10 / 29
2章
目的(シア視点)
しおりを挟む
王城の端の端、夜闇を照らす月の明かりしか無い小部屋に僕は幽閉されていた。
身に覚えのない罪で掴まるのは、かなり気分が悪い。
それに、連行されるときは何とか騒がずに冷静でいようと頑張ったが、一人になった今、手が震えるのだ。
僕はどうなってしまうのだろうという恐怖が襲ってくる。
(魔力の残滓、か…)
この言葉を聞いて、少し思い当たることがあった。
以前カナを図書室まで迎えに行ったときに、たまたま聞いてしまった話によると、アイツは魔力の偽造を可能にするという禁書を持っていると言っていた。
ライネ=ヴァレンタイン。僕とカナが通う学院の先輩にあたる男だ。
彼を一言で言えば、模範的生徒。成績優秀、素行も良いし教師からも評判がいい。
(あんな腹黒、そうそういないけどね)
僕だけはアイツの本性を知っている。
歪んだ認知と傲慢さを持つ恐ろしい男だ。
そしてその歪んだ人間の傍迷惑な想いが、カナに向いている。
高等部に入学してから、僕はいち早くその事に気付いた。何かにつけて近づこうとしてくるのを、僕は全て追い払った。
カナに想う人がいるのも二人が両思いなのも知っていたから、多少過干渉であっても容赦なく追い返していた。
(一番やばかったのは、食事に媚薬を混入して連れ去ろうとしてたやつかな…僕が食べてなんとかしたけど)
「カナ、無事でいてね…」
そう呟いたとき、締め切られていたはずの窓から風が入ってきたのを感じた。
反射的に後ろを振り向けば、そこには一人の人間が夜の闇を背に立っていた。
「なっ…!窓には施錠魔法がかかっているはずでは…!」
「…ははっ!ここで一人大人しくしていたのかい、滑稽だね」
「ライネ先輩…!」
(王宮魔術師の魔法をいとも簡単に…この人にできる芸当ではない)
「…先輩、あなた一人ではありませんね?」
「…さすがだね。理解が早くて助かるよ」
ライネ先輩はそう言ってニヤリと笑った。
「ふざけないでください!カナに手を出したら許しません!」
「はっ、君に何が出来る?こんなところに閉じ込められている君に!」
高らかに笑う声が部屋中に響いて、思わず眉をしかめる。するとライネ先輩は見下したような表情でこう言った。
「そんなにあの子を助けたいなら、選択肢をやろう」
「…選択肢?」
「僕の邪魔をし続けたお前には早々に退場してもらうつもりだったが…気が変わった。恐らくお前はこのままいけば未来永劫日の目は浴びられないだろう、助けてやるから僕につけ」
そうすればカナリエと一緒に側妃にでもしてやる、と下衆すぎることを言ってきた。
「…お断りします。先輩、数日前までなら僕は今大ピンチだったでしょうけど、今僕たちは二人ではありません」
「…なに?」
この反応から確信した。きっとこの人はカナがレオス様の番だということを知らない。
番を探すレオス様に冷遇され、親友までいなくなったカナを慰めて、取り入ろうとでもしていたのだろう。
「あなたがどれだけ頑張ろうと、カナはあなたの思い通りにはなりませんよ」
「…まぁ、何を言おうと勝手さ。僕は必ずやり遂げる」
そう言って、ライネ先輩は姿を消した。
大方僕の滑稽な姿を笑いにでも来たのだろう。相変わらずおめでたい思考回路をしている。
あのお馬鹿な先輩は、行動力と人に好かれる力だけはピカイチだ。
なんとしてでも目的を果たそうとするだろう。
それに、奴には協力者がいる。それも王宮魔術師以上の力を持つ誰か。
(レオス様、カナを絶対守ってくださいね…!)
僕は再び閉じられた窓の向こうにある月を眺めながら、ひたすら親友の無事を祈っていた。
身に覚えのない罪で掴まるのは、かなり気分が悪い。
それに、連行されるときは何とか騒がずに冷静でいようと頑張ったが、一人になった今、手が震えるのだ。
僕はどうなってしまうのだろうという恐怖が襲ってくる。
(魔力の残滓、か…)
この言葉を聞いて、少し思い当たることがあった。
以前カナを図書室まで迎えに行ったときに、たまたま聞いてしまった話によると、アイツは魔力の偽造を可能にするという禁書を持っていると言っていた。
ライネ=ヴァレンタイン。僕とカナが通う学院の先輩にあたる男だ。
彼を一言で言えば、模範的生徒。成績優秀、素行も良いし教師からも評判がいい。
(あんな腹黒、そうそういないけどね)
僕だけはアイツの本性を知っている。
歪んだ認知と傲慢さを持つ恐ろしい男だ。
そしてその歪んだ人間の傍迷惑な想いが、カナに向いている。
高等部に入学してから、僕はいち早くその事に気付いた。何かにつけて近づこうとしてくるのを、僕は全て追い払った。
カナに想う人がいるのも二人が両思いなのも知っていたから、多少過干渉であっても容赦なく追い返していた。
(一番やばかったのは、食事に媚薬を混入して連れ去ろうとしてたやつかな…僕が食べてなんとかしたけど)
「カナ、無事でいてね…」
そう呟いたとき、締め切られていたはずの窓から風が入ってきたのを感じた。
反射的に後ろを振り向けば、そこには一人の人間が夜の闇を背に立っていた。
「なっ…!窓には施錠魔法がかかっているはずでは…!」
「…ははっ!ここで一人大人しくしていたのかい、滑稽だね」
「ライネ先輩…!」
(王宮魔術師の魔法をいとも簡単に…この人にできる芸当ではない)
「…先輩、あなた一人ではありませんね?」
「…さすがだね。理解が早くて助かるよ」
ライネ先輩はそう言ってニヤリと笑った。
「ふざけないでください!カナに手を出したら許しません!」
「はっ、君に何が出来る?こんなところに閉じ込められている君に!」
高らかに笑う声が部屋中に響いて、思わず眉をしかめる。するとライネ先輩は見下したような表情でこう言った。
「そんなにあの子を助けたいなら、選択肢をやろう」
「…選択肢?」
「僕の邪魔をし続けたお前には早々に退場してもらうつもりだったが…気が変わった。恐らくお前はこのままいけば未来永劫日の目は浴びられないだろう、助けてやるから僕につけ」
そうすればカナリエと一緒に側妃にでもしてやる、と下衆すぎることを言ってきた。
「…お断りします。先輩、数日前までなら僕は今大ピンチだったでしょうけど、今僕たちは二人ではありません」
「…なに?」
この反応から確信した。きっとこの人はカナがレオス様の番だということを知らない。
番を探すレオス様に冷遇され、親友までいなくなったカナを慰めて、取り入ろうとでもしていたのだろう。
「あなたがどれだけ頑張ろうと、カナはあなたの思い通りにはなりませんよ」
「…まぁ、何を言おうと勝手さ。僕は必ずやり遂げる」
そう言って、ライネ先輩は姿を消した。
大方僕の滑稽な姿を笑いにでも来たのだろう。相変わらずおめでたい思考回路をしている。
あのお馬鹿な先輩は、行動力と人に好かれる力だけはピカイチだ。
なんとしてでも目的を果たそうとするだろう。
それに、奴には協力者がいる。それも王宮魔術師以上の力を持つ誰か。
(レオス様、カナを絶対守ってくださいね…!)
僕は再び閉じられた窓の向こうにある月を眺めながら、ひたすら親友の無事を祈っていた。
56
あなたにおすすめの小説
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで
キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────……
気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。
獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。
故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。
しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
クズ令息、魔法で犬になったら恋人ができました
岩永みやび
BL
公爵家の次男ウィルは、王太子殿下の婚約者に手を出したとして犬になる魔法をかけられてしまう。好きな人とキスすれば人間に戻れるというが、犬姿に満足していたウィルはのんびり気ままな生活を送っていた。
そんなある日、ひとりのマイペースな騎士と出会って……?
「僕、犬を飼うのが夢だったんです」
『俺はおまえのペットではないからな?』
「だから今すごく嬉しいです」
『話聞いてるか? ペットではないからな?』
果たしてウィルは無事に好きな人を見つけて人間姿に戻れるのか。
※不定期更新。主人公がクズです。女性と関係を持っていることを匂わせるような描写があります。
最強の騎士団長はパン屋の青年に癒される
ゆら
BL
転生したカイは、亡くなった両親の跡を継ぎパン屋を営んでいる。最近常連になった男、ルグランジュは最強と名高い騎士団長。センチネルとして有能だが、冷酷と評されるルグランジュだったが、それを知らないカイの前では笑みを見せ──。
最強のセンチネル×パン屋の青年の、センチネルバース物語。
*大人シーン
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる