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1話:嵐
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暗い闇に包まれた深い森。
激しい雨が樹木と地面をたたいている。
蛇のように曲がりくねった峠道。
大きなカーブを眩しいヘッドライトの光の柱が、左右に揺れながら闇を照らしている。
カーブの合間の直線。よくある会社のよくある営業車のような白いバンがタイヤを鳴らして駆け抜る。大量の雨粒をまき散らしながら。その直後、大型の黒いワンボックスカーが続けざまに2台、どう猛な獣のように、白いバンを追いかけている。
セダンの車内では銀ぶちの眼鏡をかけた安田。肩に力が入っていて、ハンドルを握りつぶすほど強くにぎっている。
「はあ、はあ」と息が荒い。
後部座席には妻の美代子、息子の陽介。
美代子はノーメイクにパジャマとコートという姿。小学3年生の陽介は涙をためて美代子の腕にしがみついている。
安田はバックミラーをちらっとのぞき、美代子と陽介の様子を見る。
「陽介…大丈夫だ…もう恐がらなくて」
大きなカーブを曲がった先に比較的、樹木の生えていない、くぼんだ場所があった。
安田はその場所に車を飛び込ませ、急ブレーキを踏んだ。
バリバリバリー!という音を立てる。車が大きく揺れて後部座席の美代子と陽介は互いに強く抱き合った。
安田は即座にヘッドライトを消してバックミラーを息を殺して見つめた。
「どうだ…あいつら…これで…まけるか」
美代子と陽介は後部座席で身をかがめている。
ブロロロー!
という音と共に追いかけてきた黒い2台のワンボックスは猛スピードで、安田の隠れている窪地の前を走り抜けた。
それを慎重に目で追う安田。2台のワンボックスのテールランプが遠く見えなくなるまで息を潜めていた。
「ふ。なんとかまいたかな」
そういって後部の妻を振り返った瞬間。
車がフッと宙に浮いた…1メートルほど。
驚いた安田と美代子、陽介は周囲を見渡した。
「うっ!どうした?」
急いでヘッドライトをつけた。
ライトの明かりでひとりの男のシルエットが浮かび上がる。
ロングコート、シルクハット、傘はさしていない。そのマジシャンのような影の後ろには、数人の男女が傘もささずに立っている。
シルクハットの男は胸ポケットから小さな箱を取り出す。マッチ棒のような木を一本、その木を箱にこする。プシュッ!という小さな音と共に、その棒に火をつけた。不思議なことに豪雨のなかで、小さな明かりは燃え盛り、ハンドボール程の炎になった。
男はマッチ棒を放り捨て、宙に浮く炎を両手に乗せて、夜空に放りあげる。辺りは明るくなり、男は浮いている林の車に両手を向けた。そして車を掴むような仕草をして、天に放る。
車は勢いを増して5メートルほど上空に飛んだ。さらに男は押し出すような手ぶりをした。すると山側とは反対側に車が飛んでいき、巨大なダム湖にバシャー!と大きな音と水しぶきをたてて落下した。
「わぁ!」
小林明日香はソファーから飛び起きる。
まただ。あの夢。いつのまにか眠りながら涙を流していたようで頬が濡れている。
激しい雨が樹木と地面をたたいている。
蛇のように曲がりくねった峠道。
大きなカーブを眩しいヘッドライトの光の柱が、左右に揺れながら闇を照らしている。
カーブの合間の直線。よくある会社のよくある営業車のような白いバンがタイヤを鳴らして駆け抜る。大量の雨粒をまき散らしながら。その直後、大型の黒いワンボックスカーが続けざまに2台、どう猛な獣のように、白いバンを追いかけている。
セダンの車内では銀ぶちの眼鏡をかけた安田。肩に力が入っていて、ハンドルを握りつぶすほど強くにぎっている。
「はあ、はあ」と息が荒い。
後部座席には妻の美代子、息子の陽介。
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安田はバックミラーをちらっとのぞき、美代子と陽介の様子を見る。
「陽介…大丈夫だ…もう恐がらなくて」
大きなカーブを曲がった先に比較的、樹木の生えていない、くぼんだ場所があった。
安田はその場所に車を飛び込ませ、急ブレーキを踏んだ。
バリバリバリー!という音を立てる。車が大きく揺れて後部座席の美代子と陽介は互いに強く抱き合った。
安田は即座にヘッドライトを消してバックミラーを息を殺して見つめた。
「どうだ…あいつら…これで…まけるか」
美代子と陽介は後部座席で身をかがめている。
ブロロロー!
という音と共に追いかけてきた黒い2台のワンボックスは猛スピードで、安田の隠れている窪地の前を走り抜けた。
それを慎重に目で追う安田。2台のワンボックスのテールランプが遠く見えなくなるまで息を潜めていた。
「ふ。なんとかまいたかな」
そういって後部の妻を振り返った瞬間。
車がフッと宙に浮いた…1メートルほど。
驚いた安田と美代子、陽介は周囲を見渡した。
「うっ!どうした?」
急いでヘッドライトをつけた。
ライトの明かりでひとりの男のシルエットが浮かび上がる。
ロングコート、シルクハット、傘はさしていない。そのマジシャンのような影の後ろには、数人の男女が傘もささずに立っている。
シルクハットの男は胸ポケットから小さな箱を取り出す。マッチ棒のような木を一本、その木を箱にこする。プシュッ!という小さな音と共に、その棒に火をつけた。不思議なことに豪雨のなかで、小さな明かりは燃え盛り、ハンドボール程の炎になった。
男はマッチ棒を放り捨て、宙に浮く炎を両手に乗せて、夜空に放りあげる。辺りは明るくなり、男は浮いている林の車に両手を向けた。そして車を掴むような仕草をして、天に放る。
車は勢いを増して5メートルほど上空に飛んだ。さらに男は押し出すような手ぶりをした。すると山側とは反対側に車が飛んでいき、巨大なダム湖にバシャー!と大きな音と水しぶきをたてて落下した。
「わぁ!」
小林明日香はソファーから飛び起きる。
まただ。あの夢。いつのまにか眠りながら涙を流していたようで頬が濡れている。
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