新米薬師は義家族から逃げるために王子様と結婚します…!?

あまさき

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好き…!?

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 それから僕は、着々と準備を重ねた。
 バレないように少しづつ荷物をまとめ、家を出たあとの逃走経路もチェック。
 そして何より大切なのは、薬室のみんなへの挨拶と仕事の引き継ぎ。全てをパーティ当日までに終わらせなければいけなかった。

 まず最初に声をかけたのは主任だった。パーティの日を境に仕事を辞めると伝えたら、主任は最初、興奮したように不思議なことを尋ねた。

「そうかそうか、おめでとう!エルヴァンが結婚か…たまにはここにも顔を出すんだよ。それにしてもあの方はほんとに我慢が効かないなぁ、計画より早く言ってしまうだなんて」
「…?あの、僕結婚はしませんよ?」
「…え?」

 結婚、あの方、我慢、計画…?と何一つピンと来ないことを語られて、僕はとても困惑した。一方主任は、僕の返答を聞いた途端、顔を真っ青に染め上げて固まってしまった。そして数秒固まった後、今にも泣きそうな顔で僕の方を揺さぶった。

「エルヴァン、もしかしてパーティには行かないつもりかい?!」
「は、はい」
「なんてこった…!どうしてそんなことになったんだ!今ここで全て話しなさい!」

 あまりの剣幕に押されながら、僕はこれからの計画を話した。いつも穏やかな主任には珍しく、義家族の話をするときはとても嫌そうな顔をし、逃げ出す計画の話をするときはとても切羽詰まったような顔をした。まさに百面相である。

「そうか、君はとても辛い思いをしてきたんだね…気付いてやれなくてすまなかった」
「いや、違うんです!ここでの日々は僕にとって癒しで…本当に楽しかったんです。だから気付けなくて当然です」
「ここが君の支えになれていたのなら良かった。それでもね、君の家族の所業は許されたものではない。すぐに処罰も可能だけど…どうしたい?」
「それは…大丈夫です。あの人たちがああなったのには、父が甘かったのも僕が弱かったのも原因としてあります。だから、僕がいなくなったあと苦しむくらいが罰としてちょうどいいと思うんです。更正の機会があっていいはず…へへ、甘いですかね」
「そんなことないさ。君の優しさは素晴らしいものだと僕は思うよ」

 主任の笑顔がまた天使に見えて、僕は泣きそうになった。こんなに素晴らしい方の下で働けたことを、僕は一生誇りに思うことだろう。

「それはそうとして…エルヴァン、君は好きな人はいるかい?」
「へ?い、いないですよそんな!」
「そうか…僕はてっきり、ルカのことが好きなのかと思っていたけど」
「ルカ様のことが、好き?」

 顔が沸騰したように熱くなった。
 僕がルカ様のことを好きだなんて、恐れ多すぎて考えたこともなかった。それに、僕は恋がどんなものなのか知らない。

「ルカ様といると、楽しくて嬉しいのに胸がギュッとなるんです…これは“好き”なんですか?」
「…びっくりしたよ、惚気かと思ったね」
「そんなつもりは…!え、でも、僕なんかがルカ様を…」
「気持ちに気付いてなかったんだね…道理で未練が無さそうだったわけだ」

 ルカ様が好きだと気付いてしまった。しかし未練は生まれなかった。
だって、僕なんかきっと相手にもされないだろう。自分で作った薬のおかげでβだと思われてるだろうし、Ωだと分かってもこんな目も髪も薄茶色の平々凡々男じゃ見向きもされないかもしれない。

「ここを離れること、自分で伝えられるかい?難しそうなら僕が伝えておくけど」
「…お願いします」

 僕が自分で伝えることは出来ないと思った。未練はなくても一緒にいたい気持ちが強くなって、決意が揺らぎそうだったから。
 パーティの日までにたくさん思い出を作って、それを全部抱えて行こう。一生寂しくならないように。

「この町を出たいというのが君の最後のわがままか…寂しくなるな。僕にもできる限りの協力をさせてくれ」
「主任…ありがとうございます」

 そうして主任は、僕が町から出るために馬車を貸そうと言ってくれた。その好意をありがたく受け取って、僕と主任は馬車との落合場所などを決めた。

「エルヴァン、最後に聞かせてくれ。本当にこれが君の一番の望みだと…最高な未来だと、断言できるかい?」

 そう言われた僕の脳裏には、この薬室や同僚たち、そしてルカ様が浮かんだ。みんながいない生活…最高だといえば嘘になる。
 けど僕は今、その嘘を吐くことしか出来なかった。

「はい」
「そうか」

 そう言ってふわっと笑った主任が、小さく何かを呟いた。

「…僕のやるべきことは決まったよ」

 僕にはそれが聞こえなかったけど、聞き返しても主任が答えてくれることはなかった。
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