【一部完結】大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

文字の大きさ
26 / 29
2章

想いのゆくえ

しおりを挟む
そうして訪れた地下牢は、暗く静かな、重い空気の漂う場所だった。

こんな恐ろしい場所に初めて来て、以前の僕だったら怯えていただろう。でも今は全く怖くない。それはきっとレオス様がいるからだ。

差し出された手をぎゅっと握って、反響する足音を聞きながら牢の前を歩いた。

一番奥の牢に、僕らの目的の人物はいた。

「…なんだ、来てくれたのか」

皮肉げに吐き出したカインは、僕らと目を合わすことなく下を向いている。

「僕はお前を許さない」

「分かっている。俺は死刑でいい」

「なんであんなことをした?」

「…俺の運命だ、宿命だ。為さねばならないことだった」

「どうして?」

「俺がカイン=ヴェルディアだからだ」

「それがどうした」

「取り戻さなければいけなかった。奪われたものを取り返さなければいけなかったんだ」

「…それを奪ったのは、シリアス様じゃないよ」

「あぁ、それももう分かった。それでも、俺には背負う想いがあった。それが間違っていようとどうでもよかった」

「それは、その想いは、お前のものではないよ」

「…は?違う、これは俺のものだ。俺が託された…!」

「違う。お前たちのそれは、呪いだ。植え付けられた憎しみを想いとは言わない」

知っているんだ。この人が苦しんでいたということを。

「お前がそれに勝たなければ、この争いは終わらない。自分の中にある本当の想いを、手放したらダメだ」

「俺は…」

迷子の子供のような、不安定に動揺する姿を見て胸が痛んだ。ねじ曲がった運命が、こうして人を苦しめている。

(これが苦しかったんですね…)

僕の中にいる初代夫人へ声をかけてみる。返事は帰ってこないけど、僕はそうだと確信していた。

「自分の想いを、歩みたい道を諦めないで」

そう言うと、カインは俯いて肩を震わせていた。

その姿に僕が何も言えないでいると、隣にいたレオス様が口を開いた。

「決して許されることはないと、自分でも分かっているはずだ。だが、お前がその罪を償いきったとき、お前自身の目で見たものを信じられるように、好きに生きられるようになって欲しいと…そう思う」

その言葉を最後に僕とレオス様はその場を離れようとした。しかしそれはカインの小さな声によって引き留められた。

「…ひとつだけ、伝えておいて欲しいことがある。俺は…シリアスは自身が助かるため竜王の伴侶になったのだと、兄を恨んで貶めようとしたのだと、そう信じていた」

「それは…」

「分かっている。全て間違いだったと。でもあの男は兄の罪に責任を感じて俺を哀れんでいた。それで俺を見捨てられない、あの男の砂竜王への想いはその程度のものだったのだと思った。でも違ったんだ。哀れんだから俺に着いてきたわけじゃなかった」

そう言葉を切って、カインは視線を上げた。ここに来て初めてしっかりと僕らを見据え、表情を歪めた。

「あの男は、愛される資格を得るために死ぬと言った。そばにいられなくてもずっと愛していると…あれを愛でなく何と言う。俺は間違っていた、あの二人の関係を壊しかけた。俺がお前たちに何かを頼むのは許されないことかもしれない…けれどどうか、あの二人に要らぬ誤解が生まれぬようにしてやってほしい」

カインはそう言って、深く深く頭を下げた。言葉が出ない僕を見て、レオス様が短く了承の言葉を口にする。するとカインは頭を上げて、ホッとしたように笑った。

「…ありがとう、本当に」

その感謝が何を示すのか、僕にははっきりとは分からない。けれど確かに、彼はもう大丈夫だと分かった。

それから僕とレオス様は暗い地下牢を出て、陽の当たる廊下へ戻っていった。静まり返ったそこで二人、少しの間立ち尽くしていた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで

キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────…… 気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。 獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。 故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。 しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

クズ令息、魔法で犬になったら恋人ができました

岩永みやび
BL
公爵家の次男ウィルは、王太子殿下の婚約者に手を出したとして犬になる魔法をかけられてしまう。好きな人とキスすれば人間に戻れるというが、犬姿に満足していたウィルはのんびり気ままな生活を送っていた。 そんなある日、ひとりのマイペースな騎士と出会って……? 「僕、犬を飼うのが夢だったんです」 『俺はおまえのペットではないからな?』 「だから今すごく嬉しいです」 『話聞いてるか? ペットではないからな?』 果たしてウィルは無事に好きな人を見つけて人間姿に戻れるのか。 ※不定期更新。主人公がクズです。女性と関係を持っていることを匂わせるような描写があります。

最強の騎士団長はパン屋の青年に癒される

ゆら
BL
転生したカイは、亡くなった両親の跡を継ぎパン屋を営んでいる。最近常連になった男、ルグランジュは最強と名高い騎士団長。センチネルとして有能だが、冷酷と評されるルグランジュだったが、それを知らないカイの前では笑みを見せ──。 最強のセンチネル×パン屋の青年の、センチネルバース物語。 *大人シーン

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。

にのまえ
BL
 バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。  オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。  獣人?  ウサギ族?   性別がオメガ?  訳のわからない異世界。  いきなり森に落とされ、さまよった。  はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。  この異世界でオレは。  熊クマ食堂のシンギとマヤ。  調合屋のサロンナばあさん。  公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。  運命の番、フォルテに出会えた。  お読みいただきありがとうございます。  タイトル変更いたしまして。  改稿した物語に変更いたしました。

処理中です...