【一章完結】大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

文字の大きさ
27 / 30
2章

想いのゆくえ

しおりを挟む
そうして訪れた地下牢は、暗く静かな、重い空気の漂う場所だった。

こんな恐ろしい場所に初めて来て、以前の僕だったら怯えていただろう。でも今は全く怖くない。それはきっとレオス様がいるからだ。

差し出された手をぎゅっと握って、反響する足音を聞きながら牢の前を歩いた。

一番奥の牢に、僕らの目的の人物はいた。

「…なんだ、来てくれたのか」

皮肉げに吐き出したカインは、僕らと目を合わすことなく下を向いている。

「僕はお前を許さない」

「分かっている。俺は死刑でいい」

「なんであんなことをした?」

「…俺の運命だ、宿命だ。為さねばならないことだった」

「どうして?」

「俺がカイン=ヴェルディアだからだ」

「それがどうした」

「取り戻さなければいけなかった。奪われたものを取り返さなければいけなかったんだ」

「…それを奪ったのは、シリアス様じゃないよ」

「あぁ、それももう分かった。それでも、俺には背負う想いがあった。それが間違っていようとどうでもよかった」

「それは、その想いは、お前のものではないよ」

「…は?違う、これは俺のものだ。俺が託された…!」

「違う。お前たちのそれは、呪いだ。植え付けられた憎しみを想いとは言わない」

知っているんだ。この人が苦しんでいたということを。

「お前がそれに勝たなければ、この争いは終わらない。自分の中にある本当の想いを、手放したらダメだ」

「俺は…」

迷子の子供のような、不安定に動揺する姿を見て胸が痛んだ。ねじ曲がった運命が、こうして人を苦しめている。

(これが苦しかったんですね…)

僕の中にいる初代夫人へ声をかけてみる。返事は帰ってこないけど、僕はそうだと確信していた。

「自分の想いを、歩みたい道を諦めないで」

そう言うと、カインは俯いて肩を震わせていた。

その姿に僕が何も言えないでいると、隣にいたレオス様が口を開いた。

「決して許されることはないと、自分でも分かっているはずだ。だが、お前がその罪を償いきったとき、お前自身の目で見たものを信じられるように、好きに生きられるようになって欲しいと…そう思う」

その言葉を最後に僕とレオス様はその場を離れようとした。しかしそれはカインの小さな声によって引き留められた。

「…ひとつだけ、伝えておいて欲しいことがある。俺は…シリアスは自身が助かるため竜王の伴侶になったのだと、兄を恨んで貶めようとしたのだと、そう信じていた」

「それは…」

「分かっている。全て間違いだったと。でもあの男は兄の罪に責任を感じて俺を哀れんでいた。それで俺を見捨てられない、あの男の砂竜王への想いはその程度のものだったのだと思った。でも違ったんだ。哀れんだから俺に着いてきたわけじゃなかった」

そう言葉を切って、カインは視線を上げた。ここに来て初めてしっかりと僕らを見据え、表情を歪めた。

「あの男は、愛される資格を得るために死ぬと言った。そばにいられなくてもずっと愛していると…あれを愛でなく何と言う。俺は間違っていた、あの二人の関係を壊しかけた。俺がお前たちに何かを頼むのは許されないことかもしれない…けれどどうか、あの二人に要らぬ誤解が生まれぬようにしてやってほしい」

カインはそう言って、深く深く頭を下げた。言葉が出ない僕を見て、レオス様が短く了承の言葉を口にする。するとカインは頭を上げて、ホッとしたように笑った。

「…ありがとう、本当に」

その感謝が何を示すのか、僕にははっきりとは分からない。けれど確かに、彼はもう大丈夫だと分かった。

それから僕とレオス様は暗い地下牢を出て、陽の当たる廊下へ戻っていった。静まり返ったそこで二人、少しの間立ち尽くしていた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

病み墜ちした騎士を救う方法

無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。 死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。 死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。 どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……? ※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です

クズ令息、魔法で犬になったら恋人ができました

岩永みやび
BL
公爵家の次男ウィルは、王太子殿下の婚約者に手を出したとして犬になる魔法をかけられてしまう。好きな人とキスすれば人間に戻れるというが、犬姿に満足していたウィルはのんびり気ままな生活を送っていた。 そんなある日、ひとりのマイペースな騎士と出会って……? 「僕、犬を飼うのが夢だったんです」 『俺はおまえのペットではないからな?』 「だから今すごく嬉しいです」 『話聞いてるか? ペットではないからな?』 果たしてウィルは無事に好きな人を見つけて人間姿に戻れるのか。 ※不定期更新。主人公がクズです。女性と関係を持っていることを匂わせるような描写があります。

少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??

和泉臨音
BL
 昔から物事に違和感を感じることの多かった衛は周りから浮いた存在だった。国軍養成所で一人の少女に出会い、ここが架空の大正時代を舞台にしたバトルありの少女漫画の世界だと気付く。ならば自分は役に立つモブに徹しようと心に誓うも、なぜかヒロインに惚れるはずの当て馬イケメンキャラ、一条寺少尉に惚れられて絡め取られてしまうのだった。 ※ 腹黒イケメン少尉(漫画では当て馬)×前世記憶で戦闘力が無自覚チートな平凡孤児(漫画では完全モブ) ※ 戦闘シーンや受が不当な扱いを受けるシーンがあります。苦手な方はご注意ください。 ※ 五章で完結。以降は番外編です。

処理中です...