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2章
血と力
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※この話には暴力描写/心理的支配・洗脳を思わせる表現が含まれます。
苦手な方はご注意ください。
前話同様、飛ばしても内容を理解できるようにしますので、ご安心して次話へお進みください。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ヴェルディアの再興と、今回の誘拐。何の関係があるのかと問えば、カインはにたりと笑って答えた。
「カナリエ=リュードリア、俺はお前の力が欲しいんだよ。そしてシリアス…お前の血が欲しい」
僕の力とシリアス様の血。そう聞いた途端、恐ろしい想像が僕の脳内を占めた。
「ははっ、気付いたようだな?聡い奴だ」
この男は頭がおかしいと、そう突きつけられたかのような気付きが生まれる。
窓から差し込む光が、目の前のカインの顔に陰を作り、吊り上げられた口角と細められた眼が途端に恐ろしさを増した。
「カナリエ=リュードリア、お前の力は素晴らしい。本来は為し得ない事を、世の夫夫たちが喉から手が出るほど望んでいる事を、出来るようにしてしまうんだからな」
「何が、言いたい…?」
こいつが欲しているのは、初代リュードリア夫人の作り上げた魔術。そして、僕の予想が間違っていなければ、彼はこの力を…
「シリアス、お前はまだ施してもらっていないのか?愛する旦那様のために」
下卑た笑みを向けられたシリアス様は、その御顔を青白くして震えている。僕はもどかしい気持ちで歯ぎしりをした。
「ほう、その顔はまだしてもらっていないな?好都合だ。二度目となるとどんな不具合が出るか分かったもんじゃないからな?」
「カイン、カナリエにそんな下卑た言葉を聞かせるな」
はぁ、とため息を吐きながら呆れている素振りを見せたライネ先輩も、正気の沙汰だとは思えなかった。
こんなおぞましい計画を聞いて、絶句しないでいられるのが信じられない。
「ライネ、お前は黙ってろ。…なぁシリアスよ。お前のおかげでヴェルディアの血は汚れた。平民なんぞと交わった血は、もうあの輝かしい栄光の時代の影も形もない…だが、お前だけは違うな?」
恨みが籠った視線に、僅かながら羨望が混じったのが分かった。背筋が凍るようなその視線は、シリアス様を捉えて離さない。
「竜の番となったお前は寿命が伸び、死なずに今日まで生きてきた。あの頃のヴェルディアの血を宿しているのはお前だけだ。だから決めたんだよ」
立ち上がったカインは、感情を消した眼でシリアス様を見下ろした。
「お前には、再興したヴェルディア初の王子を産ませてやる。光栄だろ?」
静かな部屋にその言葉の響きだけが残った。コツコツと床の鳴る音と共に、カインがシリアス様に近づく。
何としてもあの下衆をシリアス様に触らせてはならないと直感した。あの綺麗な肌が、瞳が汚されてしまう。
僕は必死で考えた。拘束された腕と足では身を挺して守ることもできない。
「雷降!!」
僕がそう叫んだ途端、シリアス様に手を伸ばしていたカインの腕に小さな雷が落ちた。
(上手くいった…!)
“雷降”は、習った中で最も詠唱が短い攻撃魔法。だから威力は弱いのだけれど、相手が詠唱に気付いてからじゃ対処できないほどの速さは、奇襲の際重宝される。
「お前…!!黙って見ていれば良いものを!!」
腕が痺れて動けないであろうカインが、僕をギッと睨む。
怒りの矛先が僕に向かうのは、予想通りだ。今は何よりも時間稼ぎをしなければいけない。
レオス様は絶対来てくれると信じてるから、僕はそれまで出来ることを探すんだ。
僕も負けじとカインを睨んだその時、ずっと黙っていたライネ先輩が動いた。
パシンッ!!!
そんな音がして、僕の頬が鈍い痛みを訴えた。
「ぇ」
「カナリエ、君はいつからそんな悪い子になったんだい?僕はそんなふうに教えた覚えはないんだけどなぁ…」
怒りを含んだ声で僕を非難したのは、ライネ先輩だった。振り上げられた手を見れば、彼が僕を叩いたのだと分かる。
「なに、言ってるんですか…?僕は貴方に何かを教えていただいたことはありません」
僕の胸中を占めたのは、ただ一つの感情。恐怖だ。
意味の分からないことを言い、突然頬を叩くような蛮行に出る人というだけで恐ろしいのに、彼の顔に浮かんでいるのは歪んだ笑顔。
思考も行動も読めない人に、体術的優位に立たれているのが恐ろしい。
そして彼は僕の反論を理解した途端、怒りと憎悪に塗れたような顔をした。
「お前までそんな…!おかしな事を言うのかッ!!!来い、躾け直してやる!!」
グイッと手を捻りあげられる。痛みが両腕を襲って、涙が浮かんだ。
(たすけて、レオス様…!)
そう願った瞬間、真後ろからドンッと扉を蹴り開ける音が聞こえた。
苦手な方はご注意ください。
前話同様、飛ばしても内容を理解できるようにしますので、ご安心して次話へお進みください。
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ヴェルディアの再興と、今回の誘拐。何の関係があるのかと問えば、カインはにたりと笑って答えた。
「カナリエ=リュードリア、俺はお前の力が欲しいんだよ。そしてシリアス…お前の血が欲しい」
僕の力とシリアス様の血。そう聞いた途端、恐ろしい想像が僕の脳内を占めた。
「ははっ、気付いたようだな?聡い奴だ」
この男は頭がおかしいと、そう突きつけられたかのような気付きが生まれる。
窓から差し込む光が、目の前のカインの顔に陰を作り、吊り上げられた口角と細められた眼が途端に恐ろしさを増した。
「カナリエ=リュードリア、お前の力は素晴らしい。本来は為し得ない事を、世の夫夫たちが喉から手が出るほど望んでいる事を、出来るようにしてしまうんだからな」
「何が、言いたい…?」
こいつが欲しているのは、初代リュードリア夫人の作り上げた魔術。そして、僕の予想が間違っていなければ、彼はこの力を…
「シリアス、お前はまだ施してもらっていないのか?愛する旦那様のために」
下卑た笑みを向けられたシリアス様は、その御顔を青白くして震えている。僕はもどかしい気持ちで歯ぎしりをした。
「ほう、その顔はまだしてもらっていないな?好都合だ。二度目となるとどんな不具合が出るか分かったもんじゃないからな?」
「カイン、カナリエにそんな下卑た言葉を聞かせるな」
はぁ、とため息を吐きながら呆れている素振りを見せたライネ先輩も、正気の沙汰だとは思えなかった。
こんなおぞましい計画を聞いて、絶句しないでいられるのが信じられない。
「ライネ、お前は黙ってろ。…なぁシリアスよ。お前のおかげでヴェルディアの血は汚れた。平民なんぞと交わった血は、もうあの輝かしい栄光の時代の影も形もない…だが、お前だけは違うな?」
恨みが籠った視線に、僅かながら羨望が混じったのが分かった。背筋が凍るようなその視線は、シリアス様を捉えて離さない。
「竜の番となったお前は寿命が伸び、死なずに今日まで生きてきた。あの頃のヴェルディアの血を宿しているのはお前だけだ。だから決めたんだよ」
立ち上がったカインは、感情を消した眼でシリアス様を見下ろした。
「お前には、再興したヴェルディア初の王子を産ませてやる。光栄だろ?」
静かな部屋にその言葉の響きだけが残った。コツコツと床の鳴る音と共に、カインがシリアス様に近づく。
何としてもあの下衆をシリアス様に触らせてはならないと直感した。あの綺麗な肌が、瞳が汚されてしまう。
僕は必死で考えた。拘束された腕と足では身を挺して守ることもできない。
「雷降!!」
僕がそう叫んだ途端、シリアス様に手を伸ばしていたカインの腕に小さな雷が落ちた。
(上手くいった…!)
“雷降”は、習った中で最も詠唱が短い攻撃魔法。だから威力は弱いのだけれど、相手が詠唱に気付いてからじゃ対処できないほどの速さは、奇襲の際重宝される。
「お前…!!黙って見ていれば良いものを!!」
腕が痺れて動けないであろうカインが、僕をギッと睨む。
怒りの矛先が僕に向かうのは、予想通りだ。今は何よりも時間稼ぎをしなければいけない。
レオス様は絶対来てくれると信じてるから、僕はそれまで出来ることを探すんだ。
僕も負けじとカインを睨んだその時、ずっと黙っていたライネ先輩が動いた。
パシンッ!!!
そんな音がして、僕の頬が鈍い痛みを訴えた。
「ぇ」
「カナリエ、君はいつからそんな悪い子になったんだい?僕はそんなふうに教えた覚えはないんだけどなぁ…」
怒りを含んだ声で僕を非難したのは、ライネ先輩だった。振り上げられた手を見れば、彼が僕を叩いたのだと分かる。
「なに、言ってるんですか…?僕は貴方に何かを教えていただいたことはありません」
僕の胸中を占めたのは、ただ一つの感情。恐怖だ。
意味の分からないことを言い、突然頬を叩くような蛮行に出る人というだけで恐ろしいのに、彼の顔に浮かんでいるのは歪んだ笑顔。
思考も行動も読めない人に、体術的優位に立たれているのが恐ろしい。
そして彼は僕の反論を理解した途端、怒りと憎悪に塗れたような顔をした。
「お前までそんな…!おかしな事を言うのかッ!!!来い、躾け直してやる!!」
グイッと手を捻りあげられる。痛みが両腕を襲って、涙が浮かんだ。
(たすけて、レオス様…!)
そう願った瞬間、真後ろからドンッと扉を蹴り開ける音が聞こえた。
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