私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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7章

57話「死者の塔・破者の王の存在」

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 アレスは死者の塔の中にある1室に閉じ込められていた。幸いな事に食事などは与えられているので目立った困り事はなかったが、それでも闇の眷属達の力を感じている日々は精神的に負荷が掛かるのは否めなかった。
 幸いな事に、ルトが一緒にこの死者の塔に来てくれている事もあって話し相手には困る事はない。それだけがアレスの精神的な平和を維持させてくれている状態でもあったのだが。
『まさか、死者の塔がこんなにも闇に満ちているとはな。大丈夫かアレス?』
「なんとか、ね。ルトがいなかったら私塞ぎこんでいたと思う。ここは闇の力が強い……」
『死者の塔に眠るとされている破者の王……この者が肉体を欲しているのであれば闇の力は強いのは致し方ないのだろうが……ここまで強いと気が滅入るな』
「そうなんだよね。でも、ここにいなきゃランスロットがきっと迎えに来てくれる……きっと、あの人なら破者の王を倒してくれる」
 祈りを捧げる様に両手を組んで瞳を伏せるアレスは、囚われている身でなかったら聖女としてティクスでランスロットの妻に今頃なっている程の美しさを持っていた。ルトはアレスが闇の眷属の手に落ちると決断した時に何も言わず傍にいたが、アレスはランスロットの為なら死すら怖がらないのだろう。
 アレスは御子としての力を覚醒させている訳ではない。それは今の状況では仕方ないとルトは考えている。
『(この先、ランスロットの身に危機が迫った時が覚醒の時だろうな。そして、その時こそ破者の王との決戦が定まった時とも言える)』
「ルト……私は間違っていたのかな……この判断が正しいとは思っていない。でも、ティナや陛下を守る為とはいえ、ランスロットの手から逃げ出した私は許されるのかな……?」
『間違っている事は分かっていればいい。この判断はランスロットの身を守る為でもあったのは事実だ。そして、同時にアレスの運命を定める事に繋がるだろう』
「私の運命を定める……」
『お前の運命は未だ定まっていない。だが、ランスロットの運命とアレスの運命は必ず定まらなくてはならない。それが神々の望む未来でもあるのだからな』
 ルトの言葉にアレスは真剣な表情で部屋の天井を見上げる。そして、何かを考えて黙り込んでしまった。
 その頃の死者の塔最上階では多くの闇の眷属達が門を解放しようと魔力を注ぎ込んでいる光景があった。破者の王はこの死者の塔の最上階にある異界アルシッドの中に封印されている。
 その封印を解除するまであともう少しの所にまで行っている為に、犠牲者を出しながらも魔力を注ぎ込んでいたのである。破者の王の声が最上階に響く。
『まだか……まだ私の魂は解放されぬのか? 何をしている……早く私を解放し、このガハランド大陸の支配をさせぬか……!』
「我らが王よ、今少しお待ち下さい。アナタ様の依代となる者も直にこの死者の塔へと誘い込めます。そして、その時こそアナタ様の復活はなされるのです」
『私の肉体……このガハランド大陸に蘇りさえすれば、私の栄光ある力は復活する。そうなればこの世界で私に勝てる者はいない!』
 門の奥から聞こえてくる破者の王の声には力が漲っている。そして、闇の眷属達もその声に鼓舞されてより魔力を流し込んでいくのであった。
 ランスロットの肉体がこの死者の塔の最上階に到着した時に、破者の王の魂はランスロットの肉体に飛び込み、そして支配し、そして、復活が成される。それこそが闇の眷属達の最大の歓喜をもたらす瞬間でもある。
 門を維持する眷属達を1人のローブ姿の者が眺めている。その者は門の維持をしている眷属達とはまた異なる存在感を放っていた。
『ウィンドル、貴様はどうだ……このガハランド大陸に何かを感じるか?』
「このガハランド大陸にはまだ目覚めていない者達の力を感じる。俺がその者達を覚醒させてこよう。時間を稼ぐのには最適な者達だ」
『任せるぞ。お前が私の為に力を使える事を許したのは誰でもない私なのだからな』
「あぁ、任せてくれ。戦友のお前の復活は俺の望みでもある」
 ウィンドル、と呼ばれたローブ姿の者はパサリとローブを脱ぐと漆黒の髪色をして、ブルーアイを持ち、そして……額から1本の角が生えている魔族の男が姿を見せる。ウィンドルは死者の塔最上階から出て行くと螺旋階段をゆっくりと降りながらガハランド大陸に未だに眠り続けている魔獣達の力を辿る為に力を集め始める。
 魔獣達が目覚めてウィンドルに従うのであれば使役し、破者の王復活の時間稼ぎには持ってこいだと言える。だが、従わないのであればその血肉を使いガハランド大陸に腐敗の呪いを掛けるだけの代物にするつもりであった。
 死者の塔から出たウィンドルは身体に風を纏わせて空に舞い上がる。そして、そのままガハランド大陸に眠る魔獣達の覚醒を促しに飛んで行った。
――――
 ティクスの政治的観点から大臣達の存在はかなり大きな意味を含めている。だが、所詮欲望に包まれた人間も存在する訳で。
 大臣達が母国であるティクスの防衛に意義を唱え、そしてあまつさえ敵国で禁術を用いていたディズ国の禁術を応用し、魔法戦士を生み出してその部隊で死者の塔攻略し、攻略に向かう部隊をティクスの防衛に宛がうべきだ! そう進言し出している事をガーベルから聞いたランスロットとロゼットはこれに対し実力排除を行う事を決める。
 ガーベルに新しい大臣の選出を任せたロゼットはテキパキと現大臣達の辞職理由を造り上げていた。ロックにはまだこの汚い執務はさせれないので、軍師であるロゼットが引き受けている。
 そして、この造り上げた理由でも辞職しないと断として拒む大臣は騎士団長のランスロットが、実力で排除する事になっている。そもそも今の大臣達の事を信用していないのであるランスロットが。
「ロゼット様」
「陛下、どうされましたか?」
「実は大臣達が変な事を言い出してきまして。それで私なりに考えて貴方にお話をお伺いしに参りました」
「どの様な事を申されてきたのですかな大臣様達は」
「ランスロット様とロゼット様が反乱を起こそうとお考えだと言うのです。私には到底信じれない。だから真実をお伺いしようと思いまして」
「ヤキが回ったか。陛下、これよりお話するのはティクスの汚い話でございます。今は陛下はこの執務をされる必要はございませんが、私やランスロットが引退した後には陛下もこの執務をしなくてはならない事をお心構えとしてお聞き下さい」
「はい、分かりました」
 ロゼットはランスロットと自分が大臣達を一掃しようとしている事、その理由を隠さないで正直にロックに伝えていく。最初は驚きで困惑していたロックではあったが次第に事の重大さに気付き、最期には国王としての判断を下す事までした。
「分かりました。その行為を私は認めます。兄様もご存命だったら同じ事をされていただろうと思います。それに、正直申し上げますと……今の大臣達は保身ばかり考えて何一つ現状の事を把握していない、そんな気配を感じておりました」
「ご聡明な陛下でもお気付きになる程です。よっぽど大臣様達は国よりも自身の身の安全をお考えの様ですな」
「今は市民達は安全な場所にいますが、その市民達の為にも今こそティクスは立ち上がらなければならない筈です。それを考えれば保身に入る者達の声を聞くのはあまりよろしくないのかと思ってしまいます」
「陛下は陛下のお心で感じた事をお言葉にしてよろしいのです。私やランスロットが必ず陛下のお心をお守り致しますので」
「ありがとうございますロゼット様。私はこのティクスの王として、騎士団を信じ、そして共に未来を切り開く為の者達を信じ、前に進みたいなと思います」
 ロックはまだ12歳という若さで英断をする。ランスロットがロックに呼び出された時、ロゼットと大臣達も玉座の間に集まっていた。
 ランスロットが礼をしてロックの言葉を待っていると大臣達が一斉にロックに言葉を紡ぐ。それはランスロットとロゼットが反乱をしようとしている疑いがある事の言葉。
 これに対してランスロットもロゼットも眉1つ動かさないで黙って聞いていたが、ロックが大臣達に少し待つ様に促すと言葉は途切れた。ロックは玉座の上に座りランスロットに一言問い掛ける。
「ランスロット様、1つ質問してもよろしいですか?」
「はい、陛下のお聞きされたい事を申し上げて下さい」
「貴方の忠義は本物であると証明する事は出来ますでしょうか?」
「どの様な方法を持ってご証明したら信じてもらえますか?」
「……彼の者を切り捨てる事で証明するとしたら?」
「へ、陛下!?」
 ロックが示したのは大臣達の中でもトップでロックを支えてきた大臣の老人。そして、誰よりもロックにランスロットとロゼットが反乱を考えていると進言してきた保身派の大臣の筆頭でもある大臣だった。
 当然、ロックにそんな事は関係ない。自分の心に従ってロックも自分なりに汚い執務をしようと決断した結果である。
 兵士に両腕を掴まれてランスロットの目の前に連れて来られた大臣の老人は、死への恐怖から錯乱状態に陥り始める。だが、ランスロットの瞳に慈悲はない。
「この者を切れば陛下のご信頼を得れる、で間違いありませんか?」
「その者は大臣達の中でも統率していた者です。そして、ランスロット様とロゼット様がティクスにて反乱を起こそうと考えている、と私にかなり進言してきた者でもあります。ランスロット様達が反乱の疑いを晴らすのであれば、その者を切り捨てて下さい」
「へ、陛下! どうか私のお言葉をお聞き下さい! 確たる証拠があって私達はランスロット卿とロゼット卿の反乱を申し上げたのですぞ! それをお信じ下さらないのですか!?」
「確たる証拠? それはなんですか? 今証明出来ますか?」
「出来ます! ランスロット卿もロゼット卿もアレス嬢が敵の手に落ちたと申し上げている様ですが、あれは意図的にアレス嬢を敵に引き渡したという事実がございます! アレス嬢を敵の手に渡す事で闇の戦力を受け取り、ティクスを内部から滅ぼす事を考えているという者達がいるのです!!」
 大臣の口から漏れる事実とは異なる言葉に流石のランスロットもロゼットも溜め息を吐き出したくなる。しかし、大臣の言葉は止まらない。
「なにより、星導きの者達だって信じられませぬ! 全てはティクスに仇なす者達が集まっていると断言してよろしいかと! どうか私の言葉をお信じ下さいませ!」
「……残念です。この場で謝罪を期待した私が愚かでした。ランスロット様もロゼット様もこのティクスを誰よりも思い慕ってくれている方々。そして、何より私が一度は心を寄せたアレスを助ける為に死地へ向かわんとするランスロット様の事を策略で陥れようとするその心は醜い。……ランスロット様、切り捨てて下さい。そして、その忠義を示して下さい」
「仰せのままに」
「陛下ー!!」
 ランスロットの腰からラインハッドが引き抜かれて大臣は音もなく首を切り落とされた。これを見た他の大臣達は明日は我が身と思い、一斉に身体を寄せ合い恐怖する。
 ロックはこの場で大臣達の一部を解任、そして、ガーベルを筆頭大臣として新任の大臣達を迎える事を告げる。ランスロットはロックの心遣いと王としての器に心から感謝をする。
 死者の塔攻略まであと5か月の時間が迫り始めていた。ティクスの聖騎士団は徐々に攻略をする為に力を集めて行く――――。
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