私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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6章

49話「聖なる武器の使い手達」

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「ご報告致します。調査にあった聖なる武器の保護が完了致しました」
「ご苦労様です。すぐに保管庫に運び入れて下さい。厳重な警戒をする様に騎士団にも知らせるように」
「はっ」
 大臣のガーベルはパタンと開いていた本を閉じる。ガハランド大陸には5種類の聖なる武器と呼ばれている武器が存在する。
 その5つの内1種類はエドゥル国に、1つはディズ国に、残り3つの内2つはある事件を機に行方が分からず、1つはティクス国が保管していた。その行方知れずだった2つとディズ国の物をティクス国の保管庫に入れれたのは、ひとえにガーベルの手腕の賜物であった。
 ガーベルは聖なる武器の研究者でもあった為に、探すならばと目途を付けていた箇所に兵士を派遣し、見事に発見に至ったのである。そして、ガーベルはローレンスが所属する占星術師達の力を借りて、この聖なる武器の使い手達を探すこと事もし始めていた。
「星によれば、もう間もなくその者達が現れると。それもその者達は星導きの者達であります」
 そう占星術師から言われたガーベルはロゼットに知らせに行く。ガーベルの報告にロゼットの瞳が細められる。
 星導きの者達が現れるのはそれだけ闇の力が強くなるか、危機的状況が訪れる前触れだと言われている。それが出現をこうも知らされると構えるべき事ではないか、とロゼットの口が告げる。
「どちらにせよディズ国の中で闇の星導きの者達が行っていた儀式が他の地でも行われている、そう考えれば妥当な未来かと」
「だがな、今のガハランド大陸に混乱を生み出そうとする者達が多くいるのはディズ国だけだった。そのディズ国が滅んだ今、何処にそんな者達が……」
「光があれば闇もあります。ガハランド大陸の何処かに闇が集まっても完全に把握する、それは夢物語でございましょう。それに星導きの者達が現れるならば我々はその方々を支援するべき立場でございます」
 ガーベルはそう告げてロゼットの瞳を見つめる。ガーベルの瞳には不安も恐怖も感じられない。
 ロゼットの視線に動じるでもなく、ただ自分の信じる道を進むだけの勇気を持っているのが伺える。その勇気をあのランスロットに分けてくれないだろうか、そう考えるロゼットにガーベルはある報告書を出す。
 その報告書を読んだロゼットは眉をピクリとさせる。聖なる武器の発見場所に違和感を感じたのである。
「間違いは?」
「ありません。聖なる武器は本来の場所に”戻された”と考えるべきかと」
「……」
「エルンシア家の人間がこの事実を知らなかったのは仕方ないかと。そして、ティクスにはこの事実を知る者は限られます」
「内部の犯行だった、という訳か。炙り出すか」
「それが一番正しい方法かと。このままだとまた繰り返す事になるかと」
「お前の口からランスロットに知らせてみるか? お前も個人的にランスロットに言いたい事もあるようだしな」
「お気遣い心から感謝致します。それでは本日お休みされているというランスロット様のお屋敷に出向いて帰宅致します」
「あぁ、分かった」
 ガーベルは頭を下げて退室して行った。ロゼットは報告書に書かれている内容を改めて読み直す、ランスロットの父がこの事実を知っていれば失脚する事もなく、国に残れていたのも事実だろう。
 だが、仮に知っていたとしてもこの事実を隠蔽されてしまえば当時のエルンシア家の人間では何も出来なかったのも事実だ。ロゼットはガーベルがここまで調べ上げた事には感嘆の思いを持つ事となる。
「ランスロットの気持ちを今の状況で考えれば、少しはアレス以外の事に気を向けれるだけでも違うか……」
 ロックがアレスに求愛をしている事はランスロットの耳にも入っているし、アレス似の女性を側近で付けた事もランスロットの方からは何も言ってきていない。アレスの方はロックからの求愛にはまだ返事はしていないが、ランスロットの動き次第ではアレスは自分の心を殺して応じるだろう。
 まかり間違ってもアレスがランスロット以外の男に嫁ぐのはロゼットも受け入れる事は出来ない。なのでロゼットはロゼットで手を打つ事にしていた。
「行くか」
 椅子から立ち上がりロゼットは1枚の手紙を持って新王のロックの私室へと赴く。ランスロットの屋敷ではガーベルがランスロットの部屋で対面していた。
 ランスロットは休みともあってラフな恰好でいたがガーベルが来たので上着だけは羽織って向かい側に座っている。ガーベルがカチャっと出された紅茶を一口飲んでソーサーにカップを置く。
「さて、本日参りましたのは2つお話する事がございまして。1つはエルンシア家の人間である事もあり知らせておくべき事かと思い、城内では聞き耳を立てられては困るのでお休みの所ではございますが、お伺いしたまででございます」
「それならば聞かない訳にはいかないな。下がっててもらえますか?」
「それでは何かございましたらお呼び下さい」
「……お気遣い感謝致します」
「この家の者達にもあまり聞かせたくないだろうと思ってな。それで? 俺に知らせておきたい事とは?」
 ガーベルは持参していた鞄から数枚の報告書を取り出し、ランスロットに差し出す。そして、その報告書を受け取ったランスロットは目を通していく。
 最初は眉を動かさなかったランスロットだったが、終わり等辺に行くに連れて眉が吊り上がっていくのをガーベルは見ていた。怒り、ではなく驚きだろうなとは察せられる。
 報告書には聖なる武器が保護された場所、そこに運ばれた理由、そして……エルンシア家の人間でさえ把握出来なかったあの事件の真相が書かれていたのである。最後の項目にはランスロットには衝撃過ぎていたのである。
「これが……事実だと言うのか……」
「当時のエルンシア家の人間ですら把握は不可能に近かったのはこの理由があったからです。ましてや当時のティクスの状況を考えれば必要だとは言えない方法ではありましたが」
「ならば……父は、父は何のために責任を取ったんだ! ケンベルトの父との間に必ず武器を取り戻すと約束して流浪の旅に出た父の人生に意味があったと言うのか!?」
「無かった。と申したら落ち着きますか?」
「っ……すまない……」
「ランスロット様のお怒りも分かります。しかし、まだ本題はそこではないですよ」
「……進めてくれ」
 ガーベルは極めて冷静であった。それは激情を見せたランスロットの心に冷静さを与える。
 ガーベルは真実を更に口にする。それはまだティクスには当時の関係者が多数残っている事実を。
「まだティクスの大臣を始めとする関係者達が残っています。勿論彼らには今回聖なる武器が保護された事は伝わっています。……分かりますね?」
「また繰り返される、可能性が高いと言う訳か」
「そうです。そして、彼らは貴方を失脚させるつもりです。貴方がまだ騎士団長だけでしたらそこまでする必要はないでしょう。でも、今の貴方は国王の後見人……失脚を望む者達は多い」
「……どうしたらいい? 俺には政治の方ではあまり役には立たない立場だ」
「まず、手始めに……」
 ガーベルは大臣達に変な動きを見せる者達がいる事を伝える。それを何かと理由を付けて捕縛、そして地下牢に纏めて投獄する……その者達を助けに来た者を捕えて明るき場所で事件の真相を暴くのはどうだろうかと提案する。
 ランスロットもその案には賛成だった。別に今更エルンシア家の家名の泥を取り除こうと言うつもりはない、ただ、父の汚名だけは取り除きたかった。
 ガーベルにランスロットは深い礼を告げる、だがガーベルは咳払いして1つ伝える。それは妹のアレスについてである。
「あくまでこれは私自身の私見ではありますが……神々は今のままではアレス様をお見捨てになれるかと」
「……」
「確かに誰かの為にご自身を犠牲にされる行為は美しいと言われる姿もございます。しかし、神々はそんな為にあのご才女を愛されている訳ではありません。本来の魂とは異なる行為を続ければ神々は簡単にお見捨てになりますよ」
「……だが……」
「一言、自分の傍に戻れ……そう伝えればいいだけの話。それが出来ないのであればご才女をすぐに騎士から解除して修道院にでも入れるべきでは?」
 ガーベルの言葉にはランスロットは何も言葉が返せない。神々に捨てられたらいつかアレスを狙う者達から狙われても神々は助けない。
 それだけではない、ランスロットの立場をよく思わない人間の餌食になる事も避けれない。ガーベルの言葉に矛盾も何も無かった。
 ランスロットは最近、ロゼットから与えられたアレス似の側近を本気でアレスと入れ替えてしまおうかと考えるまでになっていた。そう、ランスロットはまだアレスの事を諦めている訳ではなかったのである。
「本当に愛するのであれば、その心を護るだけではダメなのです。心も貴方が護らなくてはご才女は脆いのでしょう? 壊れてからじゃ手遅れになりますよ」
「陛下のお心を傷付けてしまうのをアレスは望まないだろう……だが、アレスは……」
「陛下には既にロゼット様が手を打っているかと。我々は貴方方の2人の姿を見ている方が落ち着く、とだけ申し上げておきます。それでは失礼します。紅茶、ご馳走様でした」
 ガーベルはそれだけ告げて立ち去った。ランスロットは深く溜め息を吐き出す。
 ガーベルに言われてしまえばそこまでなのである。ランスロットは自分の中に芽生えているアレスの事を囲ってしまおうと言う気持ちをそろそろ溢れさせている事も分かっていた。
 本当に自分はアレスを大事にしているんだな、と強く実感する。だからこそ、これ以上周囲に心配を掛けるのもよろしくもないのは充分に理解するしかない。
「俺も限界なのに、アレスの方がよっぽど限界に近いのは言うまでもないんだろうな……」
 ランスロットは1人瞳を閉じてアレスの姿を思い出す。最後にこの腕に抱き締めていた頃のアレスの微笑み、温もり、そして愛を思い出す。
 だが、そんなランスロットはアレスを取り戻す前に終わらせないといけない事もある。父親が意図的に失脚させられた聖なる武器が行方不明になったキッカケの事件の洗い直し。
 その事件の関係者を捕まえて、そして、真実を明らかにする事。それは今のティクスにはあまり関係ない事になるかもしれない、だが……ランスロットは父の汚名だけは回復したかったのだ。
 それはきっとアレスにとっても大事な意味を持つ行為になると信じている。そして、ランスロットはこの日から色々と立ち回る事となる――――。
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