シーフの為の鍛練酒場《トレジャーボックス》

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第2話 新人シーフさん初めての……!

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 店内はちょうど良い明るさの魔法灯に照らされ、飲食をしている者が傾けるグラスやジョッキ、銀のナイフやフォークの乱反射と喧騒に彩られていた。
 所々に値段の表示と共にメニュー名が貼られており、ひときわ大きい字で《女性店員への御触りOK!但し、自己責任な》というメニューがあり、その値段の表示はドクロマークになっている。

 ルノンは店員の女性に案内され、カウンター席に座っていた。
 目の前に真っ白で襟が正されたシャツに、黒の蝶ネクタイをした筋肉質でルの文字に似たスタイリッシュなヒゲの巨漢が鋭い眼でルノンを捉えていた。髪型は七三分けである。

 「ご注文は!」
 
 「え、えーと」

 ルノンは慌てて、銀貨1枚以内で食べられるメニューを探す。マギー、マリー兄妹の会話を思い出しシチューの値段を確認し2つ同じメニュー名が並んでいるメニューでで書かれている安い方に決めた。

 「金色の字で書いてある特製シチューをお願いします」

 「ほう……、わかった!」

 巨漢の鋭い眼がギラリと怪しく光る。巨漢はシチューの用意に取り掛かった。
 ちょうど配膳が終わったのか、案内をしてくれた金髪をポニーテールした碧眼の女性店員が話しかけてきた。

 「新顔さん、どうこの店?変わってるでしょ」

 「え、そうですか……。探索者ギルドの食堂しか行った事が無くて酒場自体初めてで」

 「ふーん、気付いてない?無意識で見えたってこと?」
 
 「え、何の事ですか?」

 「ああ、ごめん。私の勘違いだったみたい。そうか、初めのお店がこことは君、なかなかの好きものだね!」
 
 「ち、違うんです。あんなメニューがあるなんて知らなくて」

 「はは、隠さなくても大丈夫だよ。慌てちゃって、初々しいなぁ!」

 「リーネット!駄弁ってねぇで、追加のエール2つ5番卓に持ってけ!!」

 巨漢が化物的形相で怒鳴る。

 「へーい、いまやりまーす!そんじゃね、ああ、私リーネット!新顔君の名前は?」

 「る、ルノンていいます。よろしくお願いします」

 「ルノンくんかぁ、よろしくね♪」

 「いいかげんしろリーネット!、7、9番卓にもエール2つずつだ!早くしろ!!」
 
 巨漢が大声で怒鳴る。

 「へーい、ただ今!」

 リーネットが急いでエールの配膳に取り掛かる。
 巨漢がルノンの前に熱々のシチューと大きめな2つのパン、冷えたエールの入ったグラスを置く。

 「え、あの……、エール頼んで無いんですけど」

 「気にするな。俺の奢りだ新顔!!」

 「あ、ありがとうございます」

 「俺の名はビクスリー、この酒場《トレジャーボックス》の店長をしている者だ。怒鳴り散らして悪かったな」

 「い、いえ。ルノンといいます、よろしくお願いします!」

 「こちらこそよろしく。さぁ、冷めない内に食ってくれ俺の特製だ」

 「は、はい。いただきます!」

 ルノンは銀のスプーンでレッドブラウンなスープと一口サイズに切られた肉をすくって口に入れる。

 「お、美味しい!!こんなに美味しいシチューを食べたのは初めってです!」

 「そうか、旨いか!たっぷりと味わってくれ」

 「はい!」

 ルノンは店長ビグスリー特製シチューを一口一口、大切に味わう。その美味しさに頬がとろけ、これからの迷宮都市生活の不安さえ溶けて無くなってしまうかの様な幸福感に包まれる。
 ルノンは凄く美味しいシチューを銅貨10枚で食べれただけでも迷宮都市に来て良かったと思った。しかし、そのシチューのがいくらか知ればそうは思えなかったに違いない。
 
 店長ビグスリー特製シチュー正式価格金貨100枚、市場の状況では200、300枚になっても可笑しくない。
 そのシチューには迷宮探索者トップの極わずかな者しか狩ることが出来ない魔物の希少で極上な肉が材料にされていた。
 ルノンは初めて王族や貴族でも滅多に食べることが出来ない特製シチューをで食べる事ができた。その事実を知るのはもう少し後になってからだ。
 



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