騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

文字の大きさ
51 / 63
7章

50話「まずは現状の確認と作戦会議」

しおりを挟む
 ルシスとイシュがアガルダの現状を教えてくれる、それを聞いた上でフェランド達はどう動くかと考えていく。アガルダはマナの聖樹が解放された事による力の溢れ出るせいで暫くの間は眠りに落ちている事が分かっている。
 そして、同時にオジナルの四天王と呼ばれている者達がフェランド達を警戒まではしていないが待ち構えている事をルシスが告げてくる。イシュがその四天王について色々と自分が知っている範囲ではあるが5人に話をしてくれる。
「大斧を自在に操り、力だけで言うならば間違いなく四天王1の実力者と言われているガイエリット将軍、彼は見た目こそそんな大斧を振るう様な肉体をしてはいませんが、それは見た目を誤魔化しているとかではなく、戦闘時に筋力を増幅させる事で振るえるのです」
「武人の四天王って事か。他の四天王については?」
「魔術を使わせたら彼の者以外の実力者はいないとされている四天王、オベロナス魔術師ですかね。彼は魔力が高く、補助魔法から攻撃魔法まで多岐に渡る魔法を使用する事が出来ます」
 イシュの話にジェイドとルプスは腕を組んで対策について考え始める。ヴォルグは純粋に力勝負としてガイエリットとの勝負を望んで瞳を輝かせていた。
 ガイアはルシスの方に視線を向けて様子を伺うが、フェランドは自分が捕らえられた時に見た四天王の姿を思い出す。そして、その風貌をイシュに伝えるとイシュは頷きながら話をしてくれた。
「フェランドさんが見たのは四天王の中でもアガルダの部下では長い時間を仕えている忠臣と呼ばれている四天王、イルスールトです。彼の攻撃性の高い性格をアガルダは大層気に入っている事もあり、猛将と呼んでもいいかと思います」
「あとあっち方面でもかなり絶倫だったよ。何回射精しても全然体力も硬さも落ちないんだからさ」
「フェランド……」
 フェランドを抱き殺すんじゃないか? と思い出すフェランドにガイアはあまりよろしい視線は向けれなかった。だが、それとは別に何かを思い出す。
「軍師って呼ばれている四天王もいたよね? 確か、キャロドゼと呼ばれている魔族」
「あぁ、彼の者は知がかなり高くアガルダの参謀を務める程です。そして、彼は目的の為にならば恐らく他の四天王を犠牲にしてでも目的を果たす程の冷徹さを持っていると言っていいでしょう」
「そのキャロドゼ、恐らく俺に一番執着している」
「どういう事ですか?」
「俺が捕まっている時にやけに俺にアガルダの手に下れって勧誘を何回でもしてきたんだ。何か裏があるんじゃないかって考えている」
 フェランドがそう話すのをルシスとイシュは驚きながら聞いていた。ガイアにはキャロドゼがどうしてフェランドをアガルダの手に下れと告げていたのか何となくではあるが察する事が出来た。
 恐らくキャロドゼはフェランドをアガルダの妻か何かの位置に添えようとしているのではないだろうか? と考えてみる。そうだとすればキャロドゼがフェランドの魂が元々アガルダの手による転生である為に闇に染まりやすいと考えたからだろうとガイアは思った。
 今アガルダの傍にいる誰かよりかはフェランドの方がアガルダの力になると考えれば勧誘も自然な事ではあるのだが、とガイアは心の中の声で呟いた。フェランドはそんなガイアの考えも知らないで担々とルシスとイシュに話をしていく。
「アガルダが眠っている今こそ四天王を撃破するにも、四天王だってバカじゃないからそれなりに力を発揮する事を考えているとは思うんだよ。問題は俺達にはその力に対抗出来るだけの力はあっても残しておかないといけない事だ」
「マナの泉……そこで回復が恐らく出来るのではないかなとは思います」
「あぁ、破壊竜バルシス様が陣取られている泉でございますね?」
「バルシス……ルプス達を助けてくれた……。一体破壊竜は何を考えているんだろう?」
「あくまで私の考えではありますが、アガルダの運命をバルシスは知っている様です。だからこそ、自分を目覚めさせたアガルダに従うつもりはない様子を見るとバルシスは何か考えがあるのではないかと思われます」
 ルシスの言葉にフェランドも腕を組んで考えている。バルシスの事を蘇らせたまではきっとアガルダの計画には沿っていた事には違いないだろうと思われる。
 だが、復活したバルシスはアガルダには非協力であり、逆にアガルダに敵対する動きも見せているのを考えるとフェランドには疑問しか浮かばない。ルプスがそこにアベルゾと助けてもらった時に授けてもらった知恵について話をし始める。
「そう言えば、バルシスは私達が捕まっていた時にこう言っていた。「時が来れば世界樹の力がアガルダを抑え込むだろう」って。そして、その力を使えるのは運命の御子と希望の騎士だとも言っていた」
「運命の御子はフェランドだが、希望の騎士は誰だ?」
「ガイア様だと思いますよ。フェランド様の対は貴方しかいないのですから」
「私もそう思います。御子の一番身近な人間こそが騎士に相応しいと思いますので」
 ガイアは少し自分に向けられている視線から逃げる様に、顔を上に向ける。そんなガイアの様子にフェランドが微笑みながら見守った。
 そして、作戦会議を始めると全員がそれぞれの戦い方を考えて四天王の相手に誰がなるかの話し合いを始める。まずは猛将イルスールトには因縁の相手でもあるフェランドが。
 軍師キャロドゼにはガイアが、魔術師のオベロナスにはルプスとジェイドが。武人ガイエリットにはヴォルグが敵対する事が決まった。
 イシュとルシスには城内に流れるマナの力を集めて、マナの泉への道を切り開いてもらう事を頼む。それぞれが自分の相手になる四天王をしっかり刻んでから城内の地図を再確認する。
「四天王達にはそれぞれ持ち場が与えられています。玉座の間に近い場所にキャロドゼ、その手前にイルスールト、オベロナス、ガイエリットの順に並んでいます」
「全員で1人ずつ撃破していくよりも各個撃破の方が本来ならいいのでしょうが、城内には闇のマナが滞留しています。四天王の力も魔界にいるよりかは半減してはいますが、それでもその力は強大。油断なされないように」
「いよいよ最終決戦前の肩慣らしって訳だな! くぅ~滾るぜ」
「ヴォルグ、あまり集中し過ぎると周囲が見えないんだから気を付けなよ」
「ルプスとジェイドも気を付けてね。魔術師なら簡単には倒せないだろうから」
「うん、フェランドもガイアも無理はしないで」
「それじゃ武器の確認をしたら出るぞ。相手さんもそう待ってはくれないだろうからな」
 ガイアの言葉で全員が武器や防具の確認をし始める。イシュとルシスは5人の姿を見つめながら静かに終わりへの道筋を考えていた。
 そして、全員が準備を整えると手始めにヴォルグが先陣を切る為に神殿から出て行く。遅れてジェイドとルプスが、そしてフェランド、ガイアの順に飛び出していく。
 5人の運命の者達を見送ったルシス達も動き始める。少しでも回復が出来る可能性を考えてマナの泉への道を切り開いておく必要があると頼まれたからだ。
 ルシスとイシュは神殿を出てマナの泉へと向かう。道中の敵はイシュが切り払って倒していくが。
「やけにこちらは手薄ですね……わざと、と言う訳ではないでしょうが」
「何かしら策があるのかも知れません。用心して参りましょう」
『そうはさせませんよ』
「!」
「その声は……ヴェレネット様ですね。お姿が見えませんが?」
『貴方方が裏切る事ぐらいアガルダ様が予見されてないと思いでしたか。貴方方とあの運命の者達を引き離す手間が省けました』
「……ルシス様、お下がりを」
「これが狙い、だったと言う訳ですか……」
『ルシス様、貴方様を依代にアガルダ様の本当の覚醒の礎になって頂きます。まずはそのお身体をこちらに頂戴させてもらいますよ』
 姿の見えないヴェレネットの声に従って無数の魔族達がイシュとルシスを取り囲む。その数の多さにイシュは深呼吸をして剣を強く握り締める。
 ヴェレネットが言うのが本当であれば、ルシスをアガルダの身体に取り込み、本来の魔神アガルダ完成体としてルシスを利用しようとしている。それを食い止めなくてはフェランド達の勝利は間違いなく危ない域にまで下がってしまうのは明白である。
 ルシスも抵抗の構えを見せて魔族達の攻撃に備えているが、魔族達は一向に攻撃を仕掛けてこない。イシュが仕掛けようとしてその時になって本当の意味での狙いに気付いた。
「これは……オベロナスの魔法陣!」
「くっ、ルシス様はお逃げ下さい! 貴方様がここで捕まっては!」
『もう手遅れです。飲み込め、異界の魔物により捕らえられるがいい』
 足元に浮かび上がった魔法陣から無数に出現する触手の様な存在に、ルシスの身体はあっという間に取り込まれてしまう。それを助けようと剣を振るうイシュにも触手が絡み付き身動きを取れなくしてしまえば2人は魔法陣の中に飲み込まれていった。
 玉座の間にてそれを水晶で見ていたヴェレネットは誰もいないこの玉座に座るべき存在であり、愛おしい存在のアガルダの事を想って1人静かに瞳を伏せる。自分に出来るのはアガルダの準備していた計画を遂行するだけ。
 そして、その計画は直に完結する。運命の者達を四天王達が止めきれるとは考えていない。
 そう、アガルダは事前にヴェレネットには自分の計画の中でも運命の者達の存在について色々と話をしていた。四天王は所詮時間稼ぎの駒でしかない事と、運命の者達こそが自分の完全体になる為のトリガーである事を。
「アガルダ様の計画に穴はない……。あの者達がここに到着するまでの時間稼ぎに四天王を宛がわれたのもそれが理由……。あの者達がここに到着した時こそが最後の時」
 ヴェレネットの双眸には涙が浮かんでいた。最近のアガルダを見て気付いている……アガルダは既にヴェレネットを”見て”いないのである。
 魔力が体内を満たしているせいか、自分の意識を制御する事が出来ないでいるアガルダを支えてきたが、その行為も既に義務化してきている。愛されていると信じているが、それでもこの不安は拭いされない。
 アガルダを想うからこそ、ルシスを捕らえるのも全ては愛するアガルダの完全体の為。完全体になればきっとまたアガルダは自分を見てくれる。
 そう信じるしか、ヴェレネットには何も寄る術が無いのである。アガルダの完全体までの時間稼ぎに配置された四天王をどれだけ素早く撃破出来るか、それはフェランド達に託されている――――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...