異世界サウナ。ととのえばととのうほど強くなる勇者がサウナの力で無双する。~能力を恐れた魔王軍が全裸の時に攻めてくるので、全力でもてなします~

倉紙たかみ

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第47話 緊急事態宣言!

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「うふふふっ……ふふっ……あーっはっはっはっはッ!」

 翌日。ウルフィの屋敷の会議室。

 大勢のダークエルフが列席する中、彼女は高らかに笑い、勝利を確信する。

「――勝ちましたわッ!」

 トーレスは負けたが、ホーリーヘッド温泉を崩壊させた。修復する資金などないだろう。これからの富裕層は、すべてウルフィの店を利用してくれる。

 黒字に転じた瞬間、今度はベイルの息のかかったサウナ施設も買収してやろう。そうすることで、この国の経済を牛耳る。人間共も、所詮は金で動くのだ!

「ラングリードも、ベイルも、陥落するのは時間の問題ッ! ようやく、我らダークエルフの時代がきましたわ!」

 同志たちも確信したのか、パチパチと称賛の拍手が巻き起こる。

「ふふ、しかし最後まで油断しません。昨晩の噴火で、お客様たちを驚かせてしまったことでしょう。アフターケアのためのサービスを――」

 と、話を始めようとしたところで、ドアの向こうが騒がしくなる。

『な、なんだおまえは! いま、ウルフィ様は会議中ッ、ああッ――!』

 バダンッ! 扉が豪快に開かれた。
 ――そして、現れたのはベイルだった。

「あらあら。ベイル様。朝早くからどうなされました?」

 怖い顔だ。頼みの綱の温泉を崩壊させられた憤りを感じているのだろう。けど、ウルフィが指示したという証拠はない。あくまで、アレは厄災。

「昨晩は……大変だったな。同業者として、慰問にきてやったぜ」

 そう言って、温泉まんじゅうをテーブルへと投げつけるベイル。

「ええ、そちらこそ。大変だったようで……なんでもホーリーヘッド温泉が、完全に崩壊してしまったとか」

「ああ。あれは大きな痛手だった。けど、悪いニュースばかりじゃなかった」

「へえ、なにか良いことでもありました?」

「……おまえ、朝刊を読んでないのか?」

 そう言うと、彼はわざとらしく懐から新聞を取り出して、放り投げた。ウルフィが、それに視線を落とす。

「へ……? え? こ、これは……ッ?」

 新聞の見出しが視界に入った次の瞬間、彼女は新聞を手に取り真剣に見やる。そして、思わず目を丸くした。

 ――人間快挙! 魔王軍相手に連戦連勝!

 驚くウルフィを横目に、ベイルが説明してくれる。

「世界中の軍が動きだして、魔王軍を次々と撃破しているらしい。いやぁ、人間もがんばってんだな」

「……ど、どういうこと」

 世界各国にある魔王軍の拠点が、次々に陥落しているという記事。まさに破竹の勢いで勝利を重ねている。

「くくっ。どういうことかはサッパリわからねぇが、魔王軍は資金難みたいだぜ。魔物たちは腹を空かせているのか、すっげえ士気が低いんだとよ。装備も貧弱。拠点の守りも疎かだそうだ。いやあ、ラッキーだな」

「そ、そんな……」

「どうした? 顔色が悪いぜ、ウルフィ」

 ――ヤバい。金を使いすぎた。

 資源や資金をここに集結させたせいで、魔王軍本来の運営が立ちゆかなくなっている。ウルフィの見立てでは、しばらく人間共は攻めてこないと踏んだのだが――。

「うちにはプリメーラがいるからな。あいつが、おまえの考えを上手く読んでくれたんだよなぁ。人間が攻めてこないとでも思ったか? ウルフィ」

「プリメーラが……」

「おっと、悪い。おまえは魔王軍とは関係なかったんだったっけ。じゃあ、おまえにとっても、この新聞の記事は吉報だよな? ――なぁ?」

 わざとらしく笑みを浮かべて、鼻息のかかる距離にまで詰め寄るベイル。

 ――こいつは、最初からコレを狙っていたのか。

 ウルフィに経済戦争を仕掛けることによって、魔王軍の資金を枯渇させた。つまり、ラングリードは『おとり』だ。そのうちに世界各国が軍を動かして、魔王軍の拠点を次々に制圧してしまったのだ。

 そう考えると、ベイルの無茶な経営も頷ける。たしかに、世界各国の魔王軍は資金難。噂では、魔王ですら土を食って飢えを凌いでいるという始末。

 ――しかし、戦いはまだ終わっていない。

 ベイルさえ潰せば、魔王軍は息を吹き返す。このラングリードを拠点に資金を再調達することだってできる。

「よ、喜ばしいことじゃあないですか。世界の平和は、我々ダークエルフも望むところです。しかし、ベイル様はいかがなさるおつもりですか? 頼みのホーリーヘッド温泉が壊滅してしまったのでしょう?」

「ああ、アレは痛かったなぁ……。しかも、さっき国から通達があってな。これからは経営どころじゃなくなっちまいそうだ」

「……国からの通達?」

 ベイルが困り果てたようにつぶやくと、扉の向こうからフランシェがやってくる。

「――私から説明いたしましょう」

「フランシェ……様……? どうかなさいましたか?」

「昨晩の襲撃により、火山が噴火。魔物の残党も逃してしまいましたがゆえ、周辺の警戒をより一層、強めねばなりません――」

「騎士団の方々には、ぜひともがんばっていただきたいものです」

「――よって、ラングリード政府は、これからしばらくの間『緊急事態宣言』を発令することに決定いたしました」

「……はい?」

 ――きんきゅうじたいせんげん?
 なにそれ?

「明日、この町をロックダウンいたします。それまでに、滞在している観光客は、町に滞在するか、それとも帰国するかの判断を迫られます。ロックダウン後は、外部からの観光客の受け入れを拒否いたします」

「そ、そんなバカな話がありますか! そんなことをしたら、この町の経済が崩壊いたします!」

「崩壊……たしかに、国民の方々にはご迷惑をおかけしますが、経済よりも人命が優先されます。微々たる額ですが、町の観光施設や飲食店には、持続化給付金をお配りいたしますので、それでどうかご辛抱を」

「じ、持続化給付金? そ、それはおいくらほどですか?」

「1日6万ゴールドです」

「ろ、6万……? そ、そんな額では、我々みたいな大型店はやっていけません! そんな配り方をするような国など存在しません!」

「たしかに、ありえない采配かもしれません……しかし、未曾有の危機ですので、どうか国民の皆様にはご理解いただきますようお願いいたします」

「そ、そんな……」

「あと、火山灰が空気を悪くしていますので、各家庭にマスクを2枚ずつ支給します。当面は、それで凌いでいただきます」

 ウルフィは富裕層の観光客向けである。ロックダウンをしたら、お客の数は激減。だからといって、いまさら庶民向けの改築なんて、できるわけがない。

「火山と魔王軍が収まれば、すぐに経済は再開するさ。お互い大変かもしれないけど、なんとか乗り切ろうぜ――」

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