私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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6章

46話「先手を打たれても動じないのは」

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 ランスロットは同期組とハルウッドの精鋭部隊を先頭に置いて、ディズ国進軍を命じた。この進軍でアレス奪還を果たすのが最大の目的である事と、同時に闇の星導きの者達の壊滅が出来ればいいのだが、そう上手く行かないだろうとは考えていた。
 ロルゾとローレンスのサポートを受けながら先頭集団は無事にディズ国の内部に進軍する。思っている以上に敵の強さはそこまである訳でもなく、同期組達でも倒せるレベルであり王城に入り込む事は安易に出来そうだったが……。
「城壁に不信な影?」
「はい、ハルウッド様のご指示で一時的に進軍は止めています。その影はこちらの動きに合わせて動いていると申されております」
「……弓兵にその影に攻撃させてみてくれ。それで効果がないなら魔法部隊に攻撃を」
「はい」
 ランスロットは先に進軍をしている先頭部隊に支持を出して自分も合流を早めようとしていた。少しでも障害になる存在には消えてもらうのがいいと判断出来るからだ。
 そうじゃなくても、ランスロットがこのディズ国に入ってから感じ取っている闇の力の強さに、少々でも嫌悪感を抱く状態でありこの状況下にアレスがいると考えると頭が痛むし心も冷静にはいられないのが本音である。
 ハルウッドの部隊には同期組も編成されており、ランスロットが合流するとアルフォッドが報告に近付いてきた。ハルウッドからの言葉も受けてきている様であった。
「団長、例の影はどうもこちらの様子を見ているだけだと判断出来るとの事です」
「つまり攻撃してくる気配はないって事か。こちらの戦力を見極めているという感じだな。……いいだろう、正面突破してやろうじゃないか。ハルウッドに伝えてくれ、私が先陣を切るので援護をと。アルフォッド達は私の傍に控えて攻撃に備えてくれ」
「はっ!」
 アルフォッド達同期組がランスロットの陣営に加わって、先陣を切り始めるランスロットは王城の内部へと足を進める。城内には城外に比べて闇の力を持った敵が湧いていたが、ランスロットの神聖なる攻撃には手も足も出せないまま消滅していく。
 団長であるランスロットの気迫と敵の撃破に士気が上がった騎士達も恐れずに攻撃を続けていく。ランスロットの視線がある場所に止まる、それは闇の力に染まった城内では異様に光の力を感じる場所であった。
「ここは……?」
「俺達が先に入ります。団長は少し離れて下さい」
 アルフォッド達同期組が警戒しながらその場所のドアを開けると中には誰もいなかったが、アルフォッドがある物を見つめて確認してからすぐにランスロットの元に持ってきた。
その手には誰かのメモが握られているのがランスロットの目にも分かった。
「これアレスの文字ではありませんか?」
「アレスの? ……王の間に危機あり。……間違いないアレスの文字だ」
「王の間に危機あり……玉座の間に目的の闇の導きの者達がいるって事でしょうか?」
「そうだとしてもどうしてアレスはなんでこんなメモを? 彼女の存在だって敵からしたら厄介な存在だから何かをする前に反撃を受けてしまい兼ねないわ」
「もしかしてアレスは1人で何とかしようとしているのか? そんな事危険極まりない。団長、急ぎましょう!」
「あぁ。皆、しっかり付いてきなさい」
 アルフォッド達を引き連れてランスロットの部隊は玉座の間に向かって駆け出す。その頃のアレスはルトと共に例の闇に染まっていない兵士の青年の手により王城の内部にある光の力がある場所に連れて来てもらっていた。
 兵士の青年はまだアレスが感情を取り戻せてないと思って、この光の力がある場所に善意的に連れて来てくれているのだった。ルトは兵士の青年の顔をジッと見て何かを考えている。
「ここなら部屋よりも光の力を感じれると思う。こんな闇に染まった場所だから気が滅入るのは仕方ないけれど……ここなら少しは自由にしていいよ。って言っても俺の言葉はまだ届かないよな……。早く君を本来の場所に帰してあげたいんだけれど、外の警備が厳しくて……、それに何か敵が近くに来ているって言われて警戒が厳しくなっちまったんだよね。俺にもっと力があれば君を逃がしてあげれるんだけれど……」
「……して……」
「えっ……?」
「どうして……私を助けようとするんですか……?」
「あ、話してくれた! 良かった、喋れるんだね。あ、質問にはちゃんと答えないと失礼だよな。俺は君の様に光に愛されている人がこんな場所で犠牲になるのを見て見ぬ振りするのは嫌なんだ。……俺の事を信用出来ないだろうけれど、俺はある約束を果たす為にこの城に忍び込んでいる。その約束はもうじき果たされる、それが果たされる前に君を逃がしたい。君だって大切な人が待っているだろう?」
「……でも、その人がもうここに来ている。貴方が私を守ってくれた事を知れば協力してくれる。そんな人だから」
「うーん、それは遠慮するかな。これは俺自身のケジメでもあるんだ。俺自身が自分の力で片付けなきゃいけない約束なんだ。でも、ありがとう。こうして俺なんかの身を案じてくれて。君の優しさは俺の中に永遠に残るよ」
 兵士の青年はそこまで言って城内から聞こえてくる騒音に、アレスの言っている助け人が来ている事に気付く。そして、アレスの手に短めの短剣を握らせてそっと背中を押す。
「ここから廊下を南に向かって行けば出口に辿り着く。この短剣を持っていれば闇の力に捕まる事はない。行くんだ、そして、君の事を助けに来た大事な人の腕の中に帰るんだ」
「……貴方の名を教えて。私は、アレス」
「アレス、か。俺はエリッド。エリッド・ポール。こう見えて異世界の勇者だった男だ」
「エリッド……また逢えるよね?」
「どうだろうな。でも、アレスの笑顔を見れたのが最後だとしても後悔してない。アレス、君に神々の加護がありますように。さよなら」
 エリッドはアレスを廊下に押し出して背中を見送った。ルトはアレスの腕の中でエドリッドの光の力の元を察してアレスに話す。
『アレス、あのエリッドなら大丈夫だ』
「どうしてそんな事が分かるの?」
『あの男の光は異なる世界の神々の力を感じた。あの男はきっといつかアレスとランスロットの力になる為にまた再会を果たすだろう』
「そうなのね……エリッド、彼にまた再会する為にも今はランスロットの元に行かなきゃ!」
『この近くまでランスロットの力は来ている。そう遠くはあるまい』
 ルトのナビを受けながらアレスは廊下を駆ける。そして、同期組のオルベがアレスの姿を確認してランスロットの方向に声を上げた。
 アレスはオルベやリディル、アルフォッドの顔を確認すると力が抜けそうになるが、最後まで警戒したままでランスロットの前にまで走ってきた。ランスロットがその身体を強く抱き締めてくれるまでアレスは泣かなかった。
「アレスっ!」
「ランスロット!」
「無事だったか……。怪我は?」
「私は大丈夫、でもお願い……エリッドを、彼を助けて!」
「エリッド? ルト、一体何があったのか説明してくれ」
『エリッド、異世界の勇者だったと名乗っていたな。その男がアレスをあの部屋から連れ出して逃がしてくれたのだ。それだけではない、アレスに心を砕き、私をアレスに引き合わせたのもそのエリッド、と名乗る男だった』
 ランスロットにルトが説明していると王城の奥から物凄い闇の力を感じ取った同期組とランスロット、アレスはすぐに集まった。ハルウッドの神聖魔法で張り巡らされた結界のお陰で闇の力を受ける事は無かったが、アレスはこの力が異様なまでにランスロットの力を奪おうとしている事に気付いた。
 その力はランスロットも気付いていたが、まるでランスロットの存在を喜ぶような印象にも受けれたので違和感を感じていたがアレスの言葉でこの状態がどうしてなのかが理由は分かってしまう。それだけの存在が目覚めたのも理解は出来た。
「この闇の元になっているアルシッド王はランスロットの肉体を狙っているの。依代っていうので必要な肉体を持っているのがランスロットだって聞いた」
「それでこんなに闇の力が喜んでいるって訳か。そう易々とこの身体をくれてやるつもりはない。全員、退路を確保しろ! アレスの奪還は出来た、長居は無用だ!」
「私が最後に回ります。アルフォッド、貴方達同期組で先導しなさい」
「分かりました! 団長、アレス、こっちです!」
「エリッドがっ」
「今はアレスの身と団長の安全が優先よ! そのエリッドって人が光の力を宿しているなら大丈夫、きっと神々がお守り下さるわ!」
 リディルの言葉にアレスは唇を噛み締めてリディルと共に廊下を走る。ルトはランスロットの肩に乗り瞳を輝かせて光の結界を維持してくれている。
 一同が王城を脱出してロルゾ達の援軍と共にディズ国を脱出した頃の王城の内部でエリッドは玉座の間に来ていた。その身体と瞳には強い光の力が宿っている。
「さて、ここでアルシッドの王にはご退場願わないとな。それが俺の召喚された役目の1つだ」
「誰だ!? お前は……星の導きの者か!?」
「俺の名はエリッド。お前達が召喚したアルシッドの王を倒す者の名だ。覚えておけ」
「ぐっ、こんな時に光の星の導きの者が来るとは……。だが、王の召喚は成されている! この場で光の者は始末してくれっ……!?」
「俺の光は少し”違う”んだけれどな? それじゃ王様とやらと一緒に天に召されてくれ! ライトニングブレード!」
 エリッドが生み出した光の剣は魔法陣ごと切り裂き、そして、召喚されていた闇の力であるアルシッドの王もろとも葬ってしまった。そして、その場には息をしている者達はいない。
 圧倒的な力の差にエリッドは苦笑する。これがアレスの協力を断った正直な理由でもある。
 そう、エリッドはその力の強さ故に元の世界では勇者と呼ばれていたが、実際は闇に対しての力が強いだけの人間でしかない。エリッドは1人静かになった玉座の間から出て外に向かう。
 そして、徐々に消えていく闇の力を感じ取って自分の召喚された役目の1つを果たせた事に息を吐き出す。そして、同時に先程自分との再会を願っていた女性、アレスの顔を思い出して胸に手を当てる。
「こんな俺に感謝を述べる子なんて向こうでもアリーシャだけだったな。似てる、アレスはアリーシャの様に神々に愛されている子だ」
 アリーシャと口にするエリッドは微かに故郷の仲間達を思い出して心が辛くなる。勇者故に同じ場所にはいれない、それが光の勇者の運命。
 でも、とエリッドは思う。少しの間だったがアレスの事を見ていて気付いた。
 アレスも愛する者の為に自分を犠牲にする事が出来る心優しい女性である事を。その心を護ってあげれる相手にはまだ更なる試練が待ち構えている事を。
「さて、他の召喚された連中を見付けて神聖国ティクス国に赴く為にも急いでこの地を離れないと。神々よ、俺に導きを……」
 エリッドはそう告げて廊下を走り始める。このエリッドとアレスの出逢い、そして、ランスロットの身体を求めているアルシッドの王の消滅は新たなる存在の覚醒を促すのであった――――。
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