冷たいコーヒーを温めましょう

茶雲

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ホッと温まるコーヒーを一杯

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私は全ての物を家に置き旅に出た。お金や免許書、連絡手段の一つであるスマートフォンも置いてきた。
繋がりがなくなったからか、より自由さを感じた。

移動手段は歩き、といってもビル街であるから駅は近いし知っている道は多いから知っている道をただ歩いているだけ。求めている場所もここの付近には無いに等しい。普段使っている道だからか知り合いに会うことや買い物のレジの時によく話しをする店の従業員さんに会ったりする。

誰も私が最期の場所を探しているとは思わないんだろうな...

知り合いに会うことが多いので、普段近寄らない道を進むことにした。この道は街灯が少なく、夜は天気が良ければ星が美しく天の川が綺麗に見れたりする道だ。その反面、夜は声をかけられることが多く普段の速さで歩けないことが多くあったりする。しかし今は昼間、知り合いに会わないためにもいざ!

昼間にこの道を進むのは初めてで、普段前をみて歩かないので新たな発見があったり、おしゃれな店があったり新鮮な気持ちになった。テレビでよく見たけど夜になるとこの電球たちは光って綺麗なんだろうな。(一度だけでも見てみたかったな...。)

「この木のイルミネーションは特に綺麗だよ。ねぇ、一緒に見てみない。」

お昼でもダメだったらしいです...

「え?綺麗なの。」
私は声をかけられた不安や恐怖よりもイルミネーションが綺麗という感想の方が気になった。

「はぁ...自分がいうのも変だけど、これナンパだよ。そういう風に反応すると、どんどん心の中に付け込んで変な店に連れ込まれちゃうよ。」

ナンパの初心者の方なのか普通に心配された...

「これってテレビとかで見るナンパですか。人生最期に1つ、経験ができて嬉しいです。ありがとうございます。」
私は彼女に出会うまでは全て、自分ことは自分でやり他人に教えてもらうことよりも1人ですべてを決めてきた人だから、彼女以外に教えてもらえたことがまず嬉しかった。

「君...死ぬの?。」

「はい、今私の死に場所を探す旅中です。見つかり次第、死ぬつもりです。」

「・・・・・」

「ちょっと待ってね。」

私にいろいろ教えてくれた人は私と同じ機種のスマートォンでどこかに電話をし始めました。
3分ほど電話を待つと再び私の目を見て、「店に来て」と言ってきました。
この人はナンパの初心者ではなく、かなりの人らしいと思いました。

流れで最期の場所ではなく、先程の木の目の前にある店に連れ込まれてしまいました。

「連れてきました。」

なんと、連れ込まれた場所は今年度一番の売り上げを出したとラジオで言っていた有名なカフェテリアでした。

「あぁ、君がさっき電話にあがった人だね。店に入る前に、ここにサインをしてくれるか?」

自分は何故ここに連れてこられたのだろう。何も分からない私は言われた通りにすぐにサインをしてしまった。大丈夫だろうか...

「電話でも聞いたけど、社会をもっと勉強した方がいいよ。このサインが無理難題な内容だったらどうする気だったの。」
初対面の人は少し困ったような怒ったような顔や声で言ってきた。

「どんな内容であっても、最期の場所が決まり次第死ぬって決めてるからなっでもいいかなって。」

「じゃあ、店長命令で1つ。その契約書は社員登録の正式の雇用契約書だから、書いた以上死んじゃだめだよ。契約によってどんな理由であっても死ぬことは一切ダメだから。」

「え...。なんで...どうして...。」

こんなことをしたのは初めてで、本当はやってはいけないんだけど従業員が結婚を理由に1人辞めてしまって、代わりの人が丁度欲しかったんだよ。」(今から死にますっていう人を無視して何かあったら責任が、かかってしまう。)

「そんな理由じゃ、私はここで死にます。1人1人に人権ってありますよね。今って自分のことを他人が決めていい時代でしたっけ。だからもう面倒なのでここで死にます。」

「人権というならこっちにも同じような考え方ができるぞ。君をここで無視をすると最悪の場合、私が犯罪者扱いになる。そしたらここで働いている人は仕事がなくなり働く場所がなくってしまう。だから、大人しくここで働け。」(ちっちゃい癖に無駄に知識があるな。)

「今ちっちゃいとか思いました?知識が無駄にあってしかも小さいとか思いました?心外です。私はまだ20歳で、これからが私の成長期です。
3年後の姿を見て可愛いと思ったら土下座してください。」

(《自殺》という1つの考えから少し逸らすことができてきた。凄く単純な子なのか?)

「本当にしてもらいますか...ん...このお店って本当にカフェテリアですか?店長さんの口がうますぎる感じがするのですが。」

「昔に接客の仕事をしたことがあるけど、君が単純でチョロいだけなんじゃない?けど、話しているうちにそんな気も起きなくなったでしょ。」

「私は何もかも捨てて実行するつもりだった。けど、あなたに会ってそんな気が失われた...責任取ってくれる?」

「私にも何らかの責任があるから生活する部屋、生活に必要なものをそろえるよ。」

「責任取ってくれるって意味わかってる?」

「結婚してくれって意味でしょ。分かっているよ。自分たちが出会ったのって今日が初めてだよね。付き合う過程を飛ばしていきなりプロポーズって凄くない。」

「私は昨日から死にたいという思いしかなかったけど、今日あなたと会って今の感情はあなたを見返してやりたいという思いの方が強くなった。だから責任を取って私と結婚してください。」

(見返してやりたいだったら付き合うで始めるでよくない?。)

「結婚じゃなくて付き合うじゃダメなの?」

「全部言わないとだめですか、私はあなた以上に好きになる人が見つからないと思います。だから結婚したいです。」

「言わなかったけど、詐欺ですか?」

「私、20歳。詐欺をするともう名前が晒される年齢だよ。そんなリスクをすることないじゃん。純粋に一目惚れであなたのこと好きになったの。あなたの傍から離れたくないの。」

「自分、店長だけどまだ24歳だよ。親は旅行中で自分ひとりで店長の代理をしているんだ。それに、人を好きになったことないから恋愛感情が分からないんだよね。友達と遊んで一緒に楽しいと思うのが女性の友達と遊んだ時とは違うの?って感じで...付き合うとか結婚ってわからないんだよね。」

「私と一緒に生活をして恋愛感情を学んで行けばいいんじゃない。だから、同棲させて。」

「結婚とかは分からないけど、もう諦めるよ。一緒に住もう。条件としてお互いに手を出さないこと、親が不在だから何にも言えないから同棲ならいいよ。それで何が目的か確認させてもらうよ。」

「だから純粋にあなたのことが好きになったんだって。何も企んでないって。信じてよ。」

「詐欺師もこんな感じのことを言うから信じ切ることはできないよ。」

私は、何も持ってこずにきたからどんなことがあっても私は声をかけてくれたこの人にお願いすることしか後がなかった。ここで本当に拒否られてしまうと、夜の間、開いている店でずっと本を読んでいるしかなくなる。

「でも、その表情を見るとなんかヤバそうな感じだね。涙、流しているけどハンカチいる?」

「え...私、本当はここで断られると行く当てがないの。何でもするからお願い同棲させて。」

「何でもするとか軽々しく言うものじゃないよ。はぁ、心配だからもういいよ。うちに来な。今日から俺の家に泊まれ。」

私は不審者と思われているかもしれない。けど、生き続けて、生きる目的をくれた彼に恩返しをいつかしたいと思った。私の人生は彼のために使おう。

「私は、あなたに全てを尽くします。これからよろしくお願いします。」

こうして私の新たな人生が幕を開けた。
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