私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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6章

43話「人々の希望になる騎士団

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 ティクス国に帰国したランスロット達はすぐに怪我人の手当てや国の防衛の為の配置の見直しなどもし始める。ランスロットはディズ国がブラックドラゴンを蘇らせた理由として過去の戦争に何か原因があるのでは? と考えてティクス国の書庫に足を向けていた。
 色々な過去の戦歴を調べていく内にティクス国・エドゥル国・ディズ国が過去に「悪魔の国」として戦った国の事について調べる事になる。「ベリアズ国」と呼ばれていた国が禁呪の1つである「魔王」召喚を行った、そして、その魔王と3国は熾烈な争いを経てベリアズ国を滅ぼした、と書かれている。
「この悪魔の国がディズ国に禁呪の力を魅せていた……と考えるのが打倒か」
「ランスロット!」
「アレス? どうした?」
「それが、それが!」
 アレスのただならぬ気配に本を閉じたランスロットはアレスの言葉に衝撃を受ける。ディズ国のあった場所に闇の力を纏った何かが君臨していると衛兵が確認しているのだと。
 アレスと共に衛兵のいる見張りの塔に行き、望遠鏡でディズ国があった方角を確認する。確かに闇の瘴気が漂い、中心には大きな鎌を持った何かが君臨しているのが伺えた。
「なんだ、あれは……」
「急に出現しました。それも一瞬で」
「団長、調査隊を出すのはどうでしょうか?」
「アレス、ローレンス達を集めてくれ。各部隊長達を待機させる様に。決定が決まり次第命令を出す」
「はっ!」
「は、はい!」
 アレスと騎士の1人が急いで準備に取り掛かる。こうなってくるとディズ国がブラックドラゴンを蘇らせたのがなんとなく引っ掛かってしまうとランスロットは考える。
 見張りの塔から団長室に移動したランスロットはローレンス達と会議を行う。まずあの鎌を持った存在、それが何なのかを調べなくてはならないからだ。
 ローレンスは星読みの方法で調べる為に団長室を出て、ロルゾとガルドは部隊長達に今の部隊を動かせる人数の確認をしに出ていき、ハルウッドはロゼットの元に行き軍師としての考えを聞いてくる為に出ていく。アレスはルトと何やら話し込んでいる様だがランスロットはそんなアレスを背後から抱き締める。
「ら、ランスロット?」
「アレス……」
『私は少し城内を見てくる。アレス、先程の考えはランスロットには伝えておきなさい。それはアレスの力では不可能だ』
「うん……」
「ルトと何を話していたんだ?」
「実は……」
 アレスは自分を抱き締めるランスロットの腕の中で向きを変えて正面から向き合う。そしてランスロットに真剣な眼差しを向けて静かに語り始めた。
「私の御子としての力を使ってあの鎌を持った存在を消せないかな……って思ったの」
「うん。それで?」
「私の力ってルトが言うには、誰かが危険な目にならないと使えないって……だから、私の力は役立たずだって……」
「そんな優しい事を考えてくれていたのか」
「えっ?」
「アレスのその優しい心があるから皆が頑張れると気付いていないのか?」
「そ、そんな事はないでしょ!?」
「そんな事があるから言っているんだ。アレス……俺の為だけに微笑んでくれ……」
「ランスロット……ね、ねぇ……我儘言ってもいい?」
「なんだ?」
「……キス、して……欲しい」
「可愛らしいお誘いに乗じないのは失礼だな。仰せのままに我が姫……」
「んっ……」
 アレスの顎を持ち上げてそっと口付けるランスロットにアレスも身体を委ねる。最近恋人としての触れ合いをしてなかったのもあって寂しい思いをさせていたのだろうと気付く。
 暫く触れ合うだけの口付けをしてから唇を離したランスロットにアレスの瞳は嬉しそうに蕩けていた。そんなアレスの額にチュッと唇を押し付けて甘やかしてから身体を離す。
 少しだけ恋人の空気を味わっていたが、そろそろ全員が戻るとアレスが気付いて騎士アレスに戻ってしまうとランスロットは少し寂しくも感じたが、それはそれで仕方ないと団長ランスロットに戻って行く。そして、全員が戻ってきたタイミングでアレスが飲み物の用意をし始める。
「それではロゼットも調査隊の編成には賛成、なんだな?」
「はい。ただ、市民の不安を取り除く為にも騎士団の方で市民の避難を行ってもらいたいとの条件を出されております」
「まぁ、あの不気味な奴がこのティクスに何かしらするなら市民の避難は最優先だよな。姉妹国の「レイガルッド国」に避難させるのが普通だろう」
「それもあるけれどよ、市民の戻れる場所を守るのも俺達騎士団の役目だよなぁ。部隊長達もそんな意味で士気が高いし」
「その部隊長達には申し訳ありませんが、調査隊には魔法使いを率先して入れるべきかと進言致します」
 ローレンスの言葉にロルゾとガルドがキョトンとする。ハルウッドとアレスが全員の前に紅茶を置いて行きながらその話を黙って聞いていた。
「今回のあの鎌を持った物体、恐らくではありますが異界「アルシッド」からの召喚されたものだと思われます。ディズ国が何らかの方法で異界「アルシッド」を解放しているのであれば物理は一切通りませんな」
「そうだとしたら、調査隊の方も魔法騎士を優先的に配属するべきか。ローレンス、調査隊の指揮を任せてもいいか?」
「はい、お任せ下さい」
「アルシッドって言ったら過去のガルディア戦争の時に悪魔の国だっけな、あのベリアズ国が使役してきた兵士達もアルシッドから召喚されていたと聞いている」
「そのアルシッドとは何なのですか? 私も異界とまでしか知らないのですが」
「異界アルシッド、この世界とは異なる場所の世界だとは言われております。そして、その世界は悪魔や悪神等の力が支配する世界だとも」
 ローレンスが説明してアレスはそこでゴクリと喉を鳴らす。そして、調査隊の編成をする為にローレンスとランスロットが団長室を出ていくとハルウッドが何かを書き始めた。
 ロルゾとガルドはそれを見て自分達も何かを書き始める。アレスは片付けをし始めていたがロルゾがアレスにも書かないでいいのかと聞いてきた。
「あの、皆様何をお書きなのか分からないんですが……」
「市民の避難ともなれば親族や友人達ともしばしの別れになります。なので今の内に避難先でも元気で、との言葉の手紙を書き残すのですよ」
「ハルウッドやガルドは家族や恋人や嫁さん達がいる。俺は行きつけの武器屋や酒場の女達に残すのさ」
「アレスはランスロットがもし、避難しろって言ってきたら避難しなきゃだぜ? 騎士の前にお前さんはエルンシア家のご息女。ランスロットに何かあったらエルンシア家を守れるのはお前さんだけだからな」
「そう、ですよね……」
 アレスもそこは考えていたのでアレスもランスロットに何か手紙を残す事を考えた。ガルド達が手紙を書き終えてそれを出しに行っている間に、アレスも手紙を書き綴る。
 最初から色々と書き込んでいるがそれを最後にするつもりではない。きっと神々は自分とランスロットに別れを与えるのであれば再会だって与えてくれるとアレスは信じている。
 書き終えた手紙に蝋で印をしたアレスはどうやって出そうかと考えているとルトが傍にやってきた。ルトに事情を説明するとランスロットの自宅の引き出しに入れてはどうだ? との助言を貰う。
「そうだね、家ならあまり見ないかもしれないし。一生気付かなかったりして」
『その時は私が助言しておこう。引き出しを開けてみろってな』
「ありがとうルト。それじゃ私は一足先に帰るね。ルトもたまには私の家に来る?」
『それもありがたいがランスロットの機嫌を損ねたい訳ではない。それに、アレスが帰ったのをランスロットに知らせておくのも必要であろう?』
「あ、そっか。それじゃお願い。じゃあまた明日」
『気を付けて帰りなさい』
 ルトに見送られてアレスは外套を羽織って騎士団から自宅のある屋敷まで下城する。ルトはアレスが自分の運命に気付きつつある事を悟っていた。
 遅かれ早かれランスロットと暫く離れなくてはならない事になる事を悟っているのだろう、と。だが、それは予想以上に早く訪れた。
 ランスロットが団長室に戻ってきてルトにアレスが先に帰ったと聞かされて自分も帰ろうとした矢先、ランスロットの背筋に寒い悪寒が走った。そして、空が急激に暗くなり一気に闇の気配が包み込むのを感じ取る。
 ルトもランスロットの肩に乗り威嚇の体勢を取る。そこにロルゾとガルドが駆け込んできた。
「ランスロット! アレスは!?」
「先に帰った筈だ。何があった?」
「市街地に闇の力が降りた! それが一番濃いのはエルンシア家があるエリアだって!」
「!!」
「すぐに行くんだろ?!」
「動ける騎士達を集めてから来てくれ! ガルド! 一緒に馬で屋敷通りまで行くぞ!」
「おうよ!」
 闇の力が濃いのがエルンシア家のある屋敷通りだと聞いたランスロットは急いでガルドを引き連れて屋敷まで向かった。だが、到着する頃には闇は消え失せており、通りには人々の困惑する声が上がっていた。
 屋敷の前まで来たランスロットはすぐにガルドを連れて室内に入る。室内は見事に大荒れで至る所に爪痕が残されていた。
「らん、すろっ……と……さま……」
「大丈夫ですか!? アレスは!?」
「それ、が……」
 倒れていた執事の男性の話では、アレスが帰宅して間もなく闇の力に飲み込まれて抵抗したアレスは自分達を守りながら戦ったが力が圧倒的にあり過ぎて連れ去れさてしまったという。ランスロットはその話にあの時の悪寒はアレスの身の危険によるものだと認識した。
 ガルドがすぐに駆け付けたロルゾ達に執事達の手当てを任せている間に室内を見ているランスロットを見て顔を歪ませた。ランスロットの瞳に怒りの炎が宿っているのが見えたからだ。
 だが、アレスがどうして狙われたのか? そして狙ったのは誰なのか? それはすぐに判明する事となる。事態の緊急性を感じたケンベルトが市民達の避難を優先的に行い、次いでアレス救出の命令を発する。
 アレスの存在はティクス国において御子でもあるアレスに何かあれば、それは国としては許されない事でもある。重要責任者は兄であり団長のランスロットに任命された。
 神々の力が及ぶ範囲にアレスがいると信じて騎士団はアレス救出の計画を練り始める。そして、ランスロットは無事にアレスをその腕に取り戻す事は叶うのだろうか――――?
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