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7章
51話「四天王と激闘、生き残るのは誰だ」
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フェランド達は玉座の間に続く通路を駆けていた。目標としては四天王の撃破が一番に上がってくる、四天王を退けなければアガルダとのバトルには辿り着かない。
まず四天王の1人、予想に反してオベロナスとイルスールトが出迎える。フェランド達はこの四天王2人を目の前にしても臆する事もなく、真正面から向き合った。
「ようやくお出ましか。人間風情がちょこまかとネズミの様にすばしっこい」
「こちらも時間を与えてやるつもりはない。まとめて地獄に送って差し上げよう」
「ガイア、ルプスとジェイドと俺が残るから先に行って。必ず後から追い付くから」
「姉さん、ジェイド、無理はするなよ」
「ヴォルグも気を付けて」
「ガイア、奥に続く道はこのルート以外にもあったよね? そこを通って玉座の間に行って」
「お前達も無理はするなよ。行くぞヴォルグ」
ヴォルグを連れてガイアは迂回路を通って玉座の間に急ぐ。だが、これこそが四天王の目的でもあった。
アガルダ完全体になる為には時間が必要である。その為の戦力を分断させるのは四天王にとって団体戦より個人戦の方が自分達は有利に戦えるからであった。
ジェイドとルプスがオベロナスを、イルスールトはフェランドが対する。剣を引き抜いたフェランドがイルスールトとの間合いを図っているがイルスールトには構えの気配すら見られない。
オベロナスは魔法を使う為の詠唱こそしていないが、右手に持つ杖に怪しい光が宿っているのをジェイド達はしっかり確認している。そして、迂回路を通っていたガイアとヴォルグにも魔の手が忍び寄る。
玉座の間に通じる通路に出たと同時にアンデット部隊に囲まれた。ガイアはすぐに剣を引き抜きヴォルグと共にアンデット部隊を突破していく。
「読まれていたって事か」
「親玉の姿は見えねぇぞ?」
「我々の事かな?」
「「!!」」
「思っている通りに動くとは、やはり人間は愚かな餌だな」
声がする方向に視線を走らせたガイアは瞳を見開く。灰色の長い髪の毛を持った魔族、キャロドゼの姿と深い深海を思わせる蒼色の瞳を持つガイエリットが天井に立っていたのである。
アンデット部隊は2人の降りる場所を開けてガイア達への攻撃を止めた。恐らくこの場で戦いを始めるつもりなのだろう事はガイア達にも分かった。
その頃のフェランド達も戦闘開始の様にイルスールトは2本の双剣を取り出して構え、オベロナスは自分達に魔法を遮断する魔法を付与する。2か所の戦闘が始まりを告げた。
「まずはお前の四肢を奪い取ってまた味見をしてやらないとな」
「お生憎様、もうお前に抱かれるなんてお断りだ」
「そう言うな。俺のテクニックで昇天させてやってやるからよ……っと!」
「!!」
双剣が物凄い早さで振り下ろされて、フェランドは剣を横にしてその双バを受け止める。重い一撃ではあるがそれでもフェランドには余裕で受け止めれるだけの力はある。
オベロナスもまた詠唱を始めているがジェイドとルプスが接近戦に持ち込み、懐に忍び込むとオベロナスはニヤリと笑って杖でジェイドの顔を横殴りする。まさかの物理攻撃にジェイドは軽く距離を取ってダメージを軽くしたが、ルプスに次の攻撃が降り掛かる。
「おやおや、この程度の攻撃も予見できないのですか? 愚かな種族なのですねぇ?」
「くっ、ルプス気を付けて!」
「大丈夫!」
「大丈夫という言葉はこれを防いでから言うべきでは?」
「!!」
ルプスの顔の前に杖の先端が勝手に躍り出て魔法を放つ。咄嗟に反応したルプスは直撃を回避するが右側の目に暫く光が入らない状態の暗闇を患ってしまう。
ルプスの隣に並ぶジェイドが暗闇を解除使用と精霊に力を借りようとするが、オベロナスの魔法がそれを中断させて詠唱すらさせない早さでの魔法攻撃に取り掛かる。なんとか回避しながらまた懐に入り込もうとするルプスの援護をジェイドがしているが中々の早さの攻撃に懐に入り込む隙がない。
その頃のガイア達も接近戦のヴォルグがガイエリットの大斧を真っ向から受け止めて、地面に足を食い込ませている所であった。ガイアはキャロドゼと間合いを取りながら踏み込むタイミングを取ろうとしていた。
「聡明な軍師騎士のようではありますが、所詮人間。短命過ぎる生物にこそ支配があるべきだと何故に分からない」
「支配こそが全てだというのが明らかにおかしいんだよ。人間だろうが人狼だろうがエルフだろうが、それぞれの命を全うして初めて生きたって事だ。誰かの支配下にあれば長生き出来るって訳じゃない」
「それが愚かだというのだ。アガルダ様の支配に入ればその命を永遠のものとして過ごす事が約束されるというのに」
「……どういう事だ」
「アガルダ様のお力を持ってすれば、この世界の命の流れは変えられる。そして、その流れから逆らう様に生きれば生命は無限の輝きを放つという事だ。短命な人間にはさぞかし魅力的な存在であろう?」
キャロドゼの言葉にガイアは眉を思い切り寄せる。短命だというが人間だって100年を生きる者達もいる。
それに長く生きたエルフが話す事を聞いた事のあるガイアにとって、永遠の命など興味はあまりにも皆無であった。ガイアの反応を見たキャロドゼの瞳には同情の色が映る。
「お前は永遠の価値が分かっていないのだな」
「なんとでもいえ。俺はその人生分の命だけで充分だ」
「それがあの御子との永遠の別れだとしてもか?」
「なに……?」
「お前達が仮にアガルダ様を倒したとしても、あの男はお前とは同じ時を生きる事は出来ぬ。それが運命に縛られた者の定めだからよ」
キャロドゼの言葉にガイアは険しい瞳を向ける。だが、キャロドゼの言葉は止まらない。
それどころか、ガイア達の知らない真実をキャロドゼは話し始める。それはガイアも薄々は感じていた疑問でもあった。
「お前とあの男が何故に世界樹の騎士の跡を継げれたか。それはお前達が次期に世界樹のあの少女の運命と同じ運命を辿るからだと気付いているだろうに」
「だから俺達はその運命を変えてアガルダを倒すんだ」
「それは不可能だな。なんせこの状態を招いたのは誰でもない……世界樹なのだからな」
「!!」
「世界樹は都合のいい様に我々を使っている。それはお前達に関しても同じだ。アガルダ様の力、世界樹の力、マナの聖樹の力、一体どの力が全て何から生まれ、何へと帰っていくのか……。お前は薄々気付いているのではないのか?」
ガイアの瞳が大きく見開かれていく、だがキャロドゼはその動揺すらも作戦だと見抜いていた。ガイアの剣先がキャロドゼに向けられているのだから用心しているのは分かる。
キャロドゼとガイアの攻防を他所にヴォルグは重たい大斧を何回でも受け止めて、その度にガイエリットの懐に潜り込んでは大剣で切り上げてダメージを与えてはいた。だが、防具の差かそれとも武器の性能の差か、思った以上のダメージは与えられていない。
ガイエリットの大斧がヴォルグの胴体に向かって振り払われる。それを後ろに飛び退いて回避するが寸での部分で服が裂けた。
「中々にやりよる。人狼と思って甘く見ていたのは修正するべきか」
「お前の大斧は動きが思っている以上に繊細だから、よく見てねぇと俺の方がダメージがデカい。だが、動きを見極めてしまえば俺にだって回避の1つくらいは出来るからな!」
「そうか……見極めればか。ならば、これはどうかな?」
「!?」
ガイエリットの大斧が振り下ろされると同時に二枚刃が分裂する。まるで斧自体に自我があるの様な分裂の仕方にヴォルグも驚愕の表情を浮かべている。
斧の刃が分裂した斧を勢いを殺さずに更に横へと薙ぎ払うガイエリットの攻撃に、ヴォルグもすぐに適応していくが身体には徐々に傷が付く様になっていく。ジリジリと体力と力の差を知らされるヴォルグは自分の身体を奮い立たせる様に瞳に力を込めていく。
5人のバトルが始まっている頃、ヴェレネットに捕らえられたルシスはイシュの目の前でヴェレネットの手により裸にされていた。イシュの身体には触手が絡み付いており身動きが取れない状態になったままである。
「くっ……」
「なんと素晴らしい……本当にアガルダ様と瓜二つなのですね。この身体にアガルダ様のマナが侵食すれば完全体にまでもう少しという事ですか」
「ルシス、様!」
「完全体にさえなってしまえば……きっとアガルダ様は私を見て下さる……もう一度愛して下さる……」
「ヴェレネット様……どうかお考え直し下さい。アガルダは完全体になったとて貴女を見る事はもう無いのですよ……!」
「そんなのは分からないでしょ……ルシス様、貴方様が大人しくアガルダ様のお身体の一部になれば自我がお戻りになるかもしれない……その時に私の事をまた見て下されれば……また私はアガルダ様の傍で大輪の花として生きていける……」
ヴェレネットの瞳には不安と悲しみが宿っているのをルシスは見抜いていた。そして、頭上で縛りあげている触手にマナを注ぎ込みながらヴェレネットの説得を試みる。
このままではヴェレネットの精神も心もアガルダのせいで壊れてしまう。それはルシスは嫌だったのだ。
「ヴェレネット様……私ではいけないのですか……?」
「……えっ……」
「アガルダではなく、私では貴女の心を癒せませんか?」
「なに、を……」
「私はアガルダと瓜二つ、異なるのは性格のみ。どうか一時的な代用品でもいい。貴女を守る存在にさせてはもらえませんか?」
「い、命乞いの為に私を惑わせる様な発言をされないで! 私は、私はアガルダ様の巫女で、アガルダ様に愛された……!」
「現実を見て下さい! 貴女は本当に今、自分の事を愛されていると実感していますか?」
「っ……それ、は……」
ヴェレネットの瞳には動揺と悲しみが入り乱れている。イシュにもそれが分かったのだろう、ルシスとの会話を遮る事はしなかった。
ヴェレネットの事をルシスはアガルダ以上に大事にしている。それはヴェレネットの中でも分かっている事ではあったのだろう、ルシスの言葉に明らかに揺れている。
四天王との激闘を繰り広げているフェランド達、そして、ルシスの言葉で揺れているヴェレネットとルシスの攻防戦、一体どうなっていく――――?
まず四天王の1人、予想に反してオベロナスとイルスールトが出迎える。フェランド達はこの四天王2人を目の前にしても臆する事もなく、真正面から向き合った。
「ようやくお出ましか。人間風情がちょこまかとネズミの様にすばしっこい」
「こちらも時間を与えてやるつもりはない。まとめて地獄に送って差し上げよう」
「ガイア、ルプスとジェイドと俺が残るから先に行って。必ず後から追い付くから」
「姉さん、ジェイド、無理はするなよ」
「ヴォルグも気を付けて」
「ガイア、奥に続く道はこのルート以外にもあったよね? そこを通って玉座の間に行って」
「お前達も無理はするなよ。行くぞヴォルグ」
ヴォルグを連れてガイアは迂回路を通って玉座の間に急ぐ。だが、これこそが四天王の目的でもあった。
アガルダ完全体になる為には時間が必要である。その為の戦力を分断させるのは四天王にとって団体戦より個人戦の方が自分達は有利に戦えるからであった。
ジェイドとルプスがオベロナスを、イルスールトはフェランドが対する。剣を引き抜いたフェランドがイルスールトとの間合いを図っているがイルスールトには構えの気配すら見られない。
オベロナスは魔法を使う為の詠唱こそしていないが、右手に持つ杖に怪しい光が宿っているのをジェイド達はしっかり確認している。そして、迂回路を通っていたガイアとヴォルグにも魔の手が忍び寄る。
玉座の間に通じる通路に出たと同時にアンデット部隊に囲まれた。ガイアはすぐに剣を引き抜きヴォルグと共にアンデット部隊を突破していく。
「読まれていたって事か」
「親玉の姿は見えねぇぞ?」
「我々の事かな?」
「「!!」」
「思っている通りに動くとは、やはり人間は愚かな餌だな」
声がする方向に視線を走らせたガイアは瞳を見開く。灰色の長い髪の毛を持った魔族、キャロドゼの姿と深い深海を思わせる蒼色の瞳を持つガイエリットが天井に立っていたのである。
アンデット部隊は2人の降りる場所を開けてガイア達への攻撃を止めた。恐らくこの場で戦いを始めるつもりなのだろう事はガイア達にも分かった。
その頃のフェランド達も戦闘開始の様にイルスールトは2本の双剣を取り出して構え、オベロナスは自分達に魔法を遮断する魔法を付与する。2か所の戦闘が始まりを告げた。
「まずはお前の四肢を奪い取ってまた味見をしてやらないとな」
「お生憎様、もうお前に抱かれるなんてお断りだ」
「そう言うな。俺のテクニックで昇天させてやってやるからよ……っと!」
「!!」
双剣が物凄い早さで振り下ろされて、フェランドは剣を横にしてその双バを受け止める。重い一撃ではあるがそれでもフェランドには余裕で受け止めれるだけの力はある。
オベロナスもまた詠唱を始めているがジェイドとルプスが接近戦に持ち込み、懐に忍び込むとオベロナスはニヤリと笑って杖でジェイドの顔を横殴りする。まさかの物理攻撃にジェイドは軽く距離を取ってダメージを軽くしたが、ルプスに次の攻撃が降り掛かる。
「おやおや、この程度の攻撃も予見できないのですか? 愚かな種族なのですねぇ?」
「くっ、ルプス気を付けて!」
「大丈夫!」
「大丈夫という言葉はこれを防いでから言うべきでは?」
「!!」
ルプスの顔の前に杖の先端が勝手に躍り出て魔法を放つ。咄嗟に反応したルプスは直撃を回避するが右側の目に暫く光が入らない状態の暗闇を患ってしまう。
ルプスの隣に並ぶジェイドが暗闇を解除使用と精霊に力を借りようとするが、オベロナスの魔法がそれを中断させて詠唱すらさせない早さでの魔法攻撃に取り掛かる。なんとか回避しながらまた懐に入り込もうとするルプスの援護をジェイドがしているが中々の早さの攻撃に懐に入り込む隙がない。
その頃のガイア達も接近戦のヴォルグがガイエリットの大斧を真っ向から受け止めて、地面に足を食い込ませている所であった。ガイアはキャロドゼと間合いを取りながら踏み込むタイミングを取ろうとしていた。
「聡明な軍師騎士のようではありますが、所詮人間。短命過ぎる生物にこそ支配があるべきだと何故に分からない」
「支配こそが全てだというのが明らかにおかしいんだよ。人間だろうが人狼だろうがエルフだろうが、それぞれの命を全うして初めて生きたって事だ。誰かの支配下にあれば長生き出来るって訳じゃない」
「それが愚かだというのだ。アガルダ様の支配に入ればその命を永遠のものとして過ごす事が約束されるというのに」
「……どういう事だ」
「アガルダ様のお力を持ってすれば、この世界の命の流れは変えられる。そして、その流れから逆らう様に生きれば生命は無限の輝きを放つという事だ。短命な人間にはさぞかし魅力的な存在であろう?」
キャロドゼの言葉にガイアは眉を思い切り寄せる。短命だというが人間だって100年を生きる者達もいる。
それに長く生きたエルフが話す事を聞いた事のあるガイアにとって、永遠の命など興味はあまりにも皆無であった。ガイアの反応を見たキャロドゼの瞳には同情の色が映る。
「お前は永遠の価値が分かっていないのだな」
「なんとでもいえ。俺はその人生分の命だけで充分だ」
「それがあの御子との永遠の別れだとしてもか?」
「なに……?」
「お前達が仮にアガルダ様を倒したとしても、あの男はお前とは同じ時を生きる事は出来ぬ。それが運命に縛られた者の定めだからよ」
キャロドゼの言葉にガイアは険しい瞳を向ける。だが、キャロドゼの言葉は止まらない。
それどころか、ガイア達の知らない真実をキャロドゼは話し始める。それはガイアも薄々は感じていた疑問でもあった。
「お前とあの男が何故に世界樹の騎士の跡を継げれたか。それはお前達が次期に世界樹のあの少女の運命と同じ運命を辿るからだと気付いているだろうに」
「だから俺達はその運命を変えてアガルダを倒すんだ」
「それは不可能だな。なんせこの状態を招いたのは誰でもない……世界樹なのだからな」
「!!」
「世界樹は都合のいい様に我々を使っている。それはお前達に関しても同じだ。アガルダ様の力、世界樹の力、マナの聖樹の力、一体どの力が全て何から生まれ、何へと帰っていくのか……。お前は薄々気付いているのではないのか?」
ガイアの瞳が大きく見開かれていく、だがキャロドゼはその動揺すらも作戦だと見抜いていた。ガイアの剣先がキャロドゼに向けられているのだから用心しているのは分かる。
キャロドゼとガイアの攻防を他所にヴォルグは重たい大斧を何回でも受け止めて、その度にガイエリットの懐に潜り込んでは大剣で切り上げてダメージを与えてはいた。だが、防具の差かそれとも武器の性能の差か、思った以上のダメージは与えられていない。
ガイエリットの大斧がヴォルグの胴体に向かって振り払われる。それを後ろに飛び退いて回避するが寸での部分で服が裂けた。
「中々にやりよる。人狼と思って甘く見ていたのは修正するべきか」
「お前の大斧は動きが思っている以上に繊細だから、よく見てねぇと俺の方がダメージがデカい。だが、動きを見極めてしまえば俺にだって回避の1つくらいは出来るからな!」
「そうか……見極めればか。ならば、これはどうかな?」
「!?」
ガイエリットの大斧が振り下ろされると同時に二枚刃が分裂する。まるで斧自体に自我があるの様な分裂の仕方にヴォルグも驚愕の表情を浮かべている。
斧の刃が分裂した斧を勢いを殺さずに更に横へと薙ぎ払うガイエリットの攻撃に、ヴォルグもすぐに適応していくが身体には徐々に傷が付く様になっていく。ジリジリと体力と力の差を知らされるヴォルグは自分の身体を奮い立たせる様に瞳に力を込めていく。
5人のバトルが始まっている頃、ヴェレネットに捕らえられたルシスはイシュの目の前でヴェレネットの手により裸にされていた。イシュの身体には触手が絡み付いており身動きが取れない状態になったままである。
「くっ……」
「なんと素晴らしい……本当にアガルダ様と瓜二つなのですね。この身体にアガルダ様のマナが侵食すれば完全体にまでもう少しという事ですか」
「ルシス、様!」
「完全体にさえなってしまえば……きっとアガルダ様は私を見て下さる……もう一度愛して下さる……」
「ヴェレネット様……どうかお考え直し下さい。アガルダは完全体になったとて貴女を見る事はもう無いのですよ……!」
「そんなのは分からないでしょ……ルシス様、貴方様が大人しくアガルダ様のお身体の一部になれば自我がお戻りになるかもしれない……その時に私の事をまた見て下されれば……また私はアガルダ様の傍で大輪の花として生きていける……」
ヴェレネットの瞳には不安と悲しみが宿っているのをルシスは見抜いていた。そして、頭上で縛りあげている触手にマナを注ぎ込みながらヴェレネットの説得を試みる。
このままではヴェレネットの精神も心もアガルダのせいで壊れてしまう。それはルシスは嫌だったのだ。
「ヴェレネット様……私ではいけないのですか……?」
「……えっ……」
「アガルダではなく、私では貴女の心を癒せませんか?」
「なに、を……」
「私はアガルダと瓜二つ、異なるのは性格のみ。どうか一時的な代用品でもいい。貴女を守る存在にさせてはもらえませんか?」
「い、命乞いの為に私を惑わせる様な発言をされないで! 私は、私はアガルダ様の巫女で、アガルダ様に愛された……!」
「現実を見て下さい! 貴女は本当に今、自分の事を愛されていると実感していますか?」
「っ……それ、は……」
ヴェレネットの瞳には動揺と悲しみが入り乱れている。イシュにもそれが分かったのだろう、ルシスとの会話を遮る事はしなかった。
ヴェレネットの事をルシスはアガルダ以上に大事にしている。それはヴェレネットの中でも分かっている事ではあったのだろう、ルシスの言葉に明らかに揺れている。
四天王との激闘を繰り広げているフェランド達、そして、ルシスの言葉で揺れているヴェレネットとルシスの攻防戦、一体どうなっていく――――?
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