29 / 55
第28話 天才と天才の駆け引き
しおりを挟む
「あ、あの、それなんすか?」
「土産だ。採石場にあったのを持ってきた」
ひょいと投げる獅子姫様。ダルコニア石が、ズシンと地面に落下する。まるでヤスリでもかけたかのようになめらかで綺麗だ。
テスラの凜々しく美しいお顔に男性たちはときめき、はたまた男前な行為に女性たちはうっとりする。さすがは領主にして町一番の人気者である。
「リーク・ラーズイッド。そして、シルバリオルの民たちよ。日々の仕事、まこと大儀である。このプロジェクトは、我らが世界に名を馳せるための一大事業だ。一丸となって働いてくれることを、この上なく嬉しく思う」
「ありがとうございます」
俺が恭しく跪くと、町の人たちも倣った。テスラが、懐から布袋を取り出し、俺へと投げつける。キャッチして中身を覗くと、そこにはピカピカの金貨が大量に入っていた。
「それは、民への労いだ。今宵は、それで贅沢をさせてやれ。仕事に関わった人間と、その家族すべてだ。いや、この際だ。この仕事に関わっていると思う人間なら、自己申告で誰でもヨシ! とにかく、英気を養ってくれ」
これ、たぶん100万ルクぐらいあるぞ。マジか。
「ありがとうございます。――みんな、今夜は宴だ! ククル! 会場の手配を頼む」
「かしこまりました」
「うおおおおぉぉぉッ!」「テスラ様万歳! 万歳!」「さすがはテスラ様!」「我々、リーク様と共に、粉骨砕身がんばります!」「感謝いたします!」
凄えな。うちの主。こんなことをしたら、さらに労働力が集まるぞ。
「――おい」
テスラが指を鳴らして合図する。すると、親衛隊と思しき連中が、いくつもの鞄を抱えて現れた。そして、彼らは鞄を開け、逆さまにする。中から大量の金貨がじゃらじゃらと流れ出ていく。次々に鞄が開かれ、やがて俺の目の前に金貨の山が現れた。
「こ、これは……」
「1億ルクある。言っておくが、民の税金ではないぞ。れっきとした私財だ。これで城壁に私の名前を刻め。誰よりも高くだ」
なるほど、さっきのピカピカなダルコニア石は、そのために持ってきたのか。
「本気ですか?」
私財から1億……。どうやら、俺の働きを認めてくれたようだ。ちょっと嬉しくなる。けど、俺は侮辱されたことを忘れていない。ここらでちょっと意地悪させてもらおう。
「どうした、リーク。不満か?」
俺は、笑みを浮かべる。
「天下の領主であるテスラ様にして少ないですね。歴史的建造物の頂点に名前を刻むのですよ? それが1億とは……テスラ様にとって、城壁の価値はこの程度ですか?」
きょとんとするテスラ。けど、次の瞬間、彼女も悟ったようだ。同じように笑みを浮かべる。頭のいい領主で助かる。
「くくっ。たしかに、ケチな買い物をするところだった。ならば10倍。――10億で頼もうか」
「じゅ――」「マジか……」「この城壁に、それほどの価値が」「やっぱり、テスラ様も本気なんだ」「歴史に残るぞ」「凄いわ!」
カリスマ領主が値段を付ければ、それが今後の基準となる。一気に値段を上げることができる。テスラは、それを察したのだろう。ゆえに先行投資。大金を使えば、それだけ多くの金が集まる。そして、より堅牢な城壁ができる。さらに繁栄もする。やっぱ凄いな、テスラは。
――でも、すぐには払えないから詭弁を尽くす。違うかな?
「しかし、まだプロジェクトは始まったばかりだ。この建築が本当に歴史的建造物になるかどうかは、リークの手腕にかかっている。完成を見てから、決めさせてもらおうか。その1億は手付けだ。この私に残りの9億を出させてみろ」
「もちろんです。その9億は、もちろんテスラ様のお財布からですよね?」
「無論だ」
さすがはテスラだ。いかにシルバリオル家とはいえ、いきなり10億ルクも用意することなどできまい。だが、完成は10年後。彼女は、おそらくそれまでに国を豊かにして、私財を増やせると踏んだのだろう。
狐だ。いや、賢王だ。領主自らが、大金を払うことによって、それだけの価値があると民に示している。この出来事は、かならず噂になる。そして、明日の新聞には必ず掲載される。
「いいか! 必ずや偉大な城壁をつくりあげろ。完成したあかつきには、臣民一体となって喜びを分かち合おう! シルバリオルは、必ずや世界最高の町となる! そして、その礎をおまえたちが築くのだ!」
民たちが、一斉に湧き上がる。町中から、何事かと人々が集まってくるのであった。
「土産だ。採石場にあったのを持ってきた」
ひょいと投げる獅子姫様。ダルコニア石が、ズシンと地面に落下する。まるでヤスリでもかけたかのようになめらかで綺麗だ。
テスラの凜々しく美しいお顔に男性たちはときめき、はたまた男前な行為に女性たちはうっとりする。さすがは領主にして町一番の人気者である。
「リーク・ラーズイッド。そして、シルバリオルの民たちよ。日々の仕事、まこと大儀である。このプロジェクトは、我らが世界に名を馳せるための一大事業だ。一丸となって働いてくれることを、この上なく嬉しく思う」
「ありがとうございます」
俺が恭しく跪くと、町の人たちも倣った。テスラが、懐から布袋を取り出し、俺へと投げつける。キャッチして中身を覗くと、そこにはピカピカの金貨が大量に入っていた。
「それは、民への労いだ。今宵は、それで贅沢をさせてやれ。仕事に関わった人間と、その家族すべてだ。いや、この際だ。この仕事に関わっていると思う人間なら、自己申告で誰でもヨシ! とにかく、英気を養ってくれ」
これ、たぶん100万ルクぐらいあるぞ。マジか。
「ありがとうございます。――みんな、今夜は宴だ! ククル! 会場の手配を頼む」
「かしこまりました」
「うおおおおぉぉぉッ!」「テスラ様万歳! 万歳!」「さすがはテスラ様!」「我々、リーク様と共に、粉骨砕身がんばります!」「感謝いたします!」
凄えな。うちの主。こんなことをしたら、さらに労働力が集まるぞ。
「――おい」
テスラが指を鳴らして合図する。すると、親衛隊と思しき連中が、いくつもの鞄を抱えて現れた。そして、彼らは鞄を開け、逆さまにする。中から大量の金貨がじゃらじゃらと流れ出ていく。次々に鞄が開かれ、やがて俺の目の前に金貨の山が現れた。
「こ、これは……」
「1億ルクある。言っておくが、民の税金ではないぞ。れっきとした私財だ。これで城壁に私の名前を刻め。誰よりも高くだ」
なるほど、さっきのピカピカなダルコニア石は、そのために持ってきたのか。
「本気ですか?」
私財から1億……。どうやら、俺の働きを認めてくれたようだ。ちょっと嬉しくなる。けど、俺は侮辱されたことを忘れていない。ここらでちょっと意地悪させてもらおう。
「どうした、リーク。不満か?」
俺は、笑みを浮かべる。
「天下の領主であるテスラ様にして少ないですね。歴史的建造物の頂点に名前を刻むのですよ? それが1億とは……テスラ様にとって、城壁の価値はこの程度ですか?」
きょとんとするテスラ。けど、次の瞬間、彼女も悟ったようだ。同じように笑みを浮かべる。頭のいい領主で助かる。
「くくっ。たしかに、ケチな買い物をするところだった。ならば10倍。――10億で頼もうか」
「じゅ――」「マジか……」「この城壁に、それほどの価値が」「やっぱり、テスラ様も本気なんだ」「歴史に残るぞ」「凄いわ!」
カリスマ領主が値段を付ければ、それが今後の基準となる。一気に値段を上げることができる。テスラは、それを察したのだろう。ゆえに先行投資。大金を使えば、それだけ多くの金が集まる。そして、より堅牢な城壁ができる。さらに繁栄もする。やっぱ凄いな、テスラは。
――でも、すぐには払えないから詭弁を尽くす。違うかな?
「しかし、まだプロジェクトは始まったばかりだ。この建築が本当に歴史的建造物になるかどうかは、リークの手腕にかかっている。完成を見てから、決めさせてもらおうか。その1億は手付けだ。この私に残りの9億を出させてみろ」
「もちろんです。その9億は、もちろんテスラ様のお財布からですよね?」
「無論だ」
さすがはテスラだ。いかにシルバリオル家とはいえ、いきなり10億ルクも用意することなどできまい。だが、完成は10年後。彼女は、おそらくそれまでに国を豊かにして、私財を増やせると踏んだのだろう。
狐だ。いや、賢王だ。領主自らが、大金を払うことによって、それだけの価値があると民に示している。この出来事は、かならず噂になる。そして、明日の新聞には必ず掲載される。
「いいか! 必ずや偉大な城壁をつくりあげろ。完成したあかつきには、臣民一体となって喜びを分かち合おう! シルバリオルは、必ずや世界最高の町となる! そして、その礎をおまえたちが築くのだ!」
民たちが、一斉に湧き上がる。町中から、何事かと人々が集まってくるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
社会の底辺に落ちたオレが、国王に転生した異世界で、経済の知識を活かして富国強兵する、冒険コメディ
のらねこま(駒田 朗)
ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる