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身分が下であるのにも関わらず向こうから婚約破棄宣言とは。
随分と私も舐められたものだ。
国王陛下が決めた婚約であり政略結婚である為彼には恋愛感情なるものは抱かなかったがそれでも寄り添おうとした努力は水の泡という訳か。
しかし婚約破棄だけならまだ普通に受け入れられる、だが何故周りがそれを賛同して受け入れているのかが不思議でならない。
公爵子息の彼が王女の私に代わり養子に入り第一王子として侯爵令嬢の彼女と婚約する事も。
どうして陛下が不在の間に勝手に事を進め冤罪を掛けられ追い出され無ければならないのか。
可笑しな話だ。
「さて『元』王女、シャルロット。貴様は『現』第一王子の権限として命ずる。さっさと荷物を纏めこの国を去れ!国外追放の刑だ、処刑にならなかっただけ有難いと思うがいい」
何を言っているのだろうか、全ての決定権は陛下にあると言うのに。
理解し難い。
下手すれば反逆罪で捕まるのは彼等の方なのに。
多勢に無勢この場では幾ら私が反論したとて武力を執行し追い出すだろう。
何せ弟すら向こう側に居る。
余計に劣勢であり悔しく侮辱的であるが引くしか手は無いだろう。
「・・・」
身分が下だから屈辱的なのでは無い、有りもしない事を罪にされ勝手に国外追放にされる事に。
「じゃあ、シャルロットちゃんは俺の国に招待したるわ。其方さんは要らん様やし」
「誰だ!貴様は!!俺に挨拶も無しに発言をするなど!!!」
「・・・は?アンタこそ言葉に気ぃ付けや」
見事な黒髪、特徴のある話し方、ワインレッドの瞳に口元のほくろ。
鷲のエンブレムの刺繍が入ったマントを着こなす方は正しくあの人しか居ない。
帝国の第三皇子であり皇太子であるウー・アラン・ルイ・ヴェルコット様。
王家の礼をし頭を下げたままヴェルコット様の言葉を待つ。
彼は確かこの国に留学生として来ており卒業と共に帝国へと帰る手筈になっていたのでこの卒業パーティに参加していたとして居てもなんの問題もないが私は彼と親しくした記憶は無い。
なのに彼が私の肩を持つとは。
「顔を上げ?シャルロットちゃん。詳しくは馬車で・・・な?」
柔らかく微笑みエスコートをする形で馬車まで共にする。
その後ろからヴェルコット様の従者達が着いてくる。
その後ろから侯爵令嬢の彼女の声がしたが言葉までは届かなかった。
***
「まさかそんな・・・!!なんで皇太子がそちら側に着くの・・・!?有り得ない」
折角でっち上げの嘘でシャルロット王女を追い出して公爵子息のあの人を王子にしてその婚約者になったのに。
全然現れないからバグだと思ってずっとずっと探して待っていたのに。
シャルロット王女側に居るだなんて可笑しいわよ。
最推しだったウーと結婚して幸せになるはずだったのに。
どうなってるの!!
全てはあの女のせいだわ、きっと私と同じ転生者なのね、だから私を虐めずウーと共に去ったんだわ、そうに違いない。
なら、助け出さなくちゃ。
害虫から、だって『私の為の世界』だもん。
***
馬車に乗り込み馬車は城とは別方向へと進む。
「ヴェルコット様、この馬車は何方へ?」
「そのままヴェルコット帝国へ行くんやけど。今しかシャルロットちゃんを助けられんと思って・・・すまん、このまま聞いて?」
あの場で助けた訳、このままヴェルコット帝国に向かう理由、全て明け透けに話して伝えてもらった。
その内容は主にゲームなるものが主体らしくそこに登場する悪役王女が私でヒロインがあの侯爵令嬢だという。
公爵ルートで私が追い出される場合は一度城に戻った時居合わせた執事に逆恨みで刺された後そのまま放り出された挙句事故死に見せかけて弟が雇った暗殺者の手によって殺されるという事らしい。
にわかには信じ難いが納得出来ることも多々ある。
私は昔から色んな人に嫌われていた。
幼少期から頭脳明晰で子どもらしくなく、気味悪がられてもいた。
それの延長線と考えればそういう事なのだろう。
「不憫に思って助けたんとちゃうからな。その、一目惚れしてん、シャルロットちゃんに」
「私に一目惚れですか?」
「そん時にはもうシャルロットちゃんは婚約しとったから悔しいけど、手は出せへんくて。在学中にゲームやらなんやらの話したかて当時は信じられへんと思って今に至るんやけど遅くなってホンマにすまん」
一目惚れというだけでここまで手を貸してくれるだなんて思いもしなかった。
そもそも交流目的以外で好意自体滅多に受けることが無かった為この場合どうすれば良いのかが分からない。
先ず人として御礼を伝え無ければならないのは確か。
「いえ、助けてくださっただけで有難いです、ありがとうございます。ヴェルコット様」
「好きでやった事やし気にせんでええよ。あ、せや」
「どうしました?」
「あんな大々的に婚約破棄宣言しとったからこれはもう覆らん前提として話すわ・・・コホン、俺と結婚を前提にお付き合いしてください。俺はシャルロットちゃんと人生を共にしたい」
「・・・・・・・・・はい」
肯定の旨を伝える。
どうして彼の言葉に肯定したかは自身でも鮮明には把握していない。
だが、彼の瞳から伝わって来るのは全て本気。
目は口ほどに物を言う、この言葉を考えた人は素晴らしい。
今まで出会って来た人達の目を見ると様々な事が伝わって来る、嫌悪も欲望も、愛情すらも。
口で嘘を吐いても目を見れば分かる、利用する為でなく自らの意思で好きで伝えてくれているのだと分かる。
今はただそれに応えたい。
その一心で言葉を続ける。
「私で良ければ、よろしくお願いします」
随分と私も舐められたものだ。
国王陛下が決めた婚約であり政略結婚である為彼には恋愛感情なるものは抱かなかったがそれでも寄り添おうとした努力は水の泡という訳か。
しかし婚約破棄だけならまだ普通に受け入れられる、だが何故周りがそれを賛同して受け入れているのかが不思議でならない。
公爵子息の彼が王女の私に代わり養子に入り第一王子として侯爵令嬢の彼女と婚約する事も。
どうして陛下が不在の間に勝手に事を進め冤罪を掛けられ追い出され無ければならないのか。
可笑しな話だ。
「さて『元』王女、シャルロット。貴様は『現』第一王子の権限として命ずる。さっさと荷物を纏めこの国を去れ!国外追放の刑だ、処刑にならなかっただけ有難いと思うがいい」
何を言っているのだろうか、全ての決定権は陛下にあると言うのに。
理解し難い。
下手すれば反逆罪で捕まるのは彼等の方なのに。
多勢に無勢この場では幾ら私が反論したとて武力を執行し追い出すだろう。
何せ弟すら向こう側に居る。
余計に劣勢であり悔しく侮辱的であるが引くしか手は無いだろう。
「・・・」
身分が下だから屈辱的なのでは無い、有りもしない事を罪にされ勝手に国外追放にされる事に。
「じゃあ、シャルロットちゃんは俺の国に招待したるわ。其方さんは要らん様やし」
「誰だ!貴様は!!俺に挨拶も無しに発言をするなど!!!」
「・・・は?アンタこそ言葉に気ぃ付けや」
見事な黒髪、特徴のある話し方、ワインレッドの瞳に口元のほくろ。
鷲のエンブレムの刺繍が入ったマントを着こなす方は正しくあの人しか居ない。
帝国の第三皇子であり皇太子であるウー・アラン・ルイ・ヴェルコット様。
王家の礼をし頭を下げたままヴェルコット様の言葉を待つ。
彼は確かこの国に留学生として来ており卒業と共に帝国へと帰る手筈になっていたのでこの卒業パーティに参加していたとして居てもなんの問題もないが私は彼と親しくした記憶は無い。
なのに彼が私の肩を持つとは。
「顔を上げ?シャルロットちゃん。詳しくは馬車で・・・な?」
柔らかく微笑みエスコートをする形で馬車まで共にする。
その後ろからヴェルコット様の従者達が着いてくる。
その後ろから侯爵令嬢の彼女の声がしたが言葉までは届かなかった。
***
「まさかそんな・・・!!なんで皇太子がそちら側に着くの・・・!?有り得ない」
折角でっち上げの嘘でシャルロット王女を追い出して公爵子息のあの人を王子にしてその婚約者になったのに。
全然現れないからバグだと思ってずっとずっと探して待っていたのに。
シャルロット王女側に居るだなんて可笑しいわよ。
最推しだったウーと結婚して幸せになるはずだったのに。
どうなってるの!!
全てはあの女のせいだわ、きっと私と同じ転生者なのね、だから私を虐めずウーと共に去ったんだわ、そうに違いない。
なら、助け出さなくちゃ。
害虫から、だって『私の為の世界』だもん。
***
馬車に乗り込み馬車は城とは別方向へと進む。
「ヴェルコット様、この馬車は何方へ?」
「そのままヴェルコット帝国へ行くんやけど。今しかシャルロットちゃんを助けられんと思って・・・すまん、このまま聞いて?」
あの場で助けた訳、このままヴェルコット帝国に向かう理由、全て明け透けに話して伝えてもらった。
その内容は主にゲームなるものが主体らしくそこに登場する悪役王女が私でヒロインがあの侯爵令嬢だという。
公爵ルートで私が追い出される場合は一度城に戻った時居合わせた執事に逆恨みで刺された後そのまま放り出された挙句事故死に見せかけて弟が雇った暗殺者の手によって殺されるという事らしい。
にわかには信じ難いが納得出来ることも多々ある。
私は昔から色んな人に嫌われていた。
幼少期から頭脳明晰で子どもらしくなく、気味悪がられてもいた。
それの延長線と考えればそういう事なのだろう。
「不憫に思って助けたんとちゃうからな。その、一目惚れしてん、シャルロットちゃんに」
「私に一目惚れですか?」
「そん時にはもうシャルロットちゃんは婚約しとったから悔しいけど、手は出せへんくて。在学中にゲームやらなんやらの話したかて当時は信じられへんと思って今に至るんやけど遅くなってホンマにすまん」
一目惚れというだけでここまで手を貸してくれるだなんて思いもしなかった。
そもそも交流目的以外で好意自体滅多に受けることが無かった為この場合どうすれば良いのかが分からない。
先ず人として御礼を伝え無ければならないのは確か。
「いえ、助けてくださっただけで有難いです、ありがとうございます。ヴェルコット様」
「好きでやった事やし気にせんでええよ。あ、せや」
「どうしました?」
「あんな大々的に婚約破棄宣言しとったからこれはもう覆らん前提として話すわ・・・コホン、俺と結婚を前提にお付き合いしてください。俺はシャルロットちゃんと人生を共にしたい」
「・・・・・・・・・はい」
肯定の旨を伝える。
どうして彼の言葉に肯定したかは自身でも鮮明には把握していない。
だが、彼の瞳から伝わって来るのは全て本気。
目は口ほどに物を言う、この言葉を考えた人は素晴らしい。
今まで出会って来た人達の目を見ると様々な事が伝わって来る、嫌悪も欲望も、愛情すらも。
口で嘘を吐いても目を見れば分かる、利用する為でなく自らの意思で好きで伝えてくれているのだと分かる。
今はただそれに応えたい。
その一心で言葉を続ける。
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