私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

文字の大きさ
5 / 107
1章

4話「始まりと改革は速やかに」

しおりを挟む
 ランスロットが登城する為には屋敷から徒歩で城まで来る事が多い。だが、それを良しとは思わないのがローレンス達であった。
 団長ともあるランスロットが徒歩で城に上がる事は見た目でもあまりよろしいとは言えないと考えて迎えの騎士達を用意する事をランスロットに進言し始める。だが、ランスロットは首を横に振ってそれをやんわりと拒んでしまう。
「どうして拒むんだよ! 団長ともある人間が徒歩で上がるなんてあまりよろしくないのは分かるだろうが!!」
「そうですよ。何かご理由があるのですか?」
「正直まだ俺にはその様な待遇を受けれる程の人間じゃない。それに城に上がるまでに市民の人々達が暮らしている市街を歩くのも案外悪いとは思えないんだ」
「ですが、何かあったらどうするのですか? 貴方の身は1人の身体ではないのですよ」
「それにだ、火急の用事がある時はどうするんだ? 馬車での移動が早いと言うのもあるんだぞ」
「その時は打てる方法があるだろう? とりあえず迎えはいらない。俺は1人で大丈夫だ」
 ランスロットは先日のロルゾとガルドを始めとする仲間達から口調を変える様に言われてからは出来るだけ口調を崩しているが、この件については頑なに拒んでいた。毎日言い続ければ諦める、そう思ってロルゾ達は毎日言い続けているが既に2週間もこのやり取りが毎朝のルーティン化し始めていたのである。
 だが、ある日ランスロットが頑なに迎えを拒む理由を知る事になるロルゾ達はその理由に罰が悪くなる。ランスロットが歩いて城に上がっているのはこのティクス国にいると言われている妹の存在を少しでも探す為に市民達に情報を求めている、そう国王であるケンベルトから聞いたローレンスがロルゾ達に話したのである。
「それじゃランスロットが頑なに拒んでいるのは妹の行方を調べる為だった、って事か……そうならそうと言えばいいじゃねぇか……」
「ランスロット様が団長としての執務の合間に探されないのは公私混同しない為だとお伺いしています。だから城に上がる僅かな時間で探す様にしていると言うのであれば私達はランスロット様の事を邪魔していた事になります。まさかその様な理由があったとは」
「でもよ、どうして騎士団総出で探さないんだ? 公私混同しないのは立派だとは思うが大事な妹なんだろう? それこそ国王陛下が存じているんだ、騎士団を使うのは間違いじゃないだろうよ」
「それをしないのは団長のプライドと言うべきかも知れません。でも、そのプライドを傷付ける訳にもいきませんから私達で少しご協力出来ないか考えましょう」
 ハルウッドの言葉にガルドもロルゾも同意する。ローレンスは3人に大まかな行動を任せて、騎士団とは別に情報を集める部署に協力を仰ぐ事を名乗り出てくれた。
 その日もランスロットは城に上がる前に市街で妹の情報を集める為に聞き込みをしてから登城した。団長になってから毎日聞き込みしているが有益な情報は得れてないがランスロットは諦めるつもりはなかったので城に着いてからは団長としての顔をして執務室に入る。
「おはよう」
「おはようございます。本日のご予定を決めましたのでお目通しを」
「ありがとう。……ローレンスに少し聞いてもいいか?」
「はい、何でしょうか」
「実は団の体質を変えようと考えている。その為の準備に人手が欲しいのだがどう思う?」
「その体質を変える、とは一体どの様な事をお考えなのですか?」
「年功序列を廃止。実力組織として体制から作り替えるつもりだ」
「それはある意味大きな賭けではございますね。今の団は年功序列で馴染んでいる為にそれで馴染んでいる者達が多くいます。いきなり改革を行うのであれば反発は起きましょう」
「だが、今のままでは有望な騎士は埋もれてしまう。その有望な者達を発掘する為にも改革は必要だと思っている。多少の無茶は目を伏せてもらうしかない」
「……それではこの様に知らせては如何でしょうか?」
 ローレンスは洋紙を使って改革を知らせる文章を書いてからランスロットに見せる。それを読んだランスロットは大きく同意をしてみせてから自分の言葉を付け足す事で完成文章として洋紙に書き綴った。
 そして、翌日には騎士団全体に年功序列の廃止と実力主義の騎士団にする事を知らせる知らせが張り出される。そして、その文章の終わりにはランスロットの考えで提案された役職の配属への人数が増える事を書かれていた。
 これを見た若い騎士や熟練の騎士達は大いに歓喜を見せるが、当然反発を示している騎士達も少なくなかった。その騎士達は貴族の身分を持つ者達で年功序列でそれなりの地位に着いていた騎士達であった。
 ハルウッドやロルゾ、ガルドもこの知らせを読んでランスロットの考えに思いを寄せる。この改革が成功すれば騎士団は新しい体制の元で今よりもかなり騎士達の士気が上がると考えられた。
「本当に突然だなランスロットの考えは」
「ローレンスは知っているんだろうな。ランスロットの相談役でもあるから止めはすると思っていたがこれは協力しているに違いないな」
「でも、これが成功する事が叶えば騎士団はより強くなる事は明白でありますよ。私は歓迎したい改革ですね」
「だが、反発する奴らもいる。ランスロットに談判する事も考えられるだろうな」
「そこは俺やロルゾが対応すりゃいいだろうよ。まぁとりあえず団長に会いに行こうぜ」
 ロルゾ達が団長室に訪れると既に先客がいた。明らかに怒気の孕んだ声に3人は早速クレームを言い出しに来た騎士がいると知る。
 団長室に入ると数人の中堅の騎士達が団長のランスロットに詰め寄っていた。だが、ローレンスは3人を見て口元に右手の人差し指を添えて静かに、とジェスチャーするだけで止めようとはしてなかった。
「団長! あの知らせを撤回求めます! 今の団でも充分に動きも連携も取れているのです。今でも団長が着任されてまだ日が浅いのでご理解していないかも知れませんが、上手くまとまっている団を下手に乱す事になるのをお考え下さい」
「年功序列で今までやってきた聖騎士団を新しくしたいお心は分かります。ですが、やり方というものがあると思いませんか? これでは団長の我を押し通すだけの幼稚さが目立ちます」
「今ならば撤回して年功序列で行くと訂正してもらうだけでいいのです。どうかお考え直しを」
「言いたい事はそれだけか?」
「「「へっ?」」」
 ランスロットは目の前でそれぞれの意見を申し出てきた中堅の騎士達を見て綺麗な、それはそれは綺麗な怒りを宿した瞳を向ける。殺意にも感じれる程の怒りを察した3人の騎士達は小さく悲鳴を上げる。
 ランスロットは事前に調べていた調査報告書を机の上にドサッと叩き付ける様にして置くと、3人の騎士達になるべく威圧感を与えない無感情の声で言葉を紡ぐ。ロルゾ達もそのランスロットには畏怖を覚えてしまう。
「お前達中堅の騎士達の意見も充分に分かる。だがな、俺はこの調査報告書に書いている事実に腸が煮え返りそうな怒りを覚えた。その怒りの元になっているのは……お前達貴族の騎士達による規則違反の数々と風紀の乱れを増長するかの様な発言と行動による騎士団の信用問題に発展しかねない問題を起こしている事だ。年功序列で甘い汁を啜って給金も得ておいて影でこそこそしているお前達の様な騎士を私は必要とは思っていない。つまり……お前達の様な”無能”な騎士を排除する為にあの改革を行うのだ。お前達の意思など元から配慮する気は毛頭ない!」
 バンと机に握り拳を叩き付けたランスロットは固まってしまった騎士達をギロッと睨み付けて、それに我に戻った騎士達は恐怖から逃げ出す様に団長室を飛び出して行く。ランスロットは小さく息を吐いて椅子に座り調査報告書を睨み付けていた。
 ロルゾ達は怯えまではしなかったがランスロットが怒る理由には共感してしまった。前から年功序列で若い騎士達を小間使いの様に使い潰していた中堅騎士達には辟易していたのである。
 ローレンスは3人に机前に集まる様にジェスチャーしてランスロットの前に淹れ立ての紅茶を差し出す。そして改革の事でランスロットの考えを改めて問い掛ける。
「それでは今回の改革は全体的な改革、で間違いありませんか?」
「あぁ。そして、今回の改革は全体的に一気には行わない。2段階での改革を執り行う予定だ」
「それじゃまだ何か行うのですか?」
「俺達も知っておきたいな。教えてくれ」
「どんな改革なんだろうな」
「まず今回の実力組織への変更を行った後に新人騎士の募集を行う予定だ。その新人騎士を募集する為に新人試練を設ける予定なんだ」
 ランスロットの考えを聞いたロルゾ達は顎に手を置いたり、腕を組んだりしてその話を受け止めていた。これが成功するようなら聖騎士団の組織全体は大きく変わる事になるからだ。
 紅茶を味わっていたランスロットは普段と同じまでに落ち着きを取り戻していた。あの様に怒りを見せる事は稀だろうと4人は思っている。
「それでは実力体制にする為にも実力選抜戦を執り行う、でよろしいですか?」
「あぁ、その選抜にはロルゾ達にも出て欲しい。勿論実力を疑っている訳ではないが、他の騎士達の手本としての意味合いを込めて参加を願う」
「そういう意味でいいなら俺はいいぞ。ロルゾとハルウッドは?」
「俺も構わねぇ。そもそも俺は騎士団の中でも新人に近い者だから実力示す為にも参加してぇな」
「私もロルゾと同じ意見として参加を希望します。私も親衛騎士としての実力を示す為にも選抜戦にて残ってみせます」
 こうしてロルゾ達も選抜戦に出る事が決まる。そして、実力組織の体制に変えて行く為の前準備として実力選抜戦の準備が始まる。
 これでティクス国の聖騎士団の組織図が切り替わる事が決まった事になる。それを先導して取り仕切るランスロットの政策に国王であるケンベルトも報告を聞いて大きな声を上げて笑い出す程であった。
 そして、問題児が大勢参加するだろうという実力選抜戦。それが間もなくティクス国で始まる前日を迎える――――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...