女子高生ですが、アイドルになるためヤクザと徹底抗戦することにしました。お嬢様学校の炎上王子が忍者やサイコパスと一緒にアイドルを目指す。

倉紙たかみ

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第5話 青春リベンジは痛すぎる

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 突如現れた特攻服の集団を眺めがなら、和奏は「社長。知り合いっすか?」と、冷静に尋ねる。

「スカしてられる度胸だけは、褒めてやるよ。――極道時代の名残っつーか……学生時代かな? 特服だし。きっと昔の衣装を持ち出して、青春リベンジだ。痛すぎて涙が出てくる」

 図星だったのか、狼狽する特攻服集団。

「う、ぐ……うるせぇッ! おまえら! 積年の恨みを晴らす時だぞ!」

「うおおおぉぉおぉぉぉぉッ!」

 吠える痛々しい大人たち。完全に火が点いてるし、問答無用で喧嘩する気のようだ。

「おまえ、名前なんだっけ?」

「和奏っすよ。秋野和奏。覚えといてくださいね」

「バカナか。よし、俺の代わりにこいつらを始末しろ。殺してもかまわねえ。出所したら、うちの筆頭アイドルにしてやる」

「嫌っす。刑務所から出てくる頃には、アイドルとしての旬は終わってますもん」

「なにをさっきからいちゃついとるんじゃぁッ!」

 チンピラがいきりたつ。ポケットから警棒を抜く。有無を言わさず向かってくる。

「酷え話だよな。カタギになって心を入れ替えたってのに……こうやって喧嘩をふっかけてくるバカがいる――」

 京史郎は、テーブルを派手に蹴り上げる。それは、チンピラを派手に巻き込んで吹っ飛んでいく。進路上にいた何人かも一緒に、廊下まで飛んでいった。

「あ……が……」

 悶絶するチンピラたち。テーブルの下に隠れていた穂織は、ゴキブリのような動きで、今度はソファの背後へと身を隠す。

「か、囲め!」
「捕まえろ!」
「刺せ!」
「殺す気で行け!」

 迎え撃つ京史郎。彼の動きは、まるで無駄がない。ジャブは正確、顎に当てれば一撃で仕留めることができる。それを警戒している相手なら、ボディに右ストレート。キックは重く、ガードごと吹っ飛ばす。

 さらには金的。痛みのほどを和奏は知るよしもないが、自分にちんちんがはえていなくてよかったと思えるぐらいだと、知識としてある。

「強え……」と、和奏は思わずつぶやいた。

 格闘技をやっているような動きではない。構えも適当。残心もない。だが、シンプルに身体能力が高く、抜群にセンスが良い。そして速い。相手が刃物を持っていたとしても、食らうよりも早く攻撃を当てる。リーチの差も速さで補えている。

 そしてパワー。彼の標準的な肉体の中には、凄まじいほどの筋肉が搭載されているに違いない。

「ぐ……こ、このミント頭がッ、ぐぎゃッ!」

 ひとり。またひとりと、作業のように仕留めていく京史郎。これだけの人数を目の前に焦る様子もなく、苦戦する気配もなかった。

「――おい! 動くな京史郎」

「ん?」と、反応したのは和奏だった。気がつけば和奏の背後にはチンピラがいた。首に腕を回し、刃物を頬に近づけてくる。

「はっはー! 動くんじゃねえ! こいつがどうなってもいいのか!」

 無視して、敵を叩きのめしていく京史郎。

「――おい、動くなっつってんだろうが! 人質が見えねえのかよ! こいつの綺麗な顔に傷がつくぞ! いいのか? ってか、見ろや! おまえの女が大変なことになってんだぞ! 気づけよ! 見ろ! 見てください! 京史郎! 京史郎さん! 京史郎さあぁぁん!」

 気づいてもらえない哀れなチンピラ。いや、人質になったのが和奏なので、放っておいてもいいと思っているのだろう。あわよくば、鬱陶しいアイドル志望者を葬ってもらえないかと期待しているのかもしれない。

 ――別に、いいけどさ。これぐらい。修羅場でもなんでもないから。

 和奏はチンピラの足を思い切り踏んづけた。痛みによって拘束が緩んだところで、顔面に裏拳を叩き込む。

「あ、が……ッ!」

 ナイフを蹴り上げる。刃先が天井へと突き刺さった。

「おい、バ奏。なにやってんだ。あとで脚立持ってこなきゃいけねえじゃねえか」

 京史郎に文句を言われる。やっぱ気づいていたんだね。喧嘩しながら、よく見ていたね。

 正当防衛のハズだが、連中のひとりを倒してしまったことにより、和奏も京史郎一味だと思われてしまったようだ。何人かが向かってくる。

「ったく、仕方ないっすねえ……」

 秋野和奏。空手二段。中学時代は全国大会で二位の成績を収めたことがある。それだけでも十分な強さだと証明できるのだが、秋野流の空手は実戦にある。要するにルールなしの方が強い。また、時代錯誤でスパルタな訓練を強いられてきたゆえに、根性も打たれ強さも桁外れ。

 ――そして、暴力に対する抵抗もない。襲いかかる特攻服の連中を、空手を使って次々に仕留めていく。

「やるじゃねえか。喧嘩の腕だけは認めてやるよ。アイドルとしてはいらねえけど」

「喧嘩のできるアイドル。滅多にいませんよ? 激レアですよ? お買い得ですよ?」

 しかし、倒しても倒しても、なかなか減らない特攻服の連中。倒したら倒しただけ、新手のそいつらが部屋へと流れ込んでくる。

「おまえらいったい何人いるんだよ!」

「くはははは! びびったか京史郎! 俺たち『青魔界』を筆頭に、傘下の連合を含めて150人! いくらおまえだろうが、この人数相手に無事ではすまねえぞ!」

「びびってねえよ! 引いてんだよ! 多すぎだろうが! 事務所に入らねえぞ! ――ああ、こんな日々がいつまで続くんだよ! 真面目に商売したいだけなのによぉッ!」

「だったらおとなしくやられろや! 病院のベッドでのんびりさせてやるからよ!」

 ――その時だった。

「へ?」

 勢いそのままに暴れまくる京史郎。そんな彼の手の届く範囲にいたのが、運の尽きだった。京史郎の鉄拳が、ちょうど近くにいた和奏の顔面へと叩き込まれる。

「ぐぎゃん!」

「あ、悪い」

 鼻血がぶしゅ。目の前がちかちかした。足がもつれて、その場へと大の字になる。うん、わざとじゃないのはわかる。混戦だったし。間違って殴っちゃったんだよね。

「和奏ちゃーん! 和奏ちゃーん」

 ソファの陰から、穂織が心配して飛び出してくる。

 うん、もう動けない。まるで砲丸をぶつけられたみたいだ。

 ――ひっでえ扱い。

 けど、意識が消える随に、秋野和奏はいいことを思いついていた。
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