まおう様、めんどくさい

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第9話 くっ…想定外だ

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第9話 くっ…想定外だ

神聖な祠の奥、祭壇に祭られたクリスタルへ、ひとすじの光が降り注いだ。
光がクリスタルを照らすと祠内に淡い光が広がり、
消えたはずの勇者の体が浮かび、形を取り戻していく。

「……ん……?」

勇者は立ち上がり、クリスタルに映った自分の姿を見た。
不思議に思った勇者はバタバタ手足を動かし、問題がないことを確認した。

「力がみなぎってくる……あれ……光ってる?」
生き返った勇者の全身がかすかに青白く光っていたが──

「う~ん、まっいいか」
勇者は大して気にもせず深く礼をして、次の目的地火山地帯へと歩き出した。

──暗黒の城。

「まおう様、勇者、また復活しました」
水晶玉を見つめながら秘書が報告する。

魔王は髪をぐしゃぐしゃにかきむしった。
「うそでしょ!? “闇で押し潰して消滅”したんだよ!?」
「祠のクリスタルが“再現の能力”を持っていたようです。」

「はぁ~あ……あれ、勇者なんかいつもと雰囲気違わない?」
「何か小奇麗になっていますね」
「まあいいか…もう、あの光る石、祠ごと封印しちゃおう。」

魔王が片手をあげると、空気がびりっと震えた。
暗黒の霧が渦を巻き、祠を包み込むように魔法陣が現れた。

ゴウン……ゴウン……。

重い音とともに、祠は黒い鎖で縛られ、壁にはひびが入った。
神々しく光っていた祠は深い地の底へ沈んでいった。

「はい、これで封印できましたね。」
秘書がメモを取りながら言う。

「ふぅ……よし!」
魔王がソファにもたれた瞬間、また報告が届いた。

「……勇者、火山地帯に入ったようです。」
「はやっ!? 移動速度上がってない!?」
「……そうだ、この前と防具が違う! 祠でパワーアップしてるじゃん!?」

魔王は頭を抱え、慌てて命令を下した。
「急いで……フレイムゴーレム送っといて。」
「了解しました。」

──火山地帯。

ゴツゴツ赤黒く光る岩肌、プシューと地面から吹き出す熱気。
勇者は汗を拭いながら進んでいた。

「あづ…ぃ…」

その時、地面がぐらりと揺れた。

「な、なんだ!?」

流れる溶岩の中から、巨大な影が現れた。
真っ赤に光る目、岩でできた山のような巨体。
その腕からは、ジュウジュウと音を立て、どろどろと溶岩が滴っている。

「ユウシャ……マオウさまノ命ニヨリ……ここデ止メル」

勇者は素早く剣を構えた。
ゴーレムが腕を振り下ろすたび、溶岩の塊が雨のように勇者を襲う。

「うわっ、……!」
勇者は必死に避けながら、ゴーレムの足元へ突き進んだ。
剣を突き刺す──が、剣先がジュウッと溶け落ちてしまう。

「なっ……!」

ゴーレムが腹の奥からうなり声を上げ、両手を地面に何度も叩きつけた。
ドゥガァァァァン!!

地面が張り裂け、真っ赤な溶岩が噴き上がる。
勇者の足元にもひびが走った。

「わ、わあああああっ!!」

足を滑らせた勇者は、噴き上がった灼熱の溶岩に全身呑み込まれてしまう。
一瞬、眩しい光が走り──そして、勇者は灰になり剣の柄だけが残っていた。

──暗黒の城。

秘書が静かに報告する。
「勇者、溶岩により完全に焼失しました。」

魔王はため息をついた。
「ふぅ…焼失……ねぇ……。まぁ、もう大丈夫でしょ?」

「そう言い切ったあと、だいたい復活してますけどね。」
「……やめて、フラグ立てないで」

魔王は頭を抱えながら、どこか遠くを見つめた。
「……もう、勇者を助けるものは出てこないよね……?」

そしてまた、“めんどくさい日”が静かに続いていった。
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