新米薬師は義家族から逃げるために王子様と結婚します…!?

あまさき

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家族

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 明るくなった雰囲気の中、その場は収められた。
 着替えが終わって、ルシアン様がロールスさんと共に部屋を出ていったあと、僕とリリも部屋を出た。

「ねぇ、リリ。今から何をしに行くの?」
「えぇとですね、まずエルヴァン様のお洋服を創るための採寸と、デザイン選びを行います」
「えぇ、僕デザインなんて何がいいのか分からないよ」
「ご安心ください、リリも手伝わせていただきますので!それに、どうしてもエルヴァン様のお洋服選びを手伝いたいと仰っている方がいまして…」
「そ、そんな奇特な人がいるの?」

 一体どこの誰なんだ、と首を傾げる思いで目的の部屋の扉を開いた。

「やぁ、エルヴァン!昨日は殿下に変なことをされなかったかい?」
「スノリア様?!」

 僕と目が合った途端、笑みを浮かべてこちらに近づいてくるスノリア様。心配そうにしながら僕の肩に手を置くのを、目を見開いて眺めた。

「やだなぁエルヴァン、君はもう僕の義弟だよ?お兄様と呼んでくれ!」
「そ、そんな急に言われても…」

 キラキラとした瞳で“お兄様”呼びを催促する姿は、薬室で働いていたときとは別人に見える。あまりの変わり様に、僕が弟になることにそんなに浮かれているのか…?と若干自意識過剰なことを思ってしまった。

 だが確かに、慣れないし恐れ多い気持ちは拭えないけど、義兄弟になるのに他人行儀ではいけないだろう。僕は思い切ってその名を呼んでみた。

「す、スノリア兄様…?」
「…!あぁそうだよ、僕が君の兄様だ!」

 感極まった様子のスノリア様に飛びつくように抱きしめられ、ぐりぐりと頭を撫でられた。僕は諦めて、主人に過剰に可愛がられる猫のようにされるがままになった。

「あ、あの、兄様?とりあえず落ち着いてください…!」
「あ、あぁごめんね、昨日から少し気分が高揚していて…やっとできた弟なんだ」

 嬉しそうに微笑むスノリア様は、たしかエルランド家唯一の嫡子だったはずだ。だからこそ今回僕を迎えることが許されたし、スノリア様も弟ができることを切望していたらしい。

「あの、本当に僕でよかったんですか?」

 そう尋ねると、スノリア様は少し怒ったように言った。

「昨夜も言っただろう?君がいいと思ったから、父にも陛下にも掛け合ったし殿下にも協力したんだ」

続いてリリがスノリア様の言葉にうんうんと頷きながら話した。

「そうですよ、エルヴァン様!昨夜の所作は充分に貴族たり得るものでしたし、私たち下位貴族の令嬢はエルヴァン様のことをすごく応援しているんです」

「そ、そうなの?」

「はい!というのも、下位貴族が王家に入れることはまずないんです。エルヴァン様のように運命の番でもない限り、上位貴族たちの競争を見守るだけ。見下されているのに耐えることしかできないんです。そんな中、貴族位すら持っていなかったエルヴァン様が王子妃として認められたあの御姿は、私たちにとって希望そのものでした」

 手を合わせてうっとりと語る姿に、むず痒さを覚える。けれどその話に胸が熱くなったりもした。

「それにです、あの公爵令嬢や伯爵令嬢の顔見ました?!あんなに私たちを馬鹿にしていたのに、殿下が彼女たちに目もくれずエルヴァン様を選ばれたときの悔しそうな顔!!すっっきりしました…!」

 熱心に語りかけられても、昨日の僕はフェロモンで惚けていたせいで、あの光景を何となくしか覚えていない。苦笑いで誤魔化しながら、彼女の熱い眼差しを受け止めた。

「まぁそういうことだ。私たちの企みは全て上手くいって、君は僕の義弟になり、殿下の婚約者になった。どうだい?最高に幸せな未来だろう」

 あの日と同じ得意げな笑顔。僕の兄様になってくれた人。

「ふふっ、匿ってくださいって言っただけなのに、本当の家族にして貰っちゃいましたね」

すごく胸が熱くなって、僕はやっと、縛られるだけのものじゃない“家族”を得ることができたのかもしれないと思った。

(父さん、母さん…これでやっと、安心してもらえるかな)

体は弱かったけど芯があって優しい母さん、あんな義母に騙されるほど抜けてたけど誰より僕のことを想ってくれていた父さん。

二人が居なくなって独りになってしまった僕の世界が、やっと明るい光を差した気がした。

「これからよろしくね、兄様」
「…僕の弟が可愛すぎる、ねぇリリ?」
「はい、スノリア様…これは本格的に、リリも護衛術を習った方が良さそうですね」
「あぁそうだね…よろしく頼むよ、リリ」

真剣な顔をして頷き合う二人が、どうしてそんな話をしているのか全く分からなかった。

「あ、あの…?」
「とりあえず今はこの可愛いエルヴァンに似合う服を探さなきゃね!」
「はい!スノリア様!」

困惑する僕を置き去りに、何故か結託を強めた二人が服を漁り始めた。
僕はといえば、その後の着せ替え祭りに何とか着いていきながら、あっという間に数時間を過ごしていたのだった。
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