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30話 闇に潜む者との邂逅
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……頭も身体も重い。ゆっくりと目を開くと、そこは薄暗い見知らぬ場所だった。
私は確か学園の医務室で寝ていたはずなのに、ここは一体どこでしょうか……?
所々明かりが付いているけど、その明かりは小さいため全体的に暗くてよくは見えない。
辛うじて分かる壁や床のつくりから、まるで地下のようにも取れますね……。
更によく確認しようと動こうとすると、ジャラという金属音と共に、手に何かが食い込んだ。
これは鎖……私の腕は鎖で拘束されている!?
今までぼんやりしていて気付かなかったのですが、どうやら足にも金属製の枷が嵌められているようで、少し身動きを取るだけでジャラジャラと音がします。
こ、これは一体どうして……。
「おや、どうやら気が付いたようだな」
私が拘束具に気を取られていたからでしょうか。気が付くと私からやや離れた部屋の出入口付近に、見知らぬ大柄な男性の姿がありました。
「だ、誰ですか!? これは貴方の仕業なのですか!!」
あまりに不自然な状況のため警戒しつつ、またうっかり声が震えないように、虚勢も張りながらそう言うと、その男性はふっと笑って頷きました。
「ああ、そうだお嬢さん。俺が君を攫ってきた」
「それは、どうしてですか」
「駒の一つとして使えると判断した、それだけのことだ」
「駒……というのは?」
「単刀直入に言うと、君の婚約者を懐柔したくてな」
「セル様を!?」
そんな私の台詞を聞いて、その男性は「ほぅ」と声を漏らしました。
「その様子をみるに、君たちは本当に仲が良いようだな?」
「……」
「もし素直に協力してくれるのであれば、手荒なことをしないと約束しよう」
「勝手に攫ってきておいて、よくもそんなことを!!」
「ははっ、それもそうだ」
私が声を荒げているのに、その人はそんなこと関係ないかのように大声で笑いました。それはもう不気味なほどに明るく。
「いや、手荒なことをして済まなかった。なにぶんこの十数年間、真っ当な暮らしをしてこなかったもので、礼儀作法に疎くなってしまったようだ」
「それは一体どういう意味……」
「では改めて紳士的に名乗らせて貰おうか」
そう言って、今まで遠くにいた男性はようやく私の目の前まで歩み出て来ました。
元々分かっていた通り、がっしりとした高身長の男は近づかれると、それだけで威圧感があります。
そうして薄ぼんやりとした暗がりの中、照らし出された容姿は、まず左目の黒い眼帯に目が行きました。そして年齢は四十代前後といったところで、やや浅黒い肌に、精悍で整っているように見える顔立ちなのに、どこか仄暗く気味の悪い雰囲気を漂わせていました。
アイスグレーの眼に、ややくすんだ色の金髪は、その仄暗い雰囲気を更に後押ししているような気にさせます。……待って、金髪ですって。
あることに気づいて戸惑う私を知ってか知らずか。目の前までやってきた、その男は恭しく跪いて胸の前に手を当てる、貴族のする礼を取った。
そう、まるでセル様が王子や婚約者として接する際に、私にそうするのと同じように。
「お初にお目にかかる、カルア侯爵家のご令嬢。わたくしはカネフォーラ・レオ・アムハル。この国の王家に連なるものであり、貴様らが仰ぐ王に事実上亡き者にされた男だ」
……そう、この世界において、金髪は王家の血筋である証。つまりこの男は王族で間違いない。
そうして顔を上げたカネフォーラは、ニヤリと私に笑いかけたのでした。
私は確か学園の医務室で寝ていたはずなのに、ここは一体どこでしょうか……?
所々明かりが付いているけど、その明かりは小さいため全体的に暗くてよくは見えない。
辛うじて分かる壁や床のつくりから、まるで地下のようにも取れますね……。
更によく確認しようと動こうとすると、ジャラという金属音と共に、手に何かが食い込んだ。
これは鎖……私の腕は鎖で拘束されている!?
今までぼんやりしていて気付かなかったのですが、どうやら足にも金属製の枷が嵌められているようで、少し身動きを取るだけでジャラジャラと音がします。
こ、これは一体どうして……。
「おや、どうやら気が付いたようだな」
私が拘束具に気を取られていたからでしょうか。気が付くと私からやや離れた部屋の出入口付近に、見知らぬ大柄な男性の姿がありました。
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あまりに不自然な状況のため警戒しつつ、またうっかり声が震えないように、虚勢も張りながらそう言うと、その男性はふっと笑って頷きました。
「ああ、そうだお嬢さん。俺が君を攫ってきた」
「それは、どうしてですか」
「駒の一つとして使えると判断した、それだけのことだ」
「駒……というのは?」
「単刀直入に言うと、君の婚約者を懐柔したくてな」
「セル様を!?」
そんな私の台詞を聞いて、その男性は「ほぅ」と声を漏らしました。
「その様子をみるに、君たちは本当に仲が良いようだな?」
「……」
「もし素直に協力してくれるのであれば、手荒なことをしないと約束しよう」
「勝手に攫ってきておいて、よくもそんなことを!!」
「ははっ、それもそうだ」
私が声を荒げているのに、その人はそんなこと関係ないかのように大声で笑いました。それはもう不気味なほどに明るく。
「いや、手荒なことをして済まなかった。なにぶんこの十数年間、真っ当な暮らしをしてこなかったもので、礼儀作法に疎くなってしまったようだ」
「それは一体どういう意味……」
「では改めて紳士的に名乗らせて貰おうか」
そう言って、今まで遠くにいた男性はようやく私の目の前まで歩み出て来ました。
元々分かっていた通り、がっしりとした高身長の男は近づかれると、それだけで威圧感があります。
そうして薄ぼんやりとした暗がりの中、照らし出された容姿は、まず左目の黒い眼帯に目が行きました。そして年齢は四十代前後といったところで、やや浅黒い肌に、精悍で整っているように見える顔立ちなのに、どこか仄暗く気味の悪い雰囲気を漂わせていました。
アイスグレーの眼に、ややくすんだ色の金髪は、その仄暗い雰囲気を更に後押ししているような気にさせます。……待って、金髪ですって。
あることに気づいて戸惑う私を知ってか知らずか。目の前までやってきた、その男は恭しく跪いて胸の前に手を当てる、貴族のする礼を取った。
そう、まるでセル様が王子や婚約者として接する際に、私にそうするのと同じように。
「お初にお目にかかる、カルア侯爵家のご令嬢。わたくしはカネフォーラ・レオ・アムハル。この国の王家に連なるものであり、貴様らが仰ぐ王に事実上亡き者にされた男だ」
……そう、この世界において、金髪は王家の血筋である証。つまりこの男は王族で間違いない。
そうして顔を上げたカネフォーラは、ニヤリと私に笑いかけたのでした。
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