騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

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1章

2話「オルガ国救出作戦開始!走れ王女の元まで」

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 夜明けと同時にオルガ国の周囲に駐屯していたスジエル第4騎士団は動きを開始。3部隊に分かれて正門と横門から一気に国内へと攻め込んでいく。
 国内は闇の瘴気を生み出すクリスタルの影響で視界はあまりにも良好とは言えなかったが、軍師騎士のアベルゾの読みが当たっていた。クリスタルを破壊していくと闇の瘴気は薄れて行き視界も晴れて行く。
 クリスタル破壊部隊が速やかに破壊を行っていき、モンスターを撃破していく部隊の援護にも回り始める。保護部隊であるガイアとフェランドは数人の騎士達と共に国内中心地にある教会へと脇目を振らずに駆け出して向かっていた。
「このエリアの教会にいる筈だ! だが教会だけでも3か所もある。手分けして探し出すぞ!」
「俺とフェランドは一番遠い教会に行きます! 先輩達は可能性の高い教会にお願いします!」
「よし、他の者も残りの教会へ向かってくれ! 見つけ次第保護して本隊と合流するんだ!」
 ガイアとフェランドは中心地の中にある教会の中でもスラム街に近い位置にある教会へと走った。他の教会の方が王女がいる可能性も高いが2人は自然と向かっている教会に王女がいると何故か分かっていて向かっていた。
 ディークとハイクに乗って教会前に到着すると中から悲鳴が聞こえてきた。間違いない、ここに王女の関係者がいるのは確定した瞬間だった。
 剣を引き抜き教会内部に飛び込んだガイアとフェランドはすぐにシスターに守られている女性を確認、襲い掛かろうとしているゾンビモンスターの背後から切り掛かり注意を自分達に向けさせる。フェランドが剣に聖魔法を掛けてゾンビの攻撃を受け止めている間にガイアがシスター達の前に立ち、同じ様に聖魔法を唱えてシールドを展開するとゾンビ達はフェランド1人に集中攻撃をし始めるが、それが2人の狙いではあった。
「今の内にシスター達を外に!」
「ここは任せるぞフェランド! さぁ、皆さんこちらに!」
「あぁ、神のお導きが……さぁ、王女こちらに!」
「は、はい……!」
 金色の髪の毛をツインテールにしている女性を守る様にシスター達はガイアと共に教会の外へと脱出する。フェランドの周囲には4体のゾンビモンスターが囲んでいるがフェランドには慌てている素振りはなかった。
 ガイアはディークを指笛で呼ぶとハイクと共にやってきたディークの背に王女と思われる女性を乗せるとシスター達の言葉に耳を傾ける。シスター達は横門を通って国外へ逃げれはするが王女は騎士団と合流するべきだと告げてガイアに王女を預けて横門がある通りを走っていった。
「大丈夫ですか?」
「あ、あの……教会内に残して来た騎士様は……」
「大丈夫ですよ。あいつの得意な集団戦では右に出る者はいません。少し待ってればすぐに出てきます。ほら、言っていればもう出てきた」
「ガイア! お待たせ」
「そんなに待っちゃいない。ゾンビタイプなら怪我もないだろ?」
「あぁ、ルーベリド王女様で間違いありませんか? 俺達はスジエル騎士団の騎士です。このオルガ国を救出する為と王女の事を保護しに参りました」
「私を保護しに……? それにオルガ国の救出って……、それじゃスジエルが取り戻されたのは間違いないんですね?」
「はい、俺達の総司令団長アルフォード団長達がスジエルを取り返されました。王女をお迎えに来たのは希望国の王族として我々を導いてもらう為です」
「スジエルまでは俺達が全力と命を掛けて王女をお守り致します。どうかお力をお貸し下さい」
 ツインテールをしている女性、そう彼女がスジエル初代国王の娘でスジエル陥落時に産まれたばかりだった王女のルーベリド王女である。ガイアとフェランドが地面に片膝を付いて頭を下げていると幼いルーベリド王女は震える身体を理性で律して気丈に2人を見つめて頷く。
 「わ、私が亡き父の代わりにはなるかは不明ではありますが、スジエルがこのオルガスタン大陸の希望として人々と世界樹の希望になるのであれば、私が出来る事をします。どうか私を故郷であるスジエルまで送り届けてくれはしませんか?」
「そのお心と御身を俺達は必ずお守りします。どうかご安心ください。さぁ、先輩達と合流して本隊の元に向かおう」
「ハイクおいで!」
 ガイアがルーベリド王女の背後に乗って王女を両腕で包み込む様な形で手綱を握り締め、ハイクに乗ったフェランドが殿を勤めて中心地近隣の教会に行っている先輩騎士達と合流する為にその場から移動を開始。ルーベリド王女は不安そうではあるが怖い、とは一言も漏らさないで前だけを見つめていた。
 中心地に戻ってきた3人を出迎えた先輩騎士達はルーベリド王女に頭を下げて出迎え、ガイアの馬に乗せたまま本隊へ合流する為の移動を開始。本隊はオルガ城の正門前に広がる広場にてこのオルガ国を支配している魔族との戦闘に備えていた。
「アベルゾ、ルーベリド王女をお連れしたぞ」
「王女、ご無事で何よりでございます」
「この度はオルガ国救出と私の事を保護しに来てくれた事、感謝します。それで……この国を支配している魔族であるベベルゾとの戦闘に勝てますか?」
「その点でしたら問題はございません。スジエル国内に設立された神の力を剣に宿す白の騎士団も同行しております。魔族相手には彼らの力を借りて制圧は問題なく進められるかと想います。王女はこの者達と共に安全な場所にて少々お待ちして頂く事にはなりますが」
「それは構いません。ですが、ベベルゾは思っている以上に知能が高い魔族だと聞いております。油断しないよう細心の注意を払って撃破を……」
「了解しました。ガイア、フェランド、貴方達は王女と共に退路を守る部隊と合流してください」
「分かりました。それでは王女を守りながら下がります」
「殿は俺が。ガイア、王女をお願いするよ」
 アベルゾの指示に素直に従ってガイアとフェランドはルーベリド王女を連れて国外へ移動。その途中の道でルーベリド王女は静かに言葉を飲み込む。
 ガイアとフェランドを信用しているアベルゾを疑う訳ではないが、自分を守るこの騎士達はまだ自分と同じかそれより少し上の年齢の騎士……モンスター相手に負けたりする事はないだろうがベベルゾが簡単に逃がすとは思えなかった。だが、それはガイアとフェランドも同じ考えであったのか警戒しているガイアの視界にモンスターの大群が確認される。
 ルーベリド王女は小さな悲鳴を上げて身体を強張らせてしまうが、ガイアもフェランドも待っていましたと言わんばかりに剣を引き抜き進路を塞ぐモンスターを切り倒していく。フェランドの剣とハイクのスピードが重なって剣の振る所にモンスターの身体が当たって鮮血が散る。
「数だけ多いだけで足止めか時間稼ぎだな!」
「ガイア、ディークの足なら突破出来る。一気に駆けて!」
「門まで行けば退路の部隊が気付く。惹き付けて向かうぞ!」
「っ、神様……!」
「切り開く! 俺達の手で未来を!!」
 ハイクとディークのスピードに食らいつくモンスターを引き連れて門まで到着すると、退路を確保していた部隊が異変に気付き、すぐに応援部隊としてガイアとフェランドの元に来てくれた。ルーベリド王女はすぐに馬車に移されて高台の場所にまで避難し、ガイアとフェランドは追ってきたモンスター達を蹴散らしに掛かった。
 オルガ城に入った本隊の騎士達はベベルゾの緻密な攻撃に弱音を吐く事も無く、ベベルゾを追い込みかけていた。アベルゾはベベルゾの策を上回る策を次々に展開して王の間にてベベルゾと対面、直後白の騎士団と共にベベルゾ撃破を成し遂げている。
 モンスターを蹴散らし終えたガイアとフェランドもルーベリド王女が乗る馬車の護衛に就きながら本隊の帰還を待つ。ベベルゾ撃破の知らせが届いた時、ガイアもフェランドもお互いに顔を見合わせて頷く。
「これでオルガ国救出完了、だな」
「まずは1つ。そして、帰るまでは気を抜かない、だ」
「新人、王女が話をしたいとの事だ。お傍に行ってくれ」
「はい、分かりました」
「持ち場を離れます」
 馬車が停まっている場所に歩いていくガイア達に知らせに来た騎士は少し首を傾げる。新人の騎士だというのに、ガイア達の背にはベテランの騎士の様な安心感を感じたからだ。
 馬車の前に来るとルーベリド王女の姿が操作席にあった。ガイアとフェランドを確認したルーベリド王女は少し震える身体で2人にある事実を話し始める。
「実は……オルガ国は既に死の国と言っていいです」
「死の……国?」
「それは一体……?」
「魔人アガルダはオルガ国の住民達の体内に宿る生命、つまりマナを集めて奪い取りモンスターにして国に放っていました。私は幸い、魔神アガルダに見付かる事なく隠れていたのもあって難を逃れていましたが……貴方方が切り伏せたゾンビモンスターは住民達の成れの果てです……」
「そうだったのですか……。俺達は救えた命を救えなかったんですね」
「でも、住民達の生命であるマナを奪ったとは少し考えないといけないって事ですか」
 ガイアはルーベリド王女の言葉から考えられる事を考える。フェランドは自分の両手を握り締めて切り伏せた住民達の事を静かに祈りを捧げていた。
 ルーベリド王女はガイアとフェランドを見て小さく感じる事があった。それはこの2人はどんな事実が酷くて重い物でも希望に塗り替えるだけの強さを秘めているのではないだろうか? そんな希望。
 王女の視線には気付かないである考えに至ったガイアはフェランドを連れてルーベリド王女の前を失礼する。フェランドもガイアが何かの考えに至っているのに気付き2人で話せる場所にまで移動するとガイアを見上げた。
「それで、ガイアの見解はどんなの?」
「まず、魔神アガルダは支配している国を使ってマナを集めていると仮定して、なんの意味を持つのかを考えてみた」
「ふむ、マナと言えば生命力の事。そのマナを集めるのには必ず意味がある筈だからね」
「その目的が……魔神アガルダの身体を維持するのに必要だとしたら?」
「身体の維持……。そうか、魔神は本来魔界の神だから魔界じゃないこのオルガスタンでは維持するには膨大な生命力のエネルギーが必要となるとしたら考えられない事じゃない。それは同時に魔神アガルダの力の元にもなっていると考えるべきだね?」
「あぁ、俺達は世界樹から危機を知らされていた時には魔神アガルダは魔界から既にオルガスタンに出ていた。結果、支配には成功したが身体を維持するのには魔力を使用していたが、それが枯渇、または弱体した結果マナを集める事になった……今なら魔神アガルダの力の元を探し出すのも行ける可能性もある」
「俺達に下された神託がここで活かされるって訳だ」
「そうだ。俺達に託された神託はこの事を予知していたに違いない。スジエルに戻ったら総団長にご報告しよう」
「あぁ、それが一番いいだろうな。俺達の素性も明かすべき時が来たな」
 ガイアとフェランドはお互いの腰に差さっている剣の柄に手を添えて空を見上げる。ここまでの間に起きた出来事を冷静に分析するガイアの知能の高さ、集団戦を新人なのに得意とするフェランドの戦闘能力の高さ、一体ガイアとフェランドはどんな人間なのだろうか――――。
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