大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ

文字の大きさ
5 / 55

第5話 魔王の残骸

しおりを挟む
「……ご、ごめんなさい……」

 とりあえず、俺は栗毛の女性を落ち着かせる。

 気まずそうに、ちょこんとソファへと腰掛ける彼女。ククルが彼女のぶんも珈琲を淹れてくれたのだけど……ものすごく睨んでいる。射殺さんほどの眼光を向けている。隙あらば殺そうとしているのかもしれない。

 おい、その珈琲を迂闊に飲むなよ。何が入っているかわからないぞ。ククルは、俺に対する不審人物には厳しいんだから。

「――それで、いったいどういうことなんだ? いきなり結婚なんて」

「私はミトリ・コラットルといいます。血縁上は、テスラ様の従姉妹になります」

 シルバンティア領の西の方にある小さな町を治めているコラットルさんとやらの娘らしい。社会勉強のために、テスラの仕事を手伝っている。要するに貴族令嬢で、俺と似たような境遇のようだ。

「なんで、それが結婚に繋がるんだ?」

「……お父様が私の結婚相手を探しているんです。このままだと、見知らぬ相手と結婚させられそうで――」

 社会勉強のために、都会であるこのバルティアへとやってきたミトリお嬢さん。そんなうちに彼女の父は、いい年頃になった娘の婿を勝手に探し始めたわけだ。貴族ともなれば政略結婚など当たり前なのだが、彼女は承服しかねるらしい。

「なにか困ることでもあるのですか?」

 ククルが問いかける。

「お父様の紹介してくださるお相手というのが、どうも私には合わなくて……」

 候補を見つけては、お見合い写真を送ってくるそうなのだが、その相手が……なんというか万人受けしない容姿の方や、良くない噂の人物だったりとか――権力はともかく、できればご遠慮したい人たちばかりのようだ。まあ、ちょっとわかる気がする。ミトリは容姿端麗。というか凄くかわいい。

 歯に衣着せぬ言い方をすると、権力の弱い者が美人の娘を持つと『高値を付ける』ことがある。『金』と『権力』の代わりに『美人』の娘を提供するというわけだ。

 容姿のあまり良くない方や、あまり噂のよろしくない人物も、自分が結婚相手に難儀しているのを自覚しているので、他家よりも高い対価を用意してくださる。そんなわけで、営業熱心な親父・コラットルさんは、そういった貴族を探すことに奔走。

「ちなみに……お相手は……?」

「ええと、ミガリア様とか、ケーライ様とか、スピネイル様とか、スイートグラン様とか……」

 うん、俺でも評判を聞いたことあるぐらいヤバい奴らだ。ミガリアは78歳のおじいちゃんでド変態貴族。いまでは隠居して、家の金を使い女と遊びまくっている。そのせいで評判も下がり、息子も金の工面で青くなっているとか。

 ケーライは馬潰し伯爵と呼ばれる巨漢である。身長2メートル。体重は300キロを自称しているが、たぶんもっとある。要するに超太っちょ。その横幅のせいで、屋敷を改造した。

 スピネイルは、この中ではマシかな。陛下の信頼が厚い公爵様で『魔王の残骸』のひとつ預かっている。魔王の残骸とは、魔王を倒したあと、どうしても消滅できなかった魔王のパーツである。『目』『心臓』『腕』『足』『耳』の五つあって、心臓は我らが国王陛下が所有されている。残るパーツは、陛下が認めた4人の貴族に与え、未来永劫護るように命じてあるのだ。

 スピネイルは、そのうちの『目』を預かっている。魔物を操る魔法を使えるので、魔侯爵とか言われている。魔物の産業に力を入れていて、魔物を使った実験を繰り返している。残忍な領主だという噂だ。

「スイートグランは知らないな。ククル、聞いたことあるか?」

「……辺境の男爵様ですね。妻が二十人いたことで有名です」

「二十人って凄いな? っていうか、過去形?」

「はい、過去形です。スイートグラン様に嫁いだ女性は、すべて半年以内に謎の死を遂げていますので……」

 なにそのヤバい貴族様。飽きたら始末してるの? それとも呪われてるの? 誰かに恨まれてるの? そんなところに嫁いだら確実に死ぬじゃねえか。

「けど、義理を重んじる方で、相手の御家には、それはそれは凄まじい額の結納金が……」

「いやいや! そういう問題じゃないだろ!」

「そうなんですよ! このままじゃ、どこに嫁がされるのかわかりませーん! だから、急いで旦那さんを見つけなきゃいけないんです!」

 なんという切実な状況。ミトリの気持ちはすっげえわかる。

「けど、なんで俺?」

「テスラお姉ちゃんに聞きしました! リーク様は、強くて、凜々しくて、頭が良くて、優しくて、勇猛で、勇気があって、それはもう、素晴らしい御方だと!」

 テスラがそんなこと言うか? 強いという評価はもらえてそうだが、それ以外はミトリの思い込みではないでしょうか? 俺、フツメンだけど。

「これはもう運命の出会いです! リーク様こそ、私を救ってくれる救世主だと思いました!」

 テーブルを乗り越えんばかりに、ずいと詰め寄るミトリ。

「――自分が助かりたいためだけに、リーク様の人生を奪うというのは……少しわがままが過ぎると思いますが?」

 軽蔑のまなざしで見つめるククル。うん、彼女は俺のお姉ちゃん的存在。俺の結婚に対しては、ガンコ親父の如く厳しいよね。うちの弟はやらん! っていうか。

「も、もちろんリーク様の人生も考えています! 政略結婚に熱心な父の教育の賜で、お嫁さんスキルは高いです! 料理も洗濯もお掃除も得意なんですから!」

「それ、私がいれば事足りるのですが?」

 ククルが一刀両断。うん、貴族の嫁さんに家事スキルはさほどいらない。メイドで十分。しかも、ククルはその点に関して超ハイスペック。

「人を使うことがもできます! 使用人と一緒に、屋敷のお仕事をがんばれます!」

「私は13歳の時にはすでにメイド長をしていましたが?」

 人をまとめる力に関してもククルは優れている。13歳の時、親父がふざけて彼女に一日メイド長をやらせてみたら、これが見事に大成功。幼いながらに仕事はできるし、人に甘えることも、仕事をお願いすることも上手かった。

 気がつけば、屋敷のメイドたちはククルに従っていた。お礼を言うのも上手いので、みんなほくほく顔で楽しく仕事をするようになっていた。そのままメイド長に就任した。前任者は、人を叱ってばかりの嫌味なおばさんだったので、失脚した。いや、失脚したどころか、心を入れ替えククルの配下となった。

「マナーも完璧です! 裁縫もできます! お花の名前もたくさん知っています! 魔物の名前も知っています!」

「リーク様に恥を掻かさないよう、マナーが完璧なのはメイドとして当然です。裁縫も得意中の得意。馬に乗りながらリーク様のお召し物を縫ったことがあります。お花の名前や魔物の名前など、知っているどころか、図鑑の説明文ごと暗記していますが?」

「こ、こう見えても強いです! シルバリオル家の血を引いていますが、その中では魔法が得意な方なんです! そ、そう! 天才だったんです!」

「リーク様を御守りするのなら、強いことぐらい当然でしょう。私も、強いですよ? そもそも、リーク様に護衛など必要ないでしょうけど」

 うん、ぶっちゃけると貴族のお嫁さんって、あまりスキルいらないのよ。社交スキルがそこそこあればいいだけなのよ。だから容姿が重視されるんだよね。御家繁栄のために政略結婚などに使われるんだよね。

「う、うううう、りぃくさぁぁぁん……」

 半泣きになりながらすがってくるミトリ。うん、貴族なんだから、家事スキルでメイドと張り合わなくてもいいじゃないか。

「こ、こうなったら、決闘です! どっちがリーク様に相応しいか、勝負です」

「なんで、おまえたちが決闘する必要が――」

「いいでしょう。勝った方がリーク様と結婚できるのですね」

「ククルも、なんで乗り気なんだよ! 俺は結婚しないぞ! まだ早い!」

「よっしゃ、なのです! 表へ出ろ、なのです!」

「人の話を聞け!」

 なんか、変なことになってきたぞ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ

のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
 リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。  目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。

処理中です...