私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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6章

50話「星導きの者達」

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 ランスロットの動きは素早かった、ティクスの一部の大臣達を聖なる武器の奪略者として拘束し、地下牢に投獄。そして……その者達を助けに来たのは大臣としても地位を固めていた人物であり、そして、エルンシア家の人間達を失脚させた一味の1人である。
 ランスロットはその男を捕えて新王ロックの前にて罪状を告白。男は無罪であると叫んだがガーベルとロゼットの調査もあって男の罪状はほぼほぼ確定していると言えた。
「兄の時だけでは飽き足らず、父の時にもこの様な罪を犯していた事は目に余る行為。そして、貴方の企みで私の後見人であるランスロットを失脚させんとする企み、それを甘んじて見逃す訳にはいきません。貴方をティクスの法に従って処刑に命じます」
「へ、陛下! どうかご再検を! 私は無実でございます! 陛下ー!!」
「連れて行け」
「はっ」
 騎士達に連れて行かれた男は後日ティクスの処刑場にて首を落とされて処刑された。この日からランスロットの名声は一気に上がる。
 父の汚名を晴らした事でランスロットの身分は聖騎士団長と併用されてティクスの大将軍という身分が与えられた。だが、これだけでは留まらない。
 市民からはどうか守護者としての立場を与えて欲しいとの嘆願書がロック王に出されていた。これに対しロゼットはロック王にランスロットに「ティクス守護団長」と言う立場に任命する事を進言。
 ロック王もロゼットの言葉に同意を示し、国民にも知らせる事に伝える。そして、その身分を拝命する日、ランスロットにはある考えがあった。
 拝命式を執り行う玉座の間にはランスロット、ロック王、ロゼット、アレス、ガーベル、ローレンス達、大臣の一部が揃っていた。ロック王は白銀の剣をランスロットの頭上に翳し、拝命の言葉を紡ぐ。
「この神聖国ティクスの国を代表して聖騎士団団長ランスロット・エルンシア。貴方にこのティクスの守護団長という役目を拝命する。その忠誠心とその力を以ってこのティクスを未来永劫守り抜く事を誓い、そして、その地位を汚す事なく天命を全うするまで守り抜き給え」
「その拝命、須らくお受けいたします」
「この拝命により貴方はこのティクスの守護者ともなります。その地位を拝命した証として貴方の希望を1つ叶えたいと思います。何を願いますか?」
「その願いですが……陛下の親衛騎士アレスを妻にしたく思います」
「それ、は……」
「私はアレスとは兄と妹という関係ではあります。しかし、私達は愛し合う仲でありながらこのティクスの為に自分達の心を封じてきました。ですが、それが結果的に愛する女の心を苦しめている事実に私はこれ以上にない悲しみを覚えています。陛下、陛下のお心がお許しになるのであればどうかこの願いをお聞き届けください」
 ランスロットは真っ直ぐな瞳をロック王に向けている。アレスもまたロック王と同じ驚きの瞳に涙を浮かべている。
 ロック王はアレスを妻に迎えたいと聞いている。そして、ロゼットは事前にロック王にはアレスは相応しくないと進言して諦めを促していたのもランスロットは拝命式の前に聞かされていた。
ここでアレスを取り戻せないなら、拝命を拒否してアレスを連れてティクスを脱する事も考えている。それだけアレスの事を本気で愛しているのであった。
 ロック王は子供でありながらも聡明である。だから、アレスが自分の愛をすぐに受け入れなかったのもランスロットを愛しているからだと、この時に察してしまう。
 泣きたいだろう12歳の男は気丈にも笑顔を浮かべてランスロットの願いを聞き届けようとする。アレスに視線を向けて静かに最後の愛を捧げる。
「アレス」
「……はい」
「ランスロットの頼みを聞き届けたい。貴女をランスロットの妻として送り出す事で今までの無礼を詫びたい。どうか……幸せになってほしい」
「陛下……お心に添えれなかった無礼をお許し下さい。私は陛下のお傍にいれた日々は充実した日々だった事は感謝しております」
 アレスはロックに深く頭を下げて今までのお礼を伝える。こうしてランスロットの元にアレスは戻ってきた。
 団長室ではアレスの戻りと同時にアレス似の女性が今度はロック王の元に仕える事になり、入れ替わりで団長室から立ち去った。ロルゾ達は戻ってきたアレスを全員が笑顔で迎えた。
「お帰りアレス」
「よく戻ったなアレス嬢」
「お帰りなさいませアレス嬢」
「戻られてようございました」
「皆様……色々とご心配をお掛け致しました。またこれからもよろしくお願い申し上げます」
「アレス、お前は暫く俺の仕事を補佐してくれ。思っていた以上に仕事が多い」
「あーロゼットが無茶したからその分のしわ寄せ来てんだよな」
「まぁロゼットがロック王にアレスの事を諦める様に仕向けていたから、それで拝命式の時の願いを聞き届けてもらえたってのもデカいからなぁ」
「そんな事をロゼット様が? 本当にご迷惑をお掛けしていたんですね私達……」
「ですが、そのお陰でエルンシア先代当主……アレス嬢とランスロット様のお父上の汚名が晴れました。それについては陛下やロゼット様、ガーベル様もお喜びになれております」
 ローレンスがそう告げるとアレスは少し考えてランスロットの前に立つ。そして、頭を深々と下げて何も言わなくなった。
 ランスロットの視線がアレスの下げた頭を見つめてそっと息を吐き出す。そして、ランスロットは引き出しから小さな箱を取り出してそれを机の上に置いてアレスの名を呼んだ。
「アレス、顔を上げなさい」
「はい……」
「拝命式で言った通り、俺は団長としても兄としてもお前の為に何もしてやれない。だが、1人の男としてお前の未来を守る事は出来る。……俺の妻として傍にいてくれ」
「……その言葉にお答えする言葉を持ち合わせてないけど……精一杯、この命尽きるまでお傍にいます」
 ランスロットが小さな箱からリングを取り出すとアレスの左手の薬指に通す。ここにアレスは正式にエルンシア家の人間としてではなく、1人の女性としてランスロットの傍にいる事になった。
 2人の婚約はすぐさま市民に広がり、国を上げて祝福ムードに包まれていく。そんなティクスに集まり始めている者達がいる。
「この国が私達の拠点国になるんですね!」
「こうして僕達が集ったのも運命。その役目を果たす為にも力を尽くしましょう」
「私等の存在はこの世界では「星導きの者達」と呼ばれています。この神聖国ティクスはその「星導きの者達」に対する知識がこの世界では一番に深い国だと聞き及んでいます。しっかりと見極めて動きを定めましょう」
「俺達の力を信頼してもらえる様に、まずは王族の方に謁見出来る様に王城に向かうぞ」
 ティクスの城下町にてそんな事を話している4人の男女がいた。その4人こそこのガハランド大陸で希望の者達と呼ばれている「星導きの者達」であった。
 その4人の男女の1人はディズ国を闇で覆っていた異界アルシッドの王を召喚していた闇の星導きの者達を滅ぼした光の勇者「エリッド」であった。エリッドはこのティクスにてアレスとの再会をする場所になるとは考えていなかった。
 ランスロットとアレスの婚約祝いの品々が屋敷に届き始めたある昼下がり。今日はランスロットとアレスは昼から登城する予定だったので朝から届く祝いの品々の検分をしていた執事から引き取った祝いの品の確認をしていた。
「こんなに沢山のお祝いの品々……いいのかな?」
「それだけ俺達の事を慕ってくれている市民の人々がいるって事だ。普段からアレスが市民との交流をしているのも功を奏しているんだろう」
「でも、こんなに贈られるなんて正直驚いているよ……」
「俺も正直、こんなに貰えるとは思っていなかったがな」
「次の品々が届きました」
「まだ!?」
「暫くは品々が届く日々になりそうだな」
 ランスロットとアレスは午前中全部掛けて品々の確認をしていたが、差出人は貴族から果てにはエドゥル国の市民からも贈られている。流石に広範囲過ぎてお礼返しをするのも大変だと2人は苦笑しながら登城の準備を整える。
 馬車に揺られて登城するとすぐにランスロットに知らせが入った。星導きの者達と名乗る若者達が陛下であるロックに謁見していると言うのである。
「ローレンスが言っていた者達が来たのか」
「私も同伴させて。もしかしたら何か分かるかも知れない」
「分かった。だが、傍を離れるのは控えてくれ」
「分かった」
 アレスを連れてランスロットは玉座の間に向かう。ランスロットとアレスが玉座の間に入って頭を下げている4人の男女の若者達に視線を向けているとロックが若者達に言葉を掛ける。
「星導きの者と名乗る者方々よ。私がこのティクスを治めるロックと申します。良かったら顔を上げてお話をさせてはもらえませんか?」
「お言葉に甘んじて。我々はこのガハランド大陸とは異なる世界の人間でございます。運命の役目を追ってこの世界に参りました。どうか我々のお話をお聞き届け下さい」
「分かりました。ではお名前をお1人ずつお伺いしてもよろしいですか? 私達が皆様の名を呼ぶ時に名を知らないと困りますから」
「それでは僭越ながら私から仲間をご紹介させてもらいます。まず、風の力を使い、素早さを活かして敵を掻き乱す戦い方を得意とする「トールデット」。火の力を武器に宿し、烈火の如く戦う気質を持つ「アルディシア」。水の力を持ち、傷を癒す事を得意とする魔術師「レーデア」。光の力を身体に宿し、人々から勇者と呼ばれている「エリッド」。以上の4名が星導きの者達と名乗っております」
「エリッド!?」
「えっ……? あ、アレスじゃないか!」
 アレスの声でエリッドが振り向くとアレスはエリッドの姿に瞳を大きく見開く。ランスロットは彼がディズ国を消滅させた光の勇者であり、アレスを守ってくれた男性だと気付く。
 ロックがエリッド達にアレスとランスロットの事を婚約者同士だと紹介するとエリッドは心から嬉しそうな笑顔を浮かべてアレスに祝いの言葉を告げる。それに対してアレスも心から嬉しいのか微笑みをエリッドに向ける。
「おめでとうアレス。君の幸せな姿はあの頃からは考えられないけれど、良かったよ君が笑顔に戻れたのが」
「ありがとうエリッド。貴方の助けが無かったら私はこの幸せに辿り着けなかった。本当にありがとう」
「俺からもお礼を言わせてほしい。妹を、婚約者を守り通してくれた事を。そして、ディズ国を救ってくれた事を」
「俺は自分に素直に行動したまでさ。でも、その行動で2人が笑顔でいられるのであれば素直に行動して良かったよ。おめでとう」
 エリッドの素直な言葉と感情に2人も心から信頼を寄せる事になる。そして、エリッド達はロックとロゼット、ランスロット、ガーベルが揃っている今の状態でハッキリと告げる。
「このガハランド大陸に再来する闇がある。その闇はこの世界を支配せんと動き始めようとしているんだ。その闇を俺達は止める為にこの世界に召喚されたんだ。だから力になってほしい」
「その闇とは? 私達はその闇を知っていますでしょうか?」
「知っている筈よ。だってその闇の元になっているのはガハランド大陸の北に聳え立つ死者の塔と呼ばれる塔に封じられし王の事なんだから」
 アルディシアと呼ばれた少女の様な女性が腰に手を添えてハッキリと告げる。エリッドはアレスに視線を向けて静かに語る。
「ディズ国で君が聞いたランスロットさんの肉体を求める王の事だよ」
「ランスロットの肉体を求めている王……でも、どうしてランスロットの身体なの? 私じゃダメなの?」
「王と呼ばれている存在は闇の力を扱う。それに耐えうる肉体を欲します。その身体に相応しい者には大体が神々に愛されていると言う条件があります。そして、ランスロット様は条件を全て満たされておいでです」
 レーデアとトールデッドはそこまで話をしてランスロットに視線を向ける。ランスロットには僅かに心当たりがあるのか、険しい表情でエリッド達を見つめていた――――。
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