であっても容赦なく追い返していた。
(一番やばかったのは、食事に媚薬を混入して連れ去ろうとしてたやつかな…僕が食べてなんとかしたけど)
「カナ、無事でいてね…」
そう呟いたとき、締め切られていたはずの窓から風が入ってきたのを感じた。
反射的に後ろを振り向けば、そこには一人の人間が夜の闇を背に立っていた。
「なっ…!窓には施錠魔法がかかっているはずでは…!」
「…ははっ!ここで一人大人しくしていたのかい、滑稽だね」
「ライネ先輩…!」
(王宮魔術師の魔法をいとも簡単に…この人にできる芸当ではない)
「…先輩、あなた一人ではありませんね?」
「…さすがだね。理解が早くて助かるよ」
ライネ先輩はそう言ってニヤリと笑った。
「ふざけないでください!カナに手を出したら許しません!」
「はっ、君に何が出来る?こんなところに閉じ込められている君に!」
高らかに笑う声が部屋中に響いて、思わず眉をしかめる。するとライネ先輩は見下したような表情でこう言った。
「そんなにあの子を助けたいなら、選択肢をやろう」
「…選択肢?」
「僕の邪魔をし続けたお前には早々に退場してもらうつもりだったが…気が変わった。恐らくお前はこのままいけば未来永劫日の目は浴びられないだろう、助けてやるから僕につけ」
そうすればカナリエと一緒に側妃にでもしてやる、と下衆すぎることを言ってきた。
「…お断りします。先輩、数日前までなら僕は今大ピンチだったでしょうけど、今僕たちは二人ではありません」
「…なに?」
この反応から確信した。きっとこの人はカナがレオス様の番だということを知らない。
番を探すレオス様に冷遇され、親友までいなくなったカナを慰めて、取り入ろうとでもしていたのだろう。
「あなたがどれだけ頑張ろうと、カナはあなたの思い通りにはなりませんよ」
「…まぁ、何を言おうと勝手さ。僕は必ずやり遂げる」
そう言って、ライネ先輩は姿を消した。
大方僕の滑稽な姿を笑いにでも来たのだろう。相変わらずおめでたい思考回路をしている。
あのお馬鹿な先輩は、行動力と人に好かれる力だけはピカイチだ。
なんとしてでも目的を果たそうとするだろう。
それに、奴には協力者がいる。それも王宮魔術師以上の力を持つ誰か。
(レオス様、カナを絶対守ってくださいね…!)
僕は再び閉じられた窓の向こうにある月を眺めながら、ひたすら親友の無事を祈っていた。
身に覚えのない罪で掴まるのは、かなり気分が悪い。
それに、連行されるときは何とか騒がずに冷静でいようと頑張ったが、一人になった今、手が震えるのだ。
僕はどうなってしまうのだろうという恐怖が襲ってくる。
(魔力の残滓、か…)
この言葉を聞いて、少し思い当たることがあった。
以前カナを図書室まで迎えに行ったときに、たまたま聞いてしまった話によると、アイツは魔力の偽造を可能にするという禁書を持っていると言っていた。
ライネ=ヴァレンタイン。僕とカナが通う学院の先輩にあたる男だ。
彼を一言で言えば、模範的生徒。成績優秀、素行も良いし教師からも評判がいい。
(あんな腹黒、そうそういないけどね)
僕だけはアイツの本性を知っている。
歪んだ認知と傲慢さを持つ恐ろしい男だ。
そしてその歪んだ人間の傍迷惑な想いが、カナに向いている。
高等部に入学してから、僕はいち早くその事に気付いた。何かにつけて近づこうとしてくるのを、僕は全て追い払った。
カナに想う人がいるのも二人が両思いなのも知っていたから、多少過干渉であっても容赦なく追い返していた。
(一番やばかったのは、食事に媚薬を混入して連れ去ろうとしてたやつかな…僕が食べてなんとかしたけど)
「カナ、無事でいてね…」
そう呟いたとき、締め切られていたはずの窓から風が入ってきたのを感じた。
反射的に後ろを振り向けば、そこには一人の人間が夜の闇を背に立っていた。
「なっ…!窓には施錠魔法がかかっているはずでは…!」
「…ははっ!ここで一人大人しくしていたのかい、滑稽だね」
「ライネ先輩…!」
(王宮魔術師の魔法をいとも簡単に…この人にできる芸当ではない)
「…先輩、あなた一人ではありませんね?」
「…さすがだね。理解が早くて助かるよ」
ライネ先輩はそう言ってニヤリと笑った。
「ふざけないでください!カナに手を出したら許しません!」
「はっ、君に何が出来る?こんなところに閉じ込められている君に!」
高らかに笑う声が部屋中に響いて、思わず眉をしかめる。するとライネ先輩は見下したような表情でこう言った。
「そんなにあの子を助けたいなら、選択肢をやろう」
「…選択肢?」
「僕の邪魔をし続けたお前には早々に退場してもらうつもりだったが…気が変わった。恐らくお前はこのままいけば未来永劫日の目は浴びられないだろう、助けてやるから僕につけ」
そうすればカナリエと一緒に側妃にでもしてやる、と下衆すぎることを言ってきた。
「…お断りします。先輩、数日前までなら僕は今大ピンチだったでしょうけど、今僕たちは二人ではありません」
「…なに?」
この反応から確信した。きっとこの人はカナがレオス様の番だということを知らない。
番を探すレオス様に冷遇され、親友までいなくなったカナを慰めて、取り入ろうとでもしていたのだろう。
「あなたがどれだけ頑張ろうと、カナはあなたの思い通りにはなりませんよ」
「…まぁ、何を言おうと勝手さ。僕は必ずやり遂げる」
そう言って、ライネ先輩は姿を消した。
大方僕の滑稽な姿を笑いにでも来たのだろう。相変わらずおめでたい思考回路をしている。
あのお馬鹿な先輩は、行動力と人に好かれる力だけはピカイチだ。
なんとしてでも目的を果たそうとするだろう。
それに、奴には協力者がいる。それも王宮魔術師以上の力を持つ誰か。
(レオス様、カナを絶対守ってくださいね…!)
僕は再び閉じられた窓の向こうにある月を眺めながら、ひたすら親友の無事を祈っていた。
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