騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

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8章(ラスト)

57話「希望の騎士と運命の御子の力」

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 フェランドとガイア、ルプスとヴォルグ、ジェイドとイシュの6名が魔神竜と合体した魔神アガルダの前に立ちはだかる。アガルダも最期の戦いだと認識しているのであろう、魔神竜の力を最初から最大に引き出してフェランド達に襲い掛かってくる。
 尻尾の薙ぎ払いをガイアとヴォルグが空に飛んで回避、ルプスとフェランドは範囲外に避難で回避、ジェイドとイシュは元々範囲内には入っていなかった。ガイアとジェイドの協力攻撃が始まる。
 ジェイドの闇の力を受けた矢がアガルダの胴体に当たる、そこにガイアの光の力を受けた剣が切り裂く。そこに調和の力が生み出されてアガルダに確かなダメージを与えて行く。
 ヴォルグとルプスが姉弟の息で合わせた魔法攻撃が炸裂。光と闇の聖魔魔法でアガルダのマナを削っていく。
 イシュとフェランドは接近戦に持ち込み、アガルダの尻尾を踏み台にして空に跳躍。空中で体勢を整えて落下と同時に肩口から胴体に切り付ける。
『ぐっ! まだだ、まだこの程度何の事もない! 死ねぇぇ!』
「姉さん!」
「皆、下がって!」
 ヴォルグが叫ぶと同時に全員がルプスの生成したバリアの中に落ち着く。ルプスの生成したバリアにアガルダの口から吐き出された闇のブレスが直撃する。
 ブレスがバリアを上回る事はなかったが生成して維持していたルプスのマナがある程度削られてしまう。ジェイドがマナ回復の効果のある液体をルプスに飲ませている間に、ヴォルグとフェランドが突撃していく、置くれてイシュとガイアも突撃する。
 アガルダは翼を大きく動かして後方に下がるとマナを集めて自分の前に巨大な壁を生成。その壁に守られている間にマナを再構築し、強烈な攻撃魔法を詠唱し始める。
「ガイア! 合わせて!」
「任せろ!」
 フェランドとガイアが壁を飛び越えてアガルダの構築しているマナに光と秩序の力をぶつける。その結果、構築されていたマナに乱れが生じて散ってしまえばアガルダの怒りは最大にまで昇り詰める。
 その隙を突いてイシュとヴォルグがアガルダの胴体に深々と切り込んで行く。胴体から鮮血を流しながらもアガルダは両手を使ってヴォルグとイシュを捕まえると握り潰そうと力を込めて行くが、そこにガイアとフェランドの攻撃が入る。
「はぁぁぁぁ!」
『ちっ! 小癪なぁぁぁぁぁ!』
「そこだぁぁぁ!」
 ガイアの剣がアガルダの額に突き刺さり、フェランドの剣が右目を潰す。それでもなおアガルダの猛攻は止まらない。
 しばしの混戦が続く中でルプスがマナを回復させたと同時にメンバー全員に回復魔法を付与。アガルダの猛攻に耐えていた5人は身体の傷が癒されたのをキッカケに反撃へと転ずる。
 イシュとジェイドが尻尾の切断に挑み、ヴォルグとガイアが胴体への攻撃、フェランドは一度引いてマナを高め始める。ルプスがフェランドの前に立ってバリアを生成し守護の体勢に入るとアガルダはガイア達を放置してバリアの破壊へと意識を向ける。
『させぬ! これで焼き尽くしてくれるわ!』
「ルプス!」
「大丈夫! フェランドはマナを高めて!」
 アガルダの口から闇の球が集まり線状になってバリアを攻撃し始める。ルプスは限界を超えても決してバリアを解除する事は無かった。
 フェランドのマナが高まり6人全員に調和と秩序の力が付与されると、空に光が立ち込める。そこにフェランドの声が飛ぶ。
「神々と世界樹よ! 今こそこの暗黒の時代を支配していた魔神アガルダの運命を終わらせる為に皆の力を使いここに雌雄を決めん! 希望の御子としてこの剣に力を集め、魔神を討つ力を与えたまえ!」
『ぬぅぅ! させぬ! させぬぞ!!!』
「ガイア! 行け!」
「イシュ、2人の援護を!」
「了解しました! ガイア様、背後はお任せを!」
「行くぞ!!」
 ガイアの足が地を蹴り、イシュに背後を任せてアガルダの心臓を狙って剣を握り締めて近付く。フェランドも剣に力を集めて宿すとガイアの動きに合わせて心臓を狙いに走り出す。
 アガルダがマナで生み出した魔物達を時間稼ぎの為に前面に配置するが、そこはジェイドとヴォルグが蹴散らす。イシュがガイアの背後を狙う魔物達を一掃し、ガイアとフェランドが合流を果たすと2人は転生者の輝きを解放。
 強い希望を宿す光が2人を包み込み、アガルダの生み出す魔の力を中和していって2人の剣がアガルダの、魔神竜の心臓に突き刺さる。そして、刺さった場所から光が、秩序と調和の力が体内に流し込まれて、内部から光が爆発し始める。
『うぉぉぉぉぉぉ!!』
「これで……!」
「最期だぁぁぁぁぁ!!」
 アガルダの雄叫びを聞きながら、光を最大にまで強めたガイアとフェランドの攻撃はアガルダの身体である魔神竜の身体を消滅に至らしめた。徐々に魔神竜の身体が消えていく中でアガルダは自分の運命が覆らなかった事を知る。
 魂だけの存在になった時にアガルダは自身を迎えに来ている御手に気付いた。その御手は優しく温かく、そして愛おしく触れてくる。
『(あぁ、これが私が本当に求めていたもの……私は貴女の元に還れるのだな)』
『よく長い時間を耐えました。そして、待たせてしまった事を許して下さい。さぁ、私の元にお帰りなさい』
 御手の声がそっとアガルダの魂を包み込む。そして、御手は静かにアガルダの魂を包み込んで消えていく。
 全員が肩で息をしている中、ガイアとフェランドも地面に身体を座らせて呼吸を整えていた。激闘は終わった、アガルダを倒した手応えは確かに感じている。
 力の使い過ぎたガイアとフェランドは立ち上がれないままで空を見上げていた。赤く染まっていたオジナルの空はいつの間にか赤い空ではなく、青空が広がっている。
 ヴォルグはルプスを、イシュとジェイドがガイアとフェランドの元にやってきて支えてくれながら立ち上がらせてくれた。徐々に何かの崩れる音が聞こえてくる。
「城が崩壊し始めたんだ」
「このままで城と共に果てなくてはなりませんね」
「それは嫌だな。どうするよ?」
「今走れるのは誰もいない。このままだと危ない」
「その心配はないよ。ほら、あそこ」
「あ、バルシスだ」
 フェランドの指差す方角に全員が顔を向けると、大きな翼を動かして飛んできた破壊竜バルシスが全員の前に降り立つ。フェランドとの約束を果たす為に飛んで来てくれたのである。
 ルシスが1人ずつバルシスの背に乗せて、全員が乗ったのを確認してバルシスに告げる。ルシスの言葉に従ってバルシスは翼を動かして崩壊を始めているオジナル城から脱出した。
 城下町にも被害が及んでおりバルシスは郊外の平地に降り立つ事にした。平地に降り立った7人はバルシスから降りるとオジナルの国が終わるのを見届ける。
「ルシス様!」
「ヴェレネット様。ご無事で良かった」
「約束を、守って下さったのですね」
「えぇ、貴女を1人にはしないとお約束しましたから」
 平地から離れた位置からバルシスの姿を見てやってきたヴェレネットはルシスに向き合う。考えればヴェレネットも利用されていただけの哀れな女性であるとフェランドは考えていた。
 アガルダという存在に魅了されて力を、国を捧げたこの女性はこれから多くの罪を償いながらルシスと共に生きていく事になるだろう。だが、それもルシスと共にあればいつかは償い終えるだろうとフェランドは信じている。
 ガイアはフェランドの隣に立ってそっと右手を握り締める。その手を握り返して2人は空を見上げたまま無言で寄り添っていた。
『御子と希望の騎士』
「なんだいバルシス」
『魂の解放が迫っているのではないか?』
「そうだな。アガルダを倒した今、俺達の魂も本来の器に戻らないといけないんだった」
「それって……フェランドとガイアはどうなるの?」
「まさか死んじまうって事はないよな?」
「でも、元の器に戻らないといけないって……」
『魂の解放とは、今の持ち主の魂から前世の魂を引き離し、浄化させて転生を促す事を言う。だが、一時的に今の器に負荷を掛けるので行動は出来ない程の消耗はしてしまうがな』
「それでもコーネルドとガラハッドの魂を解放して、転生させてあげられるなら俺達は魂の解放をするつもり」
「元々、俺達の器に収まる魂じゃないしな」
 アガルダのマナに侵食されてしまっていた魂を、エヴァとアルフォードが命を掛けて闇を祓い、そして、今魂の解放が始まろうとしている。ガイアの左手を握り締めたままのフェランドがチラッとガイアの横顔を盗み見る。
 それはガイアも同じだったのか、フェランドの視線とガイアの視線が混ざり合ってお互いに微笑みを浮かべた。そして、身体中から光が溢れ始めて……体内にぽつんと光の球体が生まれたのを2人は感じ取っていた。
『君が俺の転生した魂か! ありがとう、俺の、俺達の願いを叶えてくれて』
「貴方がガラハッドさん? でも、2人の願いをちゃんと叶えられたかまでは自信がないですけれど」
『充分に叶えてくれた。アガルダを倒してオルガスタン大陸の未来を切り開いてくれた事が何よりの証拠だ。そして……コーネルドの魂の転生者とも繋がってくれた』
「それは貴方達の願いとは別です。俺は俺の意思でガイアを愛して受け入れたから」
『その愛情があったからアガルダの魂を救えたんだ。君も気付いているだろう? アガルダの悲しみがどれだけ深かったのかを』
「えぇ、だから彼の魂も解放したかった。それが結果としてオルガスタン大陸の未来を切り開く事に繋がっただけです」
『それで良かったんだ。さぁ、俺とコーネルドは転生する為に浄化される。君と最期にこうして話せて良かった。ありがとう、俺の、俺達の魂を救いし騎士達』
 ガラハッドの声が消えて光の球体が空に舞い上がっていく。それを見送ったフェランドは静かに瞳を閉じるとガラハッドの魂の冥福を祈った。
 ガイアが先に意識を取り戻していたのか、フェランドが意識を取り戻すとガイアの腕の中に収まっているのに気付く。2人は地面に座り込んで疲労から動けない状態になっていた。
 これで魂の解放は終わった。仲間達も安心したように2人の周りに座って身体を休めるのであった――――。
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