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『出来損ない』の王女

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_小さい頃は、いつか素敵な婚約者と結ばれて、幸せになるのだと。そう、本気で思っていた。
そのために、私はいつだって努力してきたつもりだった。

…結果、婚約者なんて出来そうにもないですけどね!?

そう、一ミリも婚約者が出来る気配などなかったのだ。
アンジュにとっては、結婚なんて夢のまた夢。
きっと、それはアンジュが生まれた家庭のせいでもあった。

…アンジュは『出来損ないの王女』だった。
王家の長女として生まれ、
アンジュの生まれた王家では、長女がなかなか誕生せず、その中で誕生した待望の長女だったのだ。
だからこそ、期待が大きかった。
…いや、大きすぎたのだ。

私は王家に生まれた子供としては平凡だった。
王家では、特別な才能がある子が多い。
だから、平凡であってはいけない。
昔からそうずっと言われ続けてきた。

いつしか、周りの評価が、「平凡すぎる」が、「大したこともできない」に変わり、最後は「出来損ない」に変わっていった。
そんな『出来損ない』な私だったけれど、まだ見捨てないでいてくれる人もたくさんいた。
だから、私はその人たちのために、必死に努力しようとした。

けれど、そんな中、私が小学校に上がる前に。
妹が生まれた。

妹は、所謂「天才」だった。
3歳のころには九九も覚えていたらしい。
そんな妹を周囲は、「この子は神の贈り子だ!」などともてはやした。
私と妹は、対照的だった。

私は勉強が得意なわけではない、性格もお世辞には良いとは言えない。
妹は、学業も優秀。加えて性格も100点。
そして、妹はとても可愛い。さり気ない気遣いや、謙虚な所もある。
本当に、絵に描いたような優等生だった。
お母様や、お父様も、私への興味がなくなっていったのが、肌で感じた。

恋愛どころか、友達すらあまり出来たことがないのに。
…私の生まれた家庭が、『普通』だったのなら。きっと婚約者も出来ていたのかもしれない。

私と対照的に、妹は縁談の話が飛ぶように入った。
王家で、優秀で、加えて美貌もある。
そんな妹と結婚したいと思うのは、当然だろう。
だけれど、妹は何故か全て縁談の話を断っていた。
最愛の人でもいるのだろうか?

色々考えていると、家のメイドが部屋にやってきた。
「アンジュお嬢様。
お忙しい所失礼いたします。
実は、お父様がお呼びでして。」

…お父様が?
今となっては滅多に話すことのない、あのお父様が?
…目的は分からないけれど、呼ばれているのなら行くしかないわね。
「わかったわ。
貴方もありがとう、仕事に戻っていいわよ。」
「はい、承知いたしました。」
メイドは戻っていった。

私は、お父様の自室に直ぐに向かった。
部屋をノックすると、
「入れ」
そんな一言が発せられた。
…相変わらず、冷たい声だわ。

私が部屋に入ると、お父様、お母さま、妹がいた。
お兄様たちの姿は見当たらなかった。
「…失礼いたします。
どのようなご用件でしょうか?」

「お前は、この家にもう必要がない。」
…え?
今、なんて言ったの?
「…はい?」
「お前がこの家にいても、王家の恥さらしになるだけだ。
この家から出ていけ!」
私のお母様が言った。
「…早く出て行ってちょうだいね。」
私は理解が追い付かないまま、部屋を追い出されることとなった…。

薄々、いつかは追い出されると分かっていたけれど…こんな早くに追い出されるとは。
この家に愛情何てないけれど、少し、寂しいわね。
これから、どうしようかしら、。
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