18 / 30
第十八話〜思いがけない電話①〜
しおりを挟むお盆明け、勤務の都合でお盆休みがズレた兄と一緒に、父の誕生日プレゼントを探しに近くのショッピングモールへと出かけた。
どれにしようか散々迷った挙句、結局選んだのはいつもと同じ父の好きなお酒と消耗品の靴下。
プレゼント探しに奔走した疲れを癒す為の休憩中、フードコートのテーブルの上に置いたスマホがブブ……と震えた。
わぁ、珍しい人からの連絡だ……何だろう?
グループチャットでメッセージのやり取りをする事はあったけど、直接電話で話すのは初めてだから少しだけ緊張する。
目の前でアイスのコーンを美味しそうにかじる兄に目配せしてから、外のテラス席へと移動した。
『はい』
『あ、澄依ちゃん今大丈夫?』
『うん大丈夫だよ、前田君どうしたの?』
『あのさぁ、突然で悪いんだけど咲音が熱出して死にそうなんだよ。澄依ちゃんこの後時間ある? もし大丈夫なら、様子見に行ってもらえたらと思って』
『え、でも……前田君は行けないの?』
『俺これからバイトなんだ。それで明日も明後日もバイトだからさ』
『でも、私が行くのは迷惑って言うか……青山君嫌がると思う。それに友達なら他にもたくさんいるでしょ?』
告白して振られた事、知らないのかな?
そんな筈はないよね、あれだけ仲良しなんだもの、何かしら聞いているよね。
『澄依ちゃんこれは人助けだから! 人命救助だと思ってお願いっ!! 咲音には連絡しておくから』
結局、押し切られる形で青山君のアパートへ向かう事になってしまった。
『風邪ひいてる友達のところへお見舞いに行く』と言ったら、あの後すぐ兄が大学近くのコンビニまで車を走らせてくれて。
帰りも迎え行くからしっかり看病してあげな、と笑顔で送り出してくれた優しい兄。
しかも、これで何か買って行きなって、お小遣いまでくれた。
お兄ちゃん大好き。
でもまさか、男の子の部屋に行くとは露にも思っていないだろうけど。
えぇと、ここで前田君に言われたプリンを買っていくとして……後は熱だから、お粥と水分補給に何かペットボトルでも買っていけば良いかな。
『もしインターホン鳴らしても出てこなかったらだけど、玄関ドアのハンドルのところカバー開けて番号入れれば開くから』
それは流石に聞いたらいけない事だと思って、『そんな大事な番号は教えてもらう訳にはいかないよ』って言ったのに――
『澄依ちゃんの誕生日を西暦から八桁入力してみな』って。
どう言う意味?
もしかして、玄関の暗証番号を私の誕生日にしてるの?
もしそうだとして、そんな大切な番号をどうして私の誕生日に?
ダメダメ。
また期待するような事考えちゃう。
花火大会だってちょっと優しくされただけで舞い上がって、結果失敗したばかりなのに。
覚えやすい番号だったとか、きっとそんなところだよね。
もし……もしもだけど、特別な意味があったとしたら、私の告白だって受け入れてくれた筈だもの。
そう、だから暗証番号に深い意味なんてないから勘違いしちゃダメ!!
花火大会の夜、思い切って華奈ちゃんに今までの事を全部話したら、もう少し頑張ってみれば? って励ましてくれた。
その為にはいつまでも感傷に浸るのは止めて、自分磨きをする事が大切だとも言われて。
華奈ちゃんも大好きな人の為に、日頃から努力する事を怠らないのだとか。
だから、服装やメイクにも今まで以上に気を付けるようにしている。
その上いつまでも泣いてグズグズする私を、華奈ちゃんは嫌な顔ひとつ見せずに、私が泣き疲れて眠るまで優しく慰めてくれた。
おかげで立ち直るのが思ったよりもずっと早かったし、後期が始まったらまた大学で会えるかもしれないと期待していたけど、まさか今日会えるなんて。
良かった。
お兄ちゃんとのお出かけとは言え、ちゃんとお洒落しておいて。
でもちょっと待って。
青山君は熱を出していて、しかも死にそうなくらい重症なんだよね。
これは人命救助なんだった。
浮ついた気分はここまでにしよう。
1
あなたにおすすめの小説
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
譲れない秘密の溺愛
恋文春奈
恋愛
憧れの的、国宝級にイケメンな一条社長と秘密で付き合っている 社内一人気の氷室先輩が急接近!? 憧れの二人に愛される美波だけど… 「美波…今日充電させて」 「俺だけに愛されて」 一条 朝陽 完全無欠なイケメン×鈴木 美波 無自覚隠れ美女
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました
藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。
そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。
ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。
その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。
仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。
会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。
これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる