生きろ

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第3章 出生増加〜数による定着

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第3章

出生は、やがて特別な出来事ではなくなった。
泣き声は日常の音になり、記録は簡略化され、名前は後回しにされるようになった。

数が必要だった。
それは誰かが決めた方針ではなく、結果としてそうなっただけだった。

適応できなかった子供は、静かに消えた。
最初のうちは、医療区画に運ばれるたびに足を止める者もいたが、やがて通路はただの通路になった。

彼は、自分の子供の数を正確には覚えていなかった。
生まれた順番も、間隔も曖昧だった。ただ、生き残った者の顔だけは思い出せた。

成長した子供たちは、惑星の環境を当たり前のものとして受け入れていた。
軽い重力での歩き方、空気の匂い、土の色。それらは学ぶものではなく、身体に馴染んでいった。

集落は拡張され続けた。
新しい居住区が増え、古い区画は用途を変えた。墓標のようなものは作られなかった。土地は、使える形に戻されるだけだった。

彼は、時折、最初に来た頃のことを思い出した。
人数を数え、顔を覚え、減少に意味を見出そうとしていた自分のことを。

今は違った。
減ることは前提で、残ることが例外ではなくなっていた。

出生率は上がり、生存率は横ばいだった。
それでも総数は増えていった。誰もそれを疑問に思わなかった。

ある日、集落の外縁で事故が起きた。
設備の崩落で数人が失われたが、作業は翌日には再開された。補充は、生まれてくる子供たちが担った。

彼は、その現実に強い感情を抱くことはなかった。
冷静でも、残酷でもなく、ただ理解していた。

数が、環境を上書きしていく。
それは、この惑星で唯一確かな戦略だった。

夜、子供たちが集落を走り回る音を聞きながら、彼は眠りについた。
泣き声と笑い声の区別は、もうはっきりとはつかなかった。

それでも、増えていた。
確実に、次の世代は増えていた。
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