新米薬師は義家族から逃げるために王子様と結婚します…!?

あまさき

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誓い

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 あれからちょうど二年が経った。
 この二年の間で、ほんとうに色々なことがあった。

 僕が変えようとした運命は、予定とはまったく違う形に変わってしまって、僕を幸せの道へ運んだ。

 あのパーティで捕らえられた義母と義姉たちは、王族を謀り未来の王子妃を長年虐げていた罪により、辺境の修道院へ送られることとなった。あの性根を叩き直すという意味でも、この処罰で良かったのだと思っている。

 そして僕はルシアン様の婚約者として、侯爵家や王宮で慌ただしい日々を過ごした。
 ルシアン様は第二王子なので、将来は公爵位を叙爵されると言われている。それを支えるための勉強や、貴族社会のことについての勉強、とにかく沢山のことを学んだ。

 そして今日、僕とルシアン様は結婚する。


「エルヴァン様、すごくお綺麗です…!」
「あ、ありがとう」

 目に光を浮かべたリリが、姿見の前でぎこちなく立つ僕を褒めちぎる。

 白のタキシードを着て、首元には銀のフリル、胸元にはペリドットの施されたブローチが光っている。

「これは明らかに…」
「殿下の色ですねぇ」
「だよね…」

 この二年間で僕は理解した。ルシアン様は、僕との関係、というか僕がルシアン様のものだということを吹聴するのが好きだ。一種の独占欲と言ってもいいだろう。

 くすぐったいような嬉しいような気持ちで、おそらくもう少しでここへ訪れるだろうルシアン様を待つ。

 時計を見れば、式の開会まであと一時間ほどだった。変わらないスピードで進む秒針に、緊張が高まってくる。そんな僕の心細さを切り裂くように、勢いよく扉が開かれた。

「エルヴァン!あぁ、すごく似合っているよ」
「ルシアン様!あ、ありがとうございます」

 甘い響きの言葉が嬉しくて、これを着てその意味に気付いたときよりもっと舞い上がってしまう。

「エルヴァン様、私の時と反応が違いすぎます…」
「ふふ、当然だろう?私はエルヴァンの特別だからな!」

 得意げに言うルシアン様は、やっぱり僕を自慢するように腰を引き寄せた。

「もう、恥ずかしいです!それに、そのブローチ…」
「あぁ、この間君が選んでくれたものだよ。嬉しかったなぁ、君の色を纏うことを許してもらえて」

 愛おしむように見つめられて、頬が熱くなる。

 先日王宮に訪れた宝石商から買ったブローチ。黄金味を帯びたサンストーンは、僕の目をひいてどうしても買いたいという気持ちにさせた。

 僕にだって、この人は僕のだと言いたい気持ちはあるのだ。そしてこれを渡した時から、ルシアン様はことある毎にこの話をする。毎度毎度、新鮮に噛み締めるように。

「さぁ、行こうか。そろそろ式が始まる」
「はい…!」

 差し出された手をしっかりと握って、淡く光が指す扉の向こうへ歩き出した。



 ◇◇◇



会場に着いたときには、その中にたくさんの人の気配を感じた。思わず、組んだ腕にぎゅっと力を込めてしまった。ルシアン様は無言で、組んだ方と反対の手で僕の腕をそっと撫でてくれた。この心強い手に守られているような気がして、緊張が解れる。

そんな僕の様子を見たルシアン様は、ドアマンへ静かに合図をして、開いた扉の向こうへ僕を連れ出した。

途端にワッと沸き立つ会場。僕らはその中心になった。

「おめでとう!」
「おふたりともすごく素敵だわ…!」
「ルシアン殿下!エルヴァン様ー!」

暖かい声に包まれて、僕とルシアン様は講堂の最前までたどり着いた。

静まり返った会場に、厳かな雰囲気を纏った神父の厳格な声が響く。

「本日ここにお集まりの皆さまの前で、ルシアン=カスタニエ=グレイシル殿下とエルヴァン=エルランド様は、神の祝福のもと結婚の誓いを立てられます」

神父はゆったりとした仕草で僕とルシアン様を交互に見つめる。

「病める時も健やかなる時も、愛し、敬い、助け合うことを誓いますか?」

「はい、誓います」
「我が名に誓って、必ず」

ルシアン様の王族らしい堂々とした声が響いて、大きな大きな拍手が巻き起こった。

見つめあった僕らは、その歓声の中でしっかりと手を取り合い、誓いの口付けを交わした。

「ここに、二人を正式な夫夫として宣します」

高らかな宣言と共に、僕らの式は大きな感動を残して幕を閉じたのだった。
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