マーメイド・コスモス

咲良きま

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第7話

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「今日、先輩がサッカーの練習に参加するんだって。放課後時間があったら、観にいかない?」

そう言って、ミキを誘ったら、二つ返事でつきあってくれることになった。

こんなこともあろうかと、カバンにいつもホッカイロをたくさんつめこんできているのだ。

「ミキも貼らない?あったかいよ?」

放課後、ガランとなって静かになった教室でホッカイロをお腹と背中に貼りながら、ミキに尋ねた。

「私、そういうのは体に合わないんだ。

ありがとう。いらない。」

「そう?でも、外って今日絶対に、すっごい寒いよ?

もし、寒さに耐えられなくなったら、帰ってもいいからね。」

「そうね。」

彼女はあいまいに答える。

私は体育用のジャージを制服の下にきこんだ。

「ちょっと、好きな人を観に行くのよね?」

「そうだよ?」

きょとんとして言うと。

ミキがため息をついて言った。

「いくら、寒いからと言って、それは好きな人に会いに行く格好じゃないわ。」

「そうかな。」

きぶくれして、ぱんぱんになった己を見返してみる。



うん。確かにそうかも。

これは、ちょっといただけないかも…。



「でも、きっとギャラリーが今日はかなり多いはず!

先輩がその中から私を見い出すことなんてないから、大丈夫よ!」

「そう?そういう問題なの?

まぁ、りさらしくていっか。」

「そうそう。」

さらに、オーバーを着て、手袋に、マフラーを装着。

そして、オーバーの両ポケットにそれぞれ小さな持ち運びようのホッカイロを入れるとついに私の完全なる防寒が完成した!

いっぽう、制服のセーラーにカーディガンもしていないミキの姿は私とはとても対象的だった。

見ているだけで、首筋が寒い。

「ねぇ。本当にそれで平気?グラウンドって吹きっさらしでめちゃくちゃ寒いよ?」

ミキは口の両端をわずかにあげて言った。

「大丈夫よ。寒いほうが好きなの。」

「そう。」



アルカイック・スマイル。



森田君がきちんとほほ笑んでいないと感じた微笑。

心なしか、彼女の瞳は笑っていないように見えた。




ぞくりとした。
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