私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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1章

2話「聖騎士団長の初任務」

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 ティクス国の神聖騎士団長ランスロットの事は国内外にすぐに広まり、そして同時にティクスの強靭な聖騎士団を率いている男性である事に色々と注目が集まるのは致し方ない。ランスロットの身体はティクス城の渡り廊下にあった。
 両腕一杯に書物を抱えて書庫から出てきたランスロットは、書物を持ったままその足で団長室へと足を進めて行く。団長として本日初登城をしたランスロットは手始めに団の規則や城の中での規則を把握するべく、書類を集めて読破する事を考えて書庫から書類を集めて団長室に運んでいる最中であった。
 団長室にはまだランスロット以外の姿は見られず、腕に抱えていた書物を机に置いたランスロットはそのシルバーの髪の毛を軽く後ろに流して椅子に座って早速書物を開き、集中して規約の確認を始めて行く。パラっと捲りながら規約の内容を確認しているとコンコンとドアがノックされて数人の人間達が入ってくる。
「失礼致します」
「貴方達は?」
「今日からランスロット団長が執務を執り行うと聞きまして馳せ参じたのです。私は占星術師ローレンスと申し上げます。そして、彼らはランスロット団長の右腕、左腕になる親衛騎士のガルドとハルウッド、そして、風読み師のロルゾでございます」
「お初にお目に掛かります。親衛騎士を努めますハルウッドと申し上げます。この度、ランスロット団長の親衛を努める事になりました。色々と騎士達との橋渡しも必要かと思います。どうか私に色々とサポートさせて下さい」
「俺はガルドと言う者だ。団長の親衛をさせてもらうが、あまり背負いこまないでマイペースにやっていこうぜ!」
「他の3人と身分は異なるけれど、一応騎士団に身を置くんだが風を読む事を生業にしているロルゾだ。聞いた事はあるか分からないが、風を読んで天候を見極めるいわば天気予報士だと思ってくれりゃあいい」
「そうでしたか。色々と未熟な部分もありますが皆さんのサポートを受けながら頑張りますので、どうかご指導をお願いします」
 ランスロットが椅子から立ち上がりローレンス達に頭を下げるとローレンス達も微笑みを浮かべながらランスロットの律儀さに嬉しくなるのであった。そして、5人は団長室でそれぞれの机に座り色々とサポートを受けながらランスロットは団長としての仕事に身を入れる事にした。
 まず手始めに。ローレンス達の案内を受けて騎士団の騎士達が寝泊りしている宿舎と鍛錬上へ足を向けたランスロットはそこで騎士達との交流を取る事を考える。
「皆、団長の話を聞いて下さい」
「あ、ランスロット団長だ。おはようございます!」
「おはようございます団長!」
「皆さん、おはようございます。今日から団長として皆さんとこのティクス国を守って行く事になります。まだまだ未熟で色々と目に余る事もあるかも知れませんが、何ともご指導をお願いしますね」
 物腰が低く、上からの話し方じゃないランスロットの言葉にその場にいた騎士達はすぐに心を寄せては慕うようにランスロットの周囲に集まってくる。ハルウッドが騎士達を捌きながらランスロットの身を守っているとローレンスとロルゾは少し離れた位置からその様子を微笑みながら見守っていた。
 そして、次に訪れたのは食堂。ここは城の大食堂なので身分関係なく誰でも利用出来る大事な場所とも言える。
 ガルドが配膳をしている者達にランスロットの事を知らせると場はすぐに賑やかになり、厨房の者達もこぞってランスロットの元に集まる。ここでもハルウッドが人を制しながらランスロットを守り、ガルドはある程度してから集まってきた者達を諭して仕事に戻らせた。
「こんなにも人々から歓迎されるとは、ロゼット様のお仕事の有能ぶりが伺えますね」
「そうだと思うだろうが、これはあくまでランスロットが人望ある証拠だからな? なぁ、ローレンス」
「はい。今までの者達は少なからずロゼット様の後を継いだランスロット様の事を受け入れている者達です。ですが、これから向かう所の者達はロゼット様の事を崇拝し、敬愛し、未だにロゼット様の事を慕って止まない者達の場所でございます。手厳しい言葉が来る事はご理解を」
 ロルゾとローレンスの言葉にハルウッドとガルドも深く頷く。そしてランスロットも4人の表情と言葉から今向かっている場所の者達と信頼関係を築く事が一番に大事な事であると密かに考えていた。
 訪れたのはティクス国の中でもあまり人が来る事もない路地裏の奥にあるスラム街。ランスロットとローレンス達はそのスラム街に足を踏み入れて歩いていたが人の姿は見えないのに敵対心の籠った視線はヒシヒシと感じているのはランスロットにも分かる。
「失礼。この場所はやはり……」
「はい。ティクス国の”闇”と言うべき場所です。ここの存在を知らないとは言えますまい。ですが、ロゼット様の事を慕う者達が多くいるのもまた事実なのです」
「よそ者だという言葉をいう者達が多くいます。ロゼット様を押し退けて団長の座についてランスロット様の事を快く思わない者達が主ですが、彼らの事を知り、信頼を得る事はロゼット様の役目を継ぐ意味では大事な意味を持ちます」
 ローレンス達の言葉にランスロットも身を引き締める。自分にはまだ彼らを率いるのは肩書だけであり、そして、彼らもまたまだランスロットを正式には”認めて”いないのも感じ取っていた。
 そして、このスラム街で出会っていく人々は皆がランスロットに不審な瞳を向けてくる。信じれない・怖い・他人の意味を込められた瞳にランスロットは正面から向き合う姿勢を見せる。
 一組の親子がランスロットの前に姿を見せる。どうやら子供が怪我をして金を貰おうとしに姿を見せた事がランスロットには分かった。
「ロゼット様なら私達にお金を下さる。貴方にそれは出来て?」
「ロゼット様は僕達にいつも言ってくれる! 困ったら自分達を頼れって!」
「ふむ、見た限りお怪我をしているのはそのお子さんですよね? 少し怪我を見せてもらっても?」
「えっ……えぇ、構わないわ。どうせ見るだけしか出来ないのでしょうから」
 女性の腕に抱かれている1歳ぐらいの子供の右腕に巻かれたぼろ布からはまだ綺麗に手当てされたとは言い難い火傷の怪我が見受けられた。ランスロットはその火傷を見て右手を翳してある言葉を口の中で唱え、光を生み出すと火傷を光で包み込んだ。
 これにはその場にいた誰もが言葉を失くす。本来、騎士団長には回復の魔法を使用する事が出来る者が主に団長を務めるが、ロゼットには治癒の魔法は持ち合わせてなかった。
 それも含めてロゼットはスラム街には魔法ではなく、物資、金の流用で信頼を勝ち得ていたのをランスロットは事前に規約の本に記されているのを頭に叩き込んでいた。だが、それで勝ち得た信頼はいつかは崩れ去って行く事もロゼットは危惧していた事も書かれていた事も踏まえてランスロットはこの方法で信頼を築く事にした……魔法での回復や治療である。
「あ、お母さん! この子の火傷治っている!!」
「そんな……こんな私達に魔法を使うなんて……どうかしているわ」
「そう思われても仕方ないです。ですが、医者ではその子の火傷は治せても痕までは消せなかったでしょう。女の子ですよね? 幼い頃の痕で大人になった時のショックは考えたら辛いものがあります。なら魔法で治癒出来るのであれば魔法を使う事は当たり前ではありませんか? 偽善かも知れませんが、私はこの女の子の未来の為なら使用する事を厭いません」
「……変な人」
「そうね……ロゼット様とは違うけれどまだ信用出来るとは限らない。本当にその心が偽善でないというのであればどうかこのスラム街の闇を見て行くといいわよ」
「スラム街の闇、ですか。どの様な闇であろうと私は照らして払って見せましょう」
 親子は一応的な挨拶をして立ち去っていく。簡単に信頼を築けるとはランスロットも考えている訳ではない。
 このスラム街がある事でティクス国も穏やかな市民の暮らしが出来ているのもまた事実である事はランスロットにも理解出来ている。実際、ロゼットが信頼を築けていたから表立ってスラム街の者達が街で暴動や犯罪を起こす事は少なかったのも分かるのだ。
「私はロゼット様の様に信頼を目に見えて築けるような器用さはありませんが……人と人はきっと分かり合えると信じています。それが方法は違えど信頼を築く事の中で得て行ける事であるのであれば私は時間と労力を割いてでもこのスラム街の方々と向き合っていくつもりです」
 ローレンス達の前でそう告げるランスロットにも決意はあった。団長としてこのスラム街の事はしっかりと受け入れて、そして、考えていくべき事である。
 ロゼットとは異なった方法で信頼を勝ち得て行く為にもまずは自分の土台を国内に築かないといけない事も。初登城したその日、執務も終わりを迎える夕方頃であった。
 ランスロットはローレンス達の言葉を受けてもまだ調べていない事を調べる為に書庫にいた。ローレンス達のサポートを受けながら調べていたのはティクス国に伝わる5大神聖武器の行方。
 ティクス国の創世期に5人の騎士達により神々から与えられた神聖武器は、その存在が実際に確認されて保護されていたのは創世期から今世紀までの間の400年だけである。その5大武器をランスロットはまたティクス国に安置する事を考えていたのである。
「やはりそれぞれの神聖武器の所在は書かれておりませんね」
「最後の判明している武器の行方も今は判明出来ない地区ですし、詳細を調べるにはこの書庫の情報だけでは無理かと」
「そうなってくると、市民達も出入りする市民図書館もアウトだな?」
「可能性的に古代図書館か、それかこの大陸中の情報が集まるギルドに情報開示を求めるかしかねぇんじゃないか? ロルゾの一族にも分からんだろう?」
「俺の一族は神聖武器の元である輝きの素材を守る一族だから、本体である神聖武器には未関与なんだよな。でも長達なら何かしら知っている可能性もあるが」
「まずは5大神聖武器の現状を知りたいですね。そして、私の一族が守護していた「アルボリス」の事についても知らないといけませんが……」
 そう、ランスロットの一族であるエルンシア一族が守護していた神聖武器「アルボリス」。それを最後の人間として手に求める事は当たり前の事かも知れない。
 そして、結果としてその行動の果てにティクス国の安泰はあるのだろうからとランスロットの脳裏にはそう浮かんでいた。そして、その日の執務は終わりを告げるのであった――――。
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