「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき

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大好き(完)

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前回来た時は眠っていて、帰りも振り返れなくてちゃんと見れなかった扉。
僕は広哉くんの住む部屋の前まで来ていた。

「じゃあ俺たちはここまで。車の中にいるから、なんかあったらおいで」
「は、はい!ありがとうございました…!」

ここまで連れてきてくれたお二人に頭を下げる。去っていくその背中を見届けたあと、僕はもう一度扉に向き合って、チャイムを鳴らす。

中からわずかに電子音が聞こえて、パタパタと人が歩く音が近づいてくる。
やがて、鍵を開ける音がしたあと扉が動いた。

「はーい、って…ゆうくん…?」
「こ、こんばんは…」

なんで、と呟く広哉くんの表情は驚きで染まっていた。

怒ってるかも、もう僕のことなんて好きじゃないかも…とか色々なことを考えてしまって、言葉が出ない。二人の間を静寂が流れる。

「げ、幻覚…?」
「へ?ち、違いますよ?!本物です!」

頬をつねりながら言う広哉くんの言葉を慌てて否定し、その綺麗な肌を傷つけるのを止めた。

「じゃあ戻ってきてくれたの?」
「…はい。少しお話させてくれますか?」
「う、うん!上がって」

ちゃんと話さなきゃ。これから一緒にいるために、僕がしてきた覚悟を。

そう考えながら家に入った僕を見ている広哉くんの目がどんな色をしていたか、この時の僕には気づくことが出来なかった。




◇◇◇




ソファに座らせてもらった僕は、隣に座る広哉くんに早速切りだした。

「僕、この数日間たくさん考えたんです」
「…なにを?」
「あれでよかったのかなって。何度考えても、広哉くんと一緒にいるという決断は出来なかった」
「そっか…」

広哉くんが俯いたのが分かった。僕はそのまま続ける。

「でも今日、ハルくんが僕のとこに来たんです。僕、一番大事な広哉くんの気持ち考えてなかったって気付きました」

広哉くんは黙ってそれを聞いていた。やっぱりもう遅かったかな、と思って少し涙が滲む。

「本当は、広哉くんと一緒にいたいっ…大好きなんです」
「俺も好きだ…!」

泣きながら情けない告白をした僕を、広哉くんはぎゅっと抱きしめてくれた。

「苦しかった…やっと会えたのにって。戻ってきてくれて嬉しい」
「振り回してごめんなさい」
「いいんだ、帰ってきてくれたから…もう離せないけどいいよね?」
「うん、離さないでください…」

すごく恥ずかしいセリフ。でも本当にそう思ったから、仕方ない。

くっついちゃいそうなほど強く抱き締めあって、広哉くんの匂いや温かさを感じる。

長く長く抱きしめあった後は、熱い瞳と目が合って頬を撫でられた。

(あ、これ…)

見たことある。雑誌で見たやつだ。an○nか何かにシャロンくんの記事が載るからって買ったやつ。
たしか…キスの、話をしてた。

(僕、キスするんだ…)

近づいてくる顔がかっこよすぎて、思考が蕩ける。
やがて唇に柔らかいものが触れて、ふにふにと食まれた。僕は広哉くんの唇に全てを任せて、されるがままになる。

(なんか、慣れてる)

そう思うとなんだか悔しくなった。
そういえば、さっき思い出した雑誌。僕が見たということは、みんなあの色っぽいシャロンくんを知ってるんだ。

僕は幸せなはずのキスの中で、モヤモヤしたものを感じた。

「…ゆうくん、なんで怒ってるの?」
「…怒ってません」
「うそ、眉間にシワよってる。嫌だった?」
「ちがっ!…なんか、慣れてるから」

嫌だったなんて勘違いされたくなくて正直に言うと、広哉くんは一瞬ぽかんとして、すごく嬉しそうに笑った。

「やきもち?」
「…そうです」
「あ~なんでそんな可愛いの」

僅かな反抗心でそっぽを向いたのに、広哉くんは嬉しそうに僕を膝に乗せて、可愛いと言った。
もう可愛いなんて言われる年齢ではないのに。

顔中に何度もキスを落とされて、モヤモヤしていたのが馬鹿らしくなってくる。

「大丈夫、ちゃんと俺も初めてだから」
「ほんと?」
「ほんとだよ」

すごく嬉しくて、今度は自分からキスしてみた。
すると広哉くんは、突然僕を抱えて立ち上がった。

「もう無理、かわいすぎ」
「え、え?」
「煽ったのゆうくんだからね?」

スタスタと歩き出した広哉くんは、廊下の一番奥の部屋の扉を開けた。

「あ、ここ…」

初めてここに来た日に寝てた場所だ。部屋中広哉くんの匂いがする。

「今日からここがゆうくんの部屋だよ。というか、俺らの部屋」
「え?!」

僕は優しくベッドに降ろされて、その衝撃発言に驚いた。

「ずっと一緒にいてくれるんでしょ?」

すり、と僕の頬を撫でる手が熱い。
それに、広哉くんの目がまたあの蕩けた目になっている。
僕はこくりと頷いた。

「ふふ、良かった。たくさん愛し合おうね…?」
「は、はぃ…」

思考が蕩ける感覚が気持ちいい。全部広哉くんに預けたくなる、この感覚。

さっきより深いキスをして、唇から溶け合いそうな熱を共有する。僕は広哉くんの首に手を回して、もっとしたいと訴えた。

「ゆうくん…可愛い」
「ん、ふぁ…」

必死に舌を絡めているせいで声が漏れる。息が苦しくなって、広哉くんの背中を叩いた。

すると唇が離れて、広哉くんの手が服の裾から入ってきた。

「え!?そ、そこは」
「んー?ふふ、たくさんシようね?」
「え、ちょっ、ぁっ」

そこまでの心構えは出来てない!
確かにえっちな雰囲気だとは思ってたけど…!

慌てる僕を見つめる瞳には、ほの暗い色が浮かんでいて。
僕が受け入れると決めた人は、とんでもない人だと悟った。


「ゆうくん、大好きだよ…♡」
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