春の穂先

上村ジョニー

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第8話

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それが顔に出ていたのか定かじゃないけど、春はさっきに増して顔をしかめてまるで、子供に言い聞かせるように僕へ言う。「今、変なこと考えてたでしょ?ダメだよ。まだ、学生なんだから清く正しく交際しなきゃねーー」ニコッと笑いながら語尾を伸ばす春の声色に僕の胸は高鳴るばかりだった。その後は、さっきのお礼を重ねて言われ、結構かっこよかったと褒められテンションが上がりっぱなしの中でぼちぼち帰ろうかと僕が問いかけると春は「今日は帰りたく……ないよ」さっきまでの可愛らしい春から一変してしおらしくなった春を見て僕は正直なところいわゆる胸キュンをしていたけど、そんなやましい感情を抱いていたのがばれてしまえば秒速で振られてしまうのではないかと思い、姿勢を正して春に向かって言った。「僕も、春と一緒にいたい」言い終わった瞬間、顔から始まった熱が全身を駆け巡り、さっきまでとは少し違ったテンションの高鳴りだった。そうして熱にほだされつつあった僕が春の方へ顔を向けると「プッ」一瞬、スイカの種でも飛ばしたのかと思ったけどスイカは手元に無いわけで。僕が反応に困っていると春はニコニコしながら話す。「ごめんごめん。ホント単純だね、からかい甲斐があるよ」「あ、純情な男子をからかったな」僕がいつものように横腹をくすぐり、じゃれ合っていると不意に二人の顔が近づく。「ハァハァ」肩で息をしているからか二人の吐息の漏れる音が聞こえてくる距離でしばらく見つめあっていた。すると春は何も言わずスッと目をつぶった。
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